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知事発言集・産・学・官 新年交流会 知事意見発表 「地方分権と道州制について」

ページ番号:0011212 更新日:2008年1月21日更新

日時 平成20年1月21日(月曜日)
16時55分~17時10分
場所 ホテルニュータナカ(山口市湯田温泉)

知事の意見発表

(江口克彦PHP総合研究所代表取締役社長による「地域主権型道州制」の基調講演を受けての意見発表)

 今日のテーマである「地方分権と道州制」について、少し回りくどくなりますが、私の意見を述べさせていただきます。

 私は、これまで、しばしばヨーロッパ地方自治憲章の中にある「近接と補完の原理」というのを引用してきました。

 この原理は、まずは、住民ができることはできるだけ住民が行い、どうしてもできない政治行政を、まず住民に最も身近な市町村で行い、市町村ではできない広域的な分野は、日本で言えば都道府県で行い、そして、どうしても国でなければできない分野のみ国が行うというものです。

 先ほど、江口先生の講演でもありましたが、国に権限や財源が集中する「中央集権」の制度は、人材や資金、資源を首都東京に集中させ、効率的な運用を行うことができますから、「先進諸国に追いつけ、追い越せ」という、経済的な豊かさを追求する時代には、よくその機能を果たし、高度経済成長に大きく寄与してきました。

 しかし、今、住民の価値観が多様化する中、中央集権的システムによる画一的な対応では、住民ニーズにきめ細かく対応していくことが困難となっています。江口先生の「我が国の中央集権システムは限界だ」とのお話には、私もまったく同感であります。

 したがって、私は、住民ニーズにきめ細かく対応していくためには、この「近接と補完の原理」の考え方に沿って、国と地方のあり方を抜本的に見直していかなければならないと考えています。

 まず、住民は、「自分でできることは自分でする」という、「行政依存」から「自立」に向けて、その意識を変えていかなければならないということです。このため、私は、イベント等も活用しながら、「県民力」の向上に努めているところです。
 そして、住民に最も身近な市町村は、住民ニーズに的確に対応できる体力、知力、別の言葉で言えば、地方分権の受け皿になれる力を付けること、すなわち、市町村の財政基盤を強化し、政策・行政能力を高めていくことが重要であるということです。

 私は、そのための最も有効な手段が市町村合併であると考え、積極的に推進してきました。その結果、ご承知のとおり、5年前には56あった市町村が、この3月の美祢地域の合併により、20(13の市と7つの町)になります。また、県では、県から市や町への権限移譲も、積極的に進めています。
 県としては、最終的には、20の市町を9つの市にできたらと考えています。

 さて、このように市町村合併が進み、その機能が強化されれば、県の役割や枠組みも見直す必要が出てくるわけですから、私も、いずれは、道州制へ移行すべきであると思っています。
 また、その際は、ただ、道州になればいいというのではなく、先ほどの「近接と補完の原理」を踏まえ、国の役割は、外交・防衛や、社会保障、経済対策、国家的プロジェクトなどに限定し、その他は、地方に任せる、地方分権型システムとしての道州制への移行でなければならないと考えています。

 道州制と言えば、「どの県がどの道州に入るか」という区域割に焦点が当たりがちですが、道州制の本質は、国と道州、道州と市町村の役割分担にあり、「中央集権型」から「地方分権型」に政治行政システムを再構築する大改革でなければなりません。江口先生の言葉をお借りすれば、まったく「新しい国のかたち」に抜本的に変えるべきであると、私も考えています。

 したがって、私がこれまで申し上げてきた「地方分権型」と、江口先生の「地域主権型」と、道州制の到達点としては、大きな違いはないと思っています。
 江口先生と私とで違いがあるとすれば、多分、スピードあるいはプロセスではないでしょうか。
 江口先生は、一気に「地域主権型道州制」へ移行すべきであるということであり、私は、今、進められている第2期地方分権改革の次の課題として取組むべきであると考えている点だと思います。

 そこで、なぜ、私がそのように考えているか、申し上げます。
 私どもは、第1期の地方分権改革、そして、三位一体の改革を経験してきました。その結果、どうなったでしょうか。

 特に、三位一体の改革では、国から地方へ3兆円の税源移譲が行なわれましたが、単なる数字合わせに終わり、国の財政再建が優先されて、我々が強く望んでいた、地方の自由度の拡大という観点からは、極めて不十分なものとなってしまいました。
 また、地方交付税は、総額5.1兆円もの大幅な削減が行なわれ、地方財政は深刻な打撃を受け、今後、社会保障経費の増大などが見込まれる中で、税源の乏しい地方団体では、厳しい財政運営を強いられる結果となりました。
 何のための改革だったのか、我々地方団体は、国に対し、大きな憤りを持ったところであります。

 こうしたことを背景に、一昨年12月、安倍内閣のもとで、地方分権改革推進法が成立し、現在、第2期地方分権改革の内容の検討が進められています。
 そして、その結果を受けて、2年以内を目途に「地方分権改革推進計画」が作成され、さらにそれを実行するための新しい地方分権一括法が、「平成22年3月まで」には、国会に提出される方向になっています。

 その一方で、昨年1月、国に、「道州制ビジョン懇談会」が設置され、現在、江口先生の座長のもとで、道州制ビジョンの検討が行なわれており、3年以内を目途にビジョンが策定される予定になっています。
 3年以内ということは、新しい地方分権一括法が国会に提出される「平成22年3月までに」ということになるのでしょうか。

 そうしますと、道州制ビジョンが出る前に、第2期地方分権改革の内容が固まっているはずですから、その内容次第で、政府が本当に「地域主権型道州制」をやる気があるかどうか、わかることになります。第2期地方分権改革は、「地域主権型道州制」のやる気を計るリトマス試験紙ということになるのではないでしょうか。

 したがって、私は、そのような趣旨で、まずは、第2期地方分権改革に全力を注ぎ、次のステップとして、「地域主権型道州制」に進むべきであると申し上げているところであります。

 それでは、その実現に向けての課題は何かということです。

 まず第1は、「中央省庁の極めて強い抵抗を如何に排除するか」ということです。
 第2期地方分権改革については、国に設置された地方分権改革推進委員会において、昨年11月に「中間的な取りまとめ」が示され、この春には政府に対して第一次勧告が行なわれ、以降、順次勧告が行なわれることになっています。
 11月の「中間的なとりまとめ」では、我々地方の主張も踏まえ、国による義務付けや関与の見直し、国の出先機関の大幅な整理縮小など、国・地方を通じた効率的な行政運営を目指すことなどが示されました。しかしながら、中央省庁の抵抗は非常に大きく、これまでの推進委員会のヒアリングなどに対しても、ほとんどゼロ回答の状態です。
 いつものことと呆れてしまいますが、地域主権型道州制の導入になると、その抵抗は凄まじいものになると思います。また、国会議員も大幅な定数減になるわけですから、同様でしょう。
 これを如何に排除できるか、私は、まずは、これに臨む総理大臣をはじめ閣僚に不退転の決意があるかどうかにかかっていると思います。

 そして、第2は、「そのような決断ができる周辺環境を如何に創りあげていくか」ということです。
 そのためには、広く国民を味方に付けることです。
 今、我々が進めようとしている「地方分権改革」も、県民の皆さんからは、単に国と地方の役人や政治家同士の内輪の権力闘争ぐらいにしか、理解されていないのでないかと思います。
 私は、地方分権を進める意義は、政治行政を住民の身近なところに引き戻せるかどうかという、生活者の視点に立った戦いであると申し上げてきましたが、県民の皆さんに、その最終的な姿を示しきれていないことに課題があったのではないかと考えています。

 私は、今日の江口先生のお話をお伺いし、当面、「地域主権型道州制」の方向を目指すことを明確に打ち出しながら、そのために地方分権が必要なのだということを、もっと分かりやすく、県民、国民の皆さんに説明し、皆さんに「味方」になっていただく努力を重ねていかなければならないことを痛感したところであります。そして、いずれ国民運動の展開も考えなければならないのではないでしょうか。

 我々は、先ほど申し上げましたように、「三位一体の改革」において、極めて苦い体験をしました。道州制を急ぐあまり、分権改革が不十分なまま議論が進んでしまいますと、結果として、地方が望む「道州制」ではなく、国の出先機関のような「集権型道州制」になり、また、国の都合による行財政改革や財政再建の手段になってしまい、三位一体の改革の二の舞になることを、我々は、強く警戒しています。

 そのためにも、道州制ビジョンが、まずは、江口先生のリーダーシップのもとで、「地域主権型道州制」の方向で、しかも、第2期地方分権改革にも影響を与える形で、早期にとりまとめていただくよう、心から期待しております。


※これまでの知事の講演等における発言を「おいでませ知事室へ」「知事発言集」に掲載していますので、気軽にご覧ください。