ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 組織で探す > 総合企画部 > 政策企画課 > 知事発言集・平成23年度山口県新規採用職員研修 知事講話~ 自分のスタイルを創る ~

本文

知事発言集・平成23年度山口県新規採用職員研修 知事講話~ 自分のスタイルを創る ~

ページ番号:0011338 更新日:2011年4月18日更新

目次

1.はじめに

自己紹介

 皆さん、おはようございます。県庁に入られて18日目、少し雰囲気になれてこられたのではないでしょうか。
 まず自己紹介からですが、私は、1996年(平成8年)8月の知事選挙で初当選しました。
 当時、名字が「二井」では選挙向きではない、という話もあったようですが、2008年8月の選挙で、四選を果たすことができました。知事の任期は一期4年ですから、今15年目です。
 また、名字が珍しく、なかなか覚えていただけないので、若い時から、「二井」は数字で言えば「21」ですと言ってきました。

自己紹介の画像

 画面は、1999年(平成11年)5月、後ほど述べます「山口きらら博」のPRのため、甲子園球場で、阪神・巨人戦の始球式を行った時の写真ですが、ユニフォームの背番号も「21」と、こだわっています。
 その私が、現在、「21世紀の山口県づくり」を進めているわけですから、数字の「21」には、運命的なものを感じています。

通過儀礼

 さて、皆さんは、この4月から、山口県庁の職員になられ、これから約40年間にわたり、県庁に勤務されることになります。
 人生80年ですから、多くの皆さんは、これからの60年のうち3分の2が県庁職員という計算になります。
 一度しかない人生のうちの相当大きな部分(貴重な時間)を費やして、仕事をすることになるのです。「県職員として働く中に自分の人生がある」と言っても、過言ではありません。
 「通過儀礼」という言葉があります。
 「通過儀礼」とは、私たちがいくつかの人生の節目を乗り越える際に体験する儀式、たとえば、成人式、結婚式などを言いますが、この研修も、皆さんが山口県職員になるための通過儀礼の一つです。
 これまでとは異質の社会に入るわけですから、この研修を通じて、気持をしっかりと切り替えていただき、そして、皆さんのこれからの仕事が、ご自分の人生での「生きがい」、「やりがい」になっていくことを、強く願っております。

県の役割

 なお、具体的な話に入る前に、私が考える県(リーダー)の役割について、抽象的にはなりますが、簡単にお話しておきます。
 県(リーダー)の役割は、「県政の方向性、山口県のかたちを県民に明確に示し、それを実現するために、県の組織をフル稼働させ、県民の県政への満足度を高めていくこと」にあります。
 そして、「県民の県政への満足度」は、大きく、「様々な施策の推進による県民生活の満足度」と、「県民との日々の接点での満足度」という2つの視点から捉えることができると思います。
 民間風に言えば、お客さんが満足していただけるような価値ある商品やサービスを提供し続けなければならないということになると思いますが、皆さんには、この2つの視点から、「県民の満足度を高めるために」を常に念頭において、「住み良さ日本一の元気県」という県政の方向性、かたちづくりを目指して、それぞれの職場で頑張っていただきたいということを、まず申し上げておきます。

2.最初が肝心~学ぶ心を持ち続ける~

 さて、本論に入ります。
 私は、現在の知事職を含め、公務員生活は40年を越えています。
 そこで、これまでの経験、反省から、皆さんが、自分の仕事を進めていく上での物の見方、考え方(これを、仮に「自分のスタイル」という。)を創り上げていくための参考になればと思い、このことを中心に、これから話を進めてまいります。
 私は、大学卒業後、昭和41年、1966年に、当時の自治省に入り、すぐ鹿児島県庁勤務、44年4月から自治省選挙部勤務、そして、その5月に、26歳で結婚しました。
 妻に言わせれば、その頃、かなり仕事に不満を言っていたようです。新聞の切り抜き、計算(当時の計算機)、コピーなど単純な仕事が多く、なぜもっと仕事らしい仕事をさせてもらえないのか、不満に思ったことも、しばしばありました。
 皆さんも、これから職場に入られ、期待はずれのこと、予想外のこと、これまでに経験したことがない様々なことに出会すと思います。
 その一つ一つが乗り越えなければならない壁と考え、判らないこと、疑問に思ったこと、不満に思うこと等があれば、まずは、素直に、上司、先輩、同僚、友人等に聞く、相談することが大切なのではないでしょうか。知らないことが当り前なのです。
 最初が肝心です。
 まずは、目の前の仕事をしっかりやることです。最初の3年位は、何事に対しても素直に学ぶ姿勢が大切です。時が立つにつれ、「そんなことも知らないのか」と言われはしないかと、余計なことを考え、益々相談しにくくなってきます。
 相談するかどうか、そして、それを血とし肉とするかどうか、その積み重ねの中で、皆さんの仕事ぶりにも、皆さんの人生にも、差が出てくると言っても過言でないと思います。
 また、県政には日々判断や決断が求められます。したがって、私自身、今も自分を磨く努力を重ねています。どうか、皆さんには、「よりよい未来」に向けて、「学ぶ心」を持ち続けていただきたいと願っております。

3.正直を貫く~正直と信頼~

 私は、昭和18年、1943年に、現在の美祢市伊佐町の小さな衣料品店で生まれました。私は、4人兄弟(妹)の長男でしたから、祖父母、両親とも、私に店を継がせたいと思っていたのでしょう、小さい頃から、「商売は信用が第一だから、『正直』でないといけない」と、折に触れ、繰り返し言われて育ちました。
 そのせいでしょうか、公務員になりましても、「正直」の上に「ばか」がついているのではないかと言われたこともありましたし、私自身、この厳しい世の中、「正直」で渡れるだろうか、悩んだこともしばしばありました。
 しかし、今、振り返ってみますと、自分で申し上げるのもどうかと思いますが、「正直」であること、嘘はつかない、約束は必ず守る、ということを貫いてきたことが、私への「信頼」につながってきたのはないかと思っています。
 嘘はつかない、約束を守る、このことは、我々が生きていく上での最低のモラルのはずです。
 しかし、最近、我が国で起きている様々な事件、出来事を見ますと、このモラルが、民間でも、政治の世界でも、社会の多くの分野で崩れてしまっている、というのが現状ではないでしょうか。
 残念ながら、今、この最低のモラルの確立が求められています。人格は、言葉よりもはるかに雄弁であるといわれますが、私は、このことをしっかりと肝に銘じ、これからも、「正直」と「信頼」を、県政の推進はもちろん、人生の、生きる上での基本にしていかなければならないと考えております。
 人にはそれぞれ持ち味があります。皆さんも、仕事を通じて、ご自分の持ち味、強みは何なのか、これからそれをできるだけ早く発見していただきたいと願っています。

4.県民の立場で考える

 皆さんは、今後、それぞれの職場で、県民の生活・福祉の向上のため、県経済の活性化のため、尽力されるわけですが、その対価として、税金の一部を給料として受け取ることになります。仕事の対価として、県民の皆さんから、給料をいただいていると考えなければなりません。
 したがって、皆さんは、「いま自分が行っている行動が県民の皆さんのためになっているのか」、「その行動を県民の皆さんにオープンにして説明できるか」、「自分も県民であり、サービスの受け手である。自分が受け手だったら、どう考えるだろうか」-このことを常に念頭におき、自分の行動をチェックしていただきたいということです。
 中国の「荘子」のなかに「朝三暮四」という有名な話があります。ご存じの方も多いでしょうが、これを現代風に直して紹介しますと、「ある時、猿回しの親方が、猿に丼を、朝3杯、夕方4杯与えようとしたところ、猿が大いに怒ったので、朝の方を4杯に、夕方を3杯にしようと言ったとたん、猿は機嫌を直した」という話です。
 この話は、朝3杯夕方4杯と、朝4杯夕方3杯と、実質的にはなんの違いもないのに、それがわからず、目先のことに囚われる愚かさを笑ったものですが、我々は、ともすると小さな利害関係に心を奪われて、大局的な判断を失いがちになります。この猿の場合は、それでも結果的には7杯食べたわけですが、我々公務員の場合、目先のことに捉われてしまうと、信用も失い、職を失い、飯も食べられなくなることがあるということを、しっかり肝に銘じておかなければなりません。

5.事実を知る~現場主義の徹底~

 先ほど、県の役割について、「県政の方向性、山口県のかたちを明確に示し、それを実現するために、県の組織をフル稼働させ、県民の県政への満足度を高めていくこと」と申し上げました。
 方向性を示すにしても、目の前の具体的な施策を実施するにしても、「事実を知る」ことが大前提です。
 私は、「事実」と「施策」に溝ができないようにするために、今日まで、県政運営のモットーとして「しっかり聞いて しっかり実行」を掲げてきました。
 県民の皆さんと常にキャッチボールをしながら、県政を進めていくということです。私はもちろん、皆さんも、常日頃から、「県民の皆様が何を求めているのか」「何が県民の皆様のためになるのか」という「現場感覚」を常に研ぎ澄ましていただき、行動していただきたいということです。
 特に、今日のように変化の激しい状況下では、現場の事実を知ること、現場に行って自分の眼で見て自分の手で確かめるということが益々重要になってきています。
 私は、現場主義は、「新鮮な、正確な一つの事実を知るだけではなく、背後にある多くの知恵を体得する道」であると考え、できるだけ出かけ、県民の皆さんの意見等を聞くよう、努力しています。
 ただ、私を含め、ポストが上にいくほど、どうしても現場に触れる機会が少なくなります。
 したがって、皆さんからの「必要な事実・情報」が我々上司に如何に伝達されるかも極めて重要になってきます。必要な事実・情報を得ることができなくなれば、正しい判断ができなくなる恐れがあるからです。
 特に、「嫌な事実、悪い情報を報告せよ」ということです。
 悪い情報ほど早く上司に報告しなければ、特に人命にかかわるケースでは、対策が手遅れになってしまいます。上司に叱られまいとして完璧な報告(「六何の法則」)をしようとするのではなく、まず、「何が」起きたか、最優先に報告しなければならないということです。
 特に、マイナス情報が上司にスムーズに上がらなければ、危機管理はできません。そのためには、上司は常に人の意見を聞く姿勢を持っていなければいけませんが、マイナス情報は、上司への思いやりという「善意」によって阻まれる場合も多くあります。「今、上司は忙しそうだから」「夜遅いから明日朝にしよう」とか気を使うことによって、取り返しのつかないことになってしまうことにも、十分留意しておくことも必要だと思っています。

6.広い視野から考える

 皆さんも、これから様々な出来事に出会し、悩み、迷うことも多くあると思います。そのとき、どのような判断をするのか、どのような決断をするのか。
 まず参考までに、ある本に出ていた「3人のレンガ積み」の話を紹介します。

3人の連が積みの話

 この短い話から、どんな教訓が読み取れるでしょうか。
 一番初めのレンガ積みは、今まさにここでやっている仕事を作業としてしか捉えていません。私が自治省に入った時の仕事での不満と同じように、何か不満げな言い方になっています。仕事を作業としてしかとらえられなければ、やはり「不幸」です。
 二番目の人は、自分の仕事を作業とは見ておらず、壁をつくるという明確な目標を持っています。しかし、仕事を通じて実現される成果を、自分の目に見える範囲、手の届く範囲でしか考えていません。建物全体から見たら、ほんの一部分でしかない壁をつくることが、自分の仕事の目的となっています。これでは仕事に広がりもありませんし、工夫の余地も限られたものになります。
 三人目の人は、教会という最終目標をはっきりととらえており、さらに「子供たちが勉強するため」という目的まで理解しています。
 大きな目的をしっかり理解して、その意義、価値を自覚すれば、その仕事に喜びを感じることができますし、いろんな工夫の余地が生まれてきます。
 私も、国家公務員時代に、「省益を忘れ、国益を思え」ということをよく言われました。県庁で言えば、皆さんが配属される組織の利益ということではなく、もっと大局的に、県全体にとってどうなのか、常に広い視野を持って対応してほしいということです。
 そこで、「物の考え方」について、もう少しお話をさせていただきます。
 まず、物事を判断するにあたっては、その中に私心が入っていないか、常にチェックするということが大切です。
 無私の心を持つことは大変難しいことではありますが、私は、特に知事として県政を任されている以上、このことを常に確認しながら県政運営に当たってきましたし、これからもこの思いを持って進みたいと思っています。

モのの考え方の3原則の画像

 そして、無私の精神を前提に、中国に古くから伝えられている「モノの考え方の3原則」に沿って判断するように努力しています。
 まず、その1つは、目先にとらわれないで、できるだけ長い目で観察するということです。「長期的」ということです。
 我々人間はなにかが起こると、その現象面だけを対象にして、ものごとを判断しがちですが、可能なかぎりの知識を基盤に、情報収集し、さらには想像力までも駆使して、平素から常に長期的な視野を心がけておくことが大切です。
 2つめは、一面にとらわれないで、できるだけ「多面的」、できるならば全面的に考察するということです。
 いま申し上げたように、なにかが起きますと、人間の目に容易に映ってくるのは、常に現象やものごとの一面だけです。しかし、それではなにが本質なのかをとらえることはできません。
 このことを別の言い方でしますと、狭い主観だけにとらわれないで、ものごとを別の立場から考えて見るということです。「自分の外から自分を客観的に見る視点を持て」ということです。
 そうすれば、たとえば、非常につまらないことで腹を立てたり悩んだりしている自分がばからしくなってくるものです。
 これの、私流のチェックの仕方が、先ほど申し上げた「いま自分が行っている行動が県民の皆さんのためになっているのか、その行動を県民の皆さんにオープンにして説明できるか」であり、また「自分も県民であり、サービスの受け手である。自分が受け手だったら、どう考えるだろうか」ということです。
 3つめは、枝葉末節にとらわれないで、できるだけ「根本的」に観察するということです。
 たとえば、木は、同じ種類のものであっても、枝や葉はさまざまな伸び方、繁り方をします。その土地の風土、その時々の気候によっても違ってきます。しかし、根は1つです。枝や葉の伸び方、繁り方でものごとをとらえ、考えても、正確な思考は成り立たない。土の中に隠されている根を常に見失わず、その根について考えなければならないということです。
 「言うは易し、行うは難し」ですが、ものの見方の3原則は、「長期的」(時間軸)、「多面的」(空間軸)、「根本的」(価値軸)と、何かの時に思い起こしていただければ、と思います。
 以上、皆さんが仕事をするに当たり、参考にしてほしい事項を一般論に近い形でお話をさせていただきました。
 次に、現在進めている県政により近い話をさせていただきます。

7.時代の流れを読む~依存から自立へ~

自助・共助・公助

 現在、政府は、地域主権改革を進めようとしています。地域主権とは、「地域のことは地域自らが責任をもってやる」ということですから、地域の体制を「依存型」から「自立型」の体制に変換しなければならないということです。それは単に行政だけでなく、そこに住んでいる住民の皆さんをはじめ、企業や団体も「自分でできることは自分でする」と、意識を変えていくことが重要になってくるということです。
 その意識改革のキーワードとして、私が常々申し上げていますのが、「自助・共助・公助」です。

自助・共助・公助の画像

 まず、「自助」というのは、自分ができることは自分でする、家庭でできることは家庭で行う、そして、「共助」は、個人あるいは家庭でできないことは、地域社会の中で、お互いに助け合って(支えあって)問題解決を図る、そして、どうしても「自助」「共助」という民間でできないことを公がサポートするのが「公助」ということになります。
 イギリスの作家スマイルズの「自助論」は、明治の多くの青年たちの心をとらえたと言われていますが、その著書の中で、「自助の精神が、その国民全体の特質となっているかどうかが、一国の力を見る際の正しい尺度になる」と述べています。
 この言葉は、「国」を「県」に置き換え、そして、ここでいう「自助」には「公に頼らない、共助」も含めてもよいでしょうから、「自助・共助の精神が、その県民全体の特質となっているかどうかが、その県の力を見る際の正しい尺度になる」ということになります。私は、この言葉は、まさに地域主権にふさわしい言葉であると思います。

「県民力」と「地域力」

 では、どうしたら、この県民全体の「自助」「共助」の力を高めることができるのか。
 そのためには、私は、県全体の象徴的な大きな舞台が必要であると考え、そして決断したのが、21世紀のスタートに当たる2001年に、ジャパン・エキスポ「山口きらら博」という博覧会を開催するということでした。
 「もう博覧会の時代ではない」、「どうせ失敗するよ」と言われました。「何としても成功させなければならない」と、5年間かけて周到に準備を重ねてきました。

「県民力」と「地域力」の画像1

 博覧会のPRのため、美祢サーキット(現在は、マツダのテストコースになっている)で、この画面にありますように、日本で一台しかない2人乗りのフォーミュラカーに乗りました。スタンド前の直線が時速270km、カーブでは風圧がかかり、本当に首が抜けそうになりました。少しオーバーですが、まさに、死ぬ思いで博覧会のPRをしたのです。
 「何としても成功させたい」という私の思いが、職員はもとより、県民の皆さんにも伝わっていったと思います。
 開催期間79日間で、入場者数は目標の200万人を大きく超える251万人余りとなり、同時期開催した福島や北九州と比べても、圧倒的にトップを切ることができました。

「県民力」と「地域力」の画像2

 成功の要因の一つは、周到に準備し、明るく、前向きに、楽観的に取り組んだことをあげることができると思いますし、県民の皆さんの一致団結した取組みは、「やればできる」という自信につながったと思います。
 私は、「やればできる」という大きな自信、これを「きららスピリット」と言っていますが、この「きららスピリット」を更に高めていくためには、きらら博に続いての大きな舞台が必要であると考え、きらら博から5年後の2006年に、「第21回国民文化祭やまぐち2006」を開催しました。この国民文化祭でも、このきららスピリットが大いに発揮されました。
 県内各地に、立派な、素敵な文化の花を咲かせることができ、目標の100万人を大きく超える145万4千人もの来場者を迎えることができました。

「県民力」と「地域力」の画像3

 私は、2005年に山口県で開催した「ものづくりの技能五輪」等も含めて、これらの取組みを通じ、「自助の力」や「共助の力」、私が日頃使っている言葉で言い換えれば、「県民力」や「地域力」は、大いに、そして確実に高まってきていると感じています。
 そして、いよいよ、国民文化祭から5年後の今年秋には、第66回国民体育大会「おいでませ!山口国体」及び第11回全国障害者スポーツ大会「おいでませ!山口大会」が開催されます。

「県民力」と「地域力」の画像4

 私は、両大会は、山口きらら博、国民文化祭でホップ・ステップと高めてきた「県民の皆さんの力」「きららスピリット」を、大きくジャンプさせ、「元気県づくり」を加速化させる、夢と感動にあふれる大会にしなければならないと考えています。
 そのためには、「本県選手の活躍による総合優勝」と「県民総参加の大会」の実現が何よりも重要です。
 前回の山口国体は1963年でした。その成績は、東京都に次いで、0.4点差で2位でしたが、その翌年、1964年以降今日まで、高知県を除き、開催県がすべて優勝、天皇杯を獲得しています。
 私の苗字は二井ですが、「また2位だった」と絶対に言われたくありません。参加資格問題でかなり厳しくなりましたが、最後まであきらめないで、天皇杯目指してがんばり抜きたいと思っています。
 皆さんにも、本県選手の活躍の力となる激励や地域・職場における応援、競技会場での観戦で、ぜひ気運を盛り上げていただきたいと思っています。
 また、山口国体・山口大会は、本県の魅力や県民の元気を全国に発信する絶好の機会です。
 来県される選手・監督、応援の皆さんに「山口県は本当に良かった」と言っていただけるよう、愛称の「おいでませ」のとおり、「山口のおもてなしの心」を伝える取組を県民総参加でしっかりと行っていくことが大切です。皆さんも、何らかの形で、山口国体・山口大会に関わっていただくよう、願っております。
 私は、このように全国規模のイベントを5年刻み程度で開催し、それを一過性のものに終わらせないで、成功体験を継続し、積み重ねることにより、「県民力」、「地域力」を、ホップ・ステップ・ジャンプと、さらに高めていきたいというのが、私の思いです。
 私は、この4期(~2012年)で知事を辞めることにしていますが、今申し上げた思いを次の世代に繋げていくため、ポスト国体として、2015年には、山口市きらら浜で「世界スカウトジャンボリー」を開催することにしています。ホップ・ステップ・ジャンプそしてジャンボリーです。
 我が国では、1971年の静岡県に次いで2回目、44年ぶりとなります。4年ごとの開催で、山口県の開催は第23回になりますが、世界各国・地域から、約3万人の青少年が集い、キャンプや野外体験活動等を通じて交流する、ボーイスカウトの世界最大の行事です。
 また、プレとして、2013年には、「日本ジャンボリー」もきらら浜で開催されますので、青少年の健全育成や国際交流など、将来を見据えたしっかりとした基盤も、私の就任期間中に創りあげておきたいと思っています。
 皆さんには、このジャンボリーにも何らかの形でぜひ関わっていただきたいと願っております。

近接と補完の原理

近接と補完の原理の画像

 次に、「公助」についてどう考えるかということですが、これについては、「近接と補完の原理」というのがあります。
 この原理は、この画面を見ていただければわかりますように、まず、住民ができることはできるだけ住民が行い、どうしてもできない政治行政(公助)を、住民に最も身近な市町村で行い、市町村ではできない広域的な分野は、日本で言えば都道府県で行い、そして、どうしても国でなければできない分野のみ国が行うというものです。
 私は、地域主権改革は、この近接と補完の原理に基づき進めていくべきであると考えています。

市町村合併の推進

 また、私は、平成の市町村合併についても、この原理に基づき、積極的に取り組んできました。
 住民に最も身近な市町村が住民ニーズに的確に対応できるためには、それだけの体力、知力、別の言葉で言えば、地方分権(地域主権)の受け皿になれる力を付けること、すなわち、市町村の財政基盤を強化し、政策・行政能力を高めていくことが必要であり、そのための最も有効な手段が市町村合併であるということです。
 具体的に申し上げますと、山口県では、市町村合併へ積極的に取り組んできた結果、平成15年3月末に56あった市町村が、現在19市町となっています。

市町村合併の推進の画像1

 しかし、山口県にとっての大きな悩みは、多くの県に見られるような県全体をリードする中核都市がないということです。人口30万人以上の規模を持つ市がないため牽引力に欠ける嫌いがあります。
 したがって、県としては、さらに合併を進め、現在の19市町を9市とする構想を進める中で、30万人以上の中核都市づくりに努力していくべきであると考えています。

市町村合併の推進の画像2

 なお、地域主権の取組が本格化し、住民に最も身近な基礎自治体である市町村の機能が強化されていきますと、県の役割や枠組みも見直すことが必要になり、今後、道州制の議論がこれまで以上に活発化してくると思います。
 道州制になった場合、山口県はどのような枠組みに入ることになるのか、山口県は、中国州になっても、中四国州になっても、端っこになります。九州との関係が深いからと九州に入っても、端っこです。
 したがって、端っこになっても、今の山口県という地域において、市や町が将来にわたってがんばっていけるよう、皆さんには、そのことも視野に入れて、仕事をしていただきたいと願っております。

8.確かな目標を持つ

住み良さ日本一元気県づくり加速化プラン

 私は、平成10年に長期的な県政運営の指針として「やまぐち未来デザイン21」を策定し、これまで5次にわたる実行計画に基づき、「21世紀の山口県づくり」に積極果敢に取り組んでまいりました。そして、一昨年3月に、4期目の、第6次の実行計画として「住み良さ日本一元気県づくり加速化プラン」を策定しました。
 この「加速化プラン」は、私にとっては、デザイン21の総仕上げとなる計画で、皆さんが仕事を進めていただく上での目標になるものです。

住み良さ日本一元気県づくり加速化プランの画像1

 この加速化プランでは、施策を展開していく体系として、「県民のくらしの安心・安全基盤の強化」をはじめとした「6つの加速化戦略」と「21の戦略プロジェクト」を設定し、「選択」「集中」の視点で絞り込んだ「96の重点事業」を掲げ、具体的な数値目標として、104の「住み良さ・元気指標」を新たに設定しています。
 この「加速化プラン」の大きな特色は、「住み良さ・元気指標」という、数値目標を掲げているということです。
 その一部を抜粋しましたが、それぞれ目標値を掲げ、全国的に優れた分野は、その順位の維持やさらなる向上のための取り組みを進める一方、劣っている分野については、より「重点化」「集中化」を図りながら、着実に推進してきました。

住み良さ日本一元気県づくり加速化プランの画像2

 特に、今年度は、私にとりまして実質的に最後の予算になりますので、「加速化プランの総仕上げ予算」として編成し、「住み良さ・元気指標」の目標が一つでも多く達成できるよう、予算の重点配分に努めました。
 その結果、「住み良さ・元気指標」の達成の見通しですが、104の「住み良さ・元気指標」のうち、「達成済み」または「達成可能」としたものが75指標、全体の72.1%となっております。
 今後は、予算の執行を通じて、これら「達成可能」とした指標が確実に達成できるように、努力をしていきたいと考えております。
 厳しい財政状況の中、また、指標の中には、実施主体が民間や市町となっているものもあることを考慮しますと、私としては、70%台の達成見通しが立ったことは、決して満足はいたしておりませんが、一定の評価はできるのではないかと思っております。

マズローの欲求段階説

 ところで、皆さんは、「マズローの欲求段階説」というものをご存知でしょうか。
 アメリカの心理学者マズローは、この図のとおり、人間の欲求には段階があって、まずは、「食べる」「眠る」などの「生存の欲求」から始まり、安全に生活したいという「安全の欲求」に移っていく、そして、人間が生存していくために必要不可欠な、この2つの最低限の欲求が満たされると、より高い欲求である「帰属の欲求」(集団の一員として認知されたいという欲求)、「尊敬の欲求」(他人から尊敬されたいとか、人の注目を得たいという欲求)、「自己実現の欲求」(各人が自分の世界観や人生観に基づいて自分の信じる目標に向かって自分を高めていこうとする欲求)が芽生えてくる、と唱えました。
 このマズローの欲求5段階説に沿って申し上げますと、我が国は、第二次世界大戦後、戦後復興から経済成長を通じ、その生存の欲求とか、あるいは安全の欲求を満たし、物の豊かさを実現し、より高次の欲求へと、順調な歩みを続けてきたように見えました。

安心安全重視 マズローの欲求段階説

 しかし、平成7年、1995年1月の、あの阪神淡路大震災により、我々が信じてきた我が国の「安全神話」が大きく崩壊しました。それ以来、全国各地での地震の発生、食品の偽装事件や振り込め詐欺、無差別殺傷事件など、安心・安全を脅かす様々な事件・出来事が起き続けてきました。
 したがいまして、私は、私たち政治行政に携わる者は、人々の欲求のうち、生活の確保や安心・安全といった、いわゆるこの「マズローの欲求段階説」でいえば、「生存の欲求」「安全の欲求」に対する政策をもう一度点検して、見直していく、そのことが、現在最も大きな課題の一つとなっていると考え、加速化プランの6つの戦略のうち、「県民のくらしの安心・安全基盤の強化」を最優先に取り組んでまいりました。
 そのような中、このたび、東日本大震災が起き、東京電力の福島原電事故も終息の目処が立たない状況が続いています。
 県としても、現在、人的・物的両面から、できる限りの支援を行っている最中ですが、原電の「安全神話」も完全に崩壊したと言わざるをえません。
 県としても、今回の災害、事故を踏まえて、地域防災計画等の見直しに着手したところです。
 なお、奇しくも、今回の東日本大震災が発生する直前に成立した今年度予算において、県立学校施設の耐震化を一気に進めるため、2月補正予算とあわせて、例年の2.5倍となる総額約100億円を計上し、これにより加速化プランの目標である耐震化率90%を1年前倒しで達成することにしております。
 また、山口県の場合、一昨年、昨年と2年連続で、我々がかつて経験したことがない大規模な土石流災害等による豪雨災害などがあり、今年度は、近年多発する豪雨災害を踏まえた河川の浚渫、危険ため池対策等を集中的に実施することにしています。
 「災害は忘れた頃にやってくる」という名言がありますが、今や災害は忘れる暇もなく、またその規模も大きくしてやってくる傾向にあります。
 皆さんには、災害のみならず、多様な危機管理事象に対して、迅速な対応ができるように、常日頃から高い危機管理意識を持って職務に当たられるように、お願いしておきます。

9.実行力・行動力

 以上、皆さんが、これからの人生を歩む、あるいは仕事を進めて行く上で、「自分のスタイル」を考えるヒントになればと思い、私の考えをお話しました。

考える力・実行する力 結果を出す

 ただ、我々は、学者や評論家ではありませんから、それを「行動」に結びつけて、「結果」をださなければ意味がありません。我々は、「考える」人であると同時に、「実行する人」にならなければ意味がないのです。
 したがって、我々は、「考える」、「実行する」のサイクルを繰り返しながら、より洗練された「実行力・行動力」へと高め、如何に「期待される結果」に結びつけていくか、このことを常に心がけていかなければなりません。
 「実行力・行動力」という面で、【鳥インフルエンザへの対応】についてお話をさせていただきます。最近は、全国各地で鳥インフルエンザが発生していますから、山口県での発生はほとんど忘れ去られていると思います。

鳥インフルエンザへの対応

 今から7年前、2004年1月12日に、旧阿東町の養鶏農場で、日本国内では79年ぶりとなる「鳥インフルエンザ」が発生しました。
 健康面への不安のみならず、食生活を脅かす大問題となりましたが、直ちに家畜伝染病予防法の規定に基づき、発生農場に対する防疫対策を、県庁の技術職員などが中心になって、山口県が独自に編み出した、画面のような服装をし、冷静に、スピーディに、かつ、きめ細かく対応しました。
 また、国の方針に沿って、発生農場から30km以内の卵やブロイラー等の出荷制限や移動制限の措置を講じました。
 ところが、このエリア内には、卵を生ませるために飼っている鶏が100万羽いました。鶏は1羽当たり、1日に0.9個の卵を生みますから、毎日毎日、90万個の卵が増え、貯まっていくことになります。
 そのような中、私は、現場の対応は技術職員に任せるとして、知事の役割は何か、対策がスムーズに進めるために知事として何をやるべきか考え、発生から4日後に、移動制限区域内の卵を「県ですべて買い上げる」ことが、この対策を最もスムーズに進める方法であると考え、記者会見で公表しました。
 当時、最短でも38日間は卵の出荷や移動ができないとされていましたので、3千何百万個の卵があのエリアの中に貯まってしまうという計算になり、私は、卵を貯めておかなければならない養鶏農家の気持ちを考えたときに、経済的不安を解消することが最も必要だと考え、県で卵を買い上げると申し上げたのです。
 このことを発表する日までは、養鶏農家から死活問題だと電話が毎日あったのですが、この発表によって、県の措置に対する批判もなくなり、関係職員も防疫対策に集中することができることになりました。
 県が卵を買い上げるということで、養鶏農家の皆さんも、安心して我々の防疫対策に協力していただくことができ、菌を完全に封じ込めることに成功しました。

鳥インフルエンザ

 私は、この事件を通じて、トップは何をすべきか、トップでなければできない決断の重要性をあらためて確認することができました。
 山口県の当時の対応は、全国的にも高い評価を受けましたが、この成功体験、安心・安全対策の重要性を県の職員全体で共有できたことは、今も進めている、いろいろな安心・安全対策の基礎、財産になっていると考えています。

10.おわりに

おわりにの画像

 以上が約40年間にわたる様々な体験の中で積み上げてきた「物の見方・考え方」についての「私のスタイル」です。
 山口県の人口は、昨年10月1日現在の国勢調査の結果、1,451,372人となっており、平成17年の前回調査の人口に比べ、41,234人(2.8%)の減少となっています。
 この表は、平成17年における山口県人口の将来予測ですが、今後も、残念ながら、人口減少が続き、少子高齢化が進んでまいります。
 また、先日の本庁部課長・出先機関の長合同会議でも申し上げましたが、山口県も、極めて深刻な財政状況等、様々な課題を抱えています。
 どうか、皆さんには、直面する課題、中長期的な課題をよく整理し、常に意欲を持って、自分のスタイルを構築しながら、山口県の発展のために活躍されるよう、お祈りし、私の話を終わります。