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平成23年 (2011年) 6月 16日

政策企画課

内外情勢調査会 知事講演[平成14年(2002年)8月2日 下関市] 「自立・協働・循環の県づくり」

 ◇ はじめに


 ただ今、御紹介いただきました二井関成です。

 本日は、内外情勢調査会の御配慮のもとで、御多忙中にもかかわらず、また猛暑の中、多くの皆様方に御出席をいただき、県政についてお話させていただく機会を頂きましたことを、心から感謝申し上げます。



 ◇ 信頼ある県政の推進


 さて、私も、1996年、平成8年8月に知事に就任して以来、お陰様で、6年になります。2期目の折り返し点という節目でもありますので、今日は、「自立・協働・循環の県づくり」というタイトルで、私の県政への取組姿勢について、お話をさせていただきます。したがいまして、下関地域に絞っての話はいたしませんので、その点御容赦いただきますよう、お願いいたします。

 私は、今年の書き初めで、信ずる、信頼するの「信」と書きました。なぜ「信」と書いたか、一つは、昨年大成功した、きらら博の成果を活かし、「やればできる」という自信を持ってがんばっていこうではないかという「自信」の「信」です。もう一つは「信頼」の「信」でして、県政も、今様々な課題を抱えており、その解決のために、お互いが信頼しあい、スクラムを組んでがんばっていこうではないかということです。

 ところが、この「信頼」の大切さを再認識させられる事件が、まず1月末に起きました。雪印食品の虚偽表示事件です。

 雪印食品は、この事件で国民の信頼を失い、解散に追い込まれました。国民の信頼を裏切ると、どういう結果になるか、それを最も厳しい形で突きつけた事件であったと思います。その後も、次々と食品の虚偽表示事件が発覚し、山口県でも起きてしまいました。

 また、国におきましても、「政治と金」の問題で、名前は一々申しませんが、国会議員一人が逮捕、三人が辞職に追い込まれました。

 さらに、各省でも、BSE、いわゆる狂牛病問題での農林水産省の対応、鈴木宗男問題や瀋陽事件での外務省の対応、プライバシーの問題への防衛庁の対応等、様々な問題が発生し、国民の批判を浴びています。

 残念ながら、最近我が国で起きている様々な事件、出来事によって、「信頼」が、民間でも、政治の世界でも、社会の多くの分野で崩れてしまっている今、この最低のモラルの確立が早急に求められているのではないでしょうか。

 また、徳島県知事の汚職事件という、同じ知事として極めて遺憾な事件も起きています。本県でも、昨年3月、土木事務所で、汚職事件が起きました。

 私は、このような公務員に係る事件は、永年勤務するうちに、マンネリ化し、公務員としての自覚をなくしてしまった、目先のことしか見えなくなってしまった、このことによって起きた事件だと思います。

 中国の「荘子」のなかに「朝三暮四」という有名な話があります。これを現代風に直しますと、「ある時、猿回しの親方が、猿に丼を、朝3杯、夕方4杯与えようとしたところ、猿が大いに怒ったので、朝4杯、夕方3杯にしたら、猿はとたんに機嫌を直した」という話です。この話は、朝3杯夕方4杯と、朝4杯夕方3杯と、実質的にはなんの違いもないのに、それがわからず、目先のことに囚われる愚かさを笑ったものですが、我々は、ともすると小さな利害関係に心を奪われ、大局的な判断を失いがちです。この猿の場合は、それでも結果的には丼7杯食べたわけですが、我々公務員の場合は、国民、県民の信頼を失い、個人的にも飯が食べられなくなり、生活の糧を失うことになります。

 したがって、私は、県職員に対し、あらゆる機会を通じて、信頼の大切さを訴え、「いま自分が行っている行動が県民の皆さんのためになっているのか、その行動を県民の皆さんにオープンにして説明できるか」、また「自分も県民であり、サービスの受け手である。自分が受け手だったら、どう考えるだろうか」ということを、常にチェックしながら職務にあたるよう、その徹底を図っているところです。今後とも、まず、「信頼を基本にした県政運営」に、全力で取り組んでいかなければならないと考えております。



 ◇ 地方分権:21世紀の最も重要な視点


 そして、私は、県政を進めるにあたり、「信頼」と併せ、重要な視点は「地方分権」であると考えております。

 御承知のとおり、国の仕事は、県や市町村を通じて行われることが多く、いわゆる業界団体等は別にして、一般国民との接点が少ないというのが、現状です。

 したがって、国の場合、「霞ヶ関の論理」とか「永田町の論理」という言葉で言われるような、国民の意思とは遊離した出来事や事件がよく起きることになります。現に、今お話しましたような、マスコミ等で「スキャンダル国会」と揶揄やゆされる様々な出来事や事件が起きています。地方での出来事や事件であれば、その影響もその地方だけで済みますが、国の場合は、国会の麻痺を通じて、国民全体に大きな影響を与えてしまいます。

 今、住民から目の届きにくいところで行われる中央集権的なシステムは、様々な制度疲労、弊害を起こし、十分に機能できなくなっているというのが現状ではないでしょうか。

 今日、先進諸国へキャッチアップするという目標も一応達成され、「物の豊かさ」から「心の豊かさ」が求められ、一人ひとりの「個性」が重要視される時代になりますと、中央集権制度では、多様化する住民ニーズにきめ細かに対応していくことが困難になってまいりました。

 したがって、私は、国の役割は、外交、防衛など国家の存立に関する問題や、社会保障など政府がリーダーシップを持って全国的な観点から進めなければならない課題に限定すべきであり、

 国の権限、財源はできるだけ住民に身近な地方自治体に委譲すべきであると考えております。

 確かに、我々のこれまでの運動の結果、一昨年4月から、地方分権一括法が施行され、国と地方が対等の関係になり、権限についても一定の見直しがなされましたが、しかし、現実の、税財源の配分の面では、ほとんど進展がないというのが現状です。

 依然として、仕事の量は、国が4に対し地方が6、それを賄う税収は、国が6に対し地方が4となっており、その差の2の資金が、国から地方に再配分する仕組みになっています。

 この関係を少しでも是正し、国から地方への税源移譲等により、国と地方の税収を1:1にしようとするのが、先般示された片山試案であり、やはり先日の骨太方針第2弾(経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002:平成14年6月25日閣議決定)でも、国と地方の関係について「国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討する」とされました。

 今後も紆余曲折はあると思いますが、こうした動きの中で、私は、「地方のことは地方で」という地方分権の流れはより大きく、ますます確実なものとなってくると確信しておりますし、引き続き、それを実現するために、全力で取り組んで行かなければならないと考えています。



 ◇ 依存から自立へ


 一方、地方分権を進めるためには、制度の改革に併せて、それを進めていく我々自身の意識を変えていくことが必要となります。

 日本の社会構造は、まず個人があり、それがまとまった自治会などの地域組織があり、その上に、市町村、県、国という三層構造が乗った形になっています。そして、こうした体制の中で、これまでは、何かあれば、それぞれ上位の組織にお願いする、そして、実現してくれなければ、責任は上位のものにあるとする、極端な言い方をすれば、無責任な「依存型」になってきたと言えるのではないかと思います。

 しかしながら、地方分権を進めるということは、この「依存型」の体制から、「地方のことは地方で」自らの責任の下で行うという、「自立型」の体制へ変換していくことが求められ、より地方の自己決定、自己責任が必要な時代になってまいります。

 そして、このことは、単に行政内部だけのことではなく、県民の意識も、「依存型」から「自立型」へ変えていくことが必要であり、その方向に発想を転換していくことが求められているのだと思います。

 言い換えますと、これからの県づくり・地域づくりのためには、まず、自分たちでできることは自分たちで行う、家庭でできることは家庭で行うという「自助」、そして、個人が社会の一員として、お互いに助け合って問題を解決するという「共助」を基本に、「自助」「共助」でどうしてもできないことを、市町村や県、国が行う「公助」で対応するという方向に発想を変えていくことが必要になってまいります。

 また、地方分権というのは、「地方のことは地方で」ということですから、地域間の競争が激しくなる時代を迎えるということであり、地域同士の知恵比べ、アイデア比べの時代でもあります。

 したがって、私は、21世紀の新しい県づくり、地域づくりは、このような地方分権の大きな流れをしっかりと受け止めて進めていく必要があり、そのためには、先ほど申し上げた「自助」、「共助」の「県民の力」を如何につけるか、「公助」のうち、住民に最も身近な「市町村の力」を如何に高めていくのか、このことが、今日の極めて重要なテーマであると考えております。

 したがって、本日は、「県民の力」、「市町村の力」という切り口から、お話してみたいと思います。



 ◇ 「山口きらら博」:県の力を試す舞台


 まず「山口きらら博」についてです。昨年、21世紀のスタートにあたり、県民の力を発揮する舞台として、用意したのが「山口きらら博」です。

 「山口きらら博」は、私が知事に就任いたしました直後、平成8年9月に開催を決定し、以来、約5年、非常に重たい荷物を背負っての長い長い道のりでしたが、皆さまの大変なご支援、ご協力をいただき、目標を大きく上回る、251万人余りの来場者を迎え、大成功を収めることができました。去る4月15日には、財団法人地域活性化センターと全国58新聞社が主催する「ふるさとイベント大賞」で、都道府県としては前例のない選考委員特別賞を受賞するなど、「県民総参加の博覧会」として、多方面から高い評価をいただきました。

 きらら博の成功の理由は何だったでしょうか。

 私は、景気の低迷で大変厳しい状況の中にもかかわらず、県民の皆さん、企業・団体の皆さん、市町村の皆さんが、その準備段階から閉幕まで、様々な分野で、力強いご支援、ご協力をいただいた、きらら博に協力していただいた、あらゆる分野の方々の知恵と力の結集の結果だったと思います。吉田松陰先生の「草莽崛起そうもうくっき」という言葉をお借りし、今風に言えば、「県民あげて奮い立った」結果と言えると思います。

 そして、その中で何にも増して大きな力となりましたのが、あの猛暑の中、会場内外で陰に日向に、山口県の元気やホスピタリティを発揮してくれたボランティアやスタッフの皆さんでした。皆さんの会場いっぱいに表現された、あの「やさしさと思いやり」、「元気と笑顔」であったと思います。

 5万1千人を超えるボランティアやスタッフの対応の素晴らしさが、来場者に感動を与え、ロコミで拡がっていきました。そして、当然のことながら、このことがボランティア等の皆さんにも伝わり、その対応に一段と磨きがかかっていきました。この来場者の皆さんの「評価する、誉める」、ボランティアやスタッフの皆さんのその「期待に応える、がんばる」という好循環が、来場者の心とボランティア等の心を一体化させ、「会場からオーラ、熱気が溢れていた」と言われた現象に繋がっていったと思っています。

 先般のIWC総会が大成功を収めましたのも、江島市長さんを初め市当局の大変な御努力はもちろんですが、多くの市民ボランティアの活躍に負うところが大きかったのではないでしょうか。

 余談になりますが、昨年7月下旬に、福岡で世界水泳選手権がありました。スポーツの好きな私も、きらら博で頭がいっぱいで、見る余裕もありませんでしたが、シンクロナイズ・スイミングで、立花・武田組が金メダルを獲得しました。これまで、手足が長く、スタイルの良いロシアにはどうしても勝てなかったそうですが、そのロシアにどうして勝てたのか、ある雑誌に、井村さんという女性のコーチの、金メダル獲得秘話が出ておりました。

 それによりますと、ロシアの演技を何度もビデオで分析した結果、時間が経つにつれ、脳からの指令が、手足が長いために末端まで届きにくくなり、手足がフラフラになる、要するに、バテルのが早いということがわかったそうです。これまで短所とされていた日本チームの手足の短さを逆に活かすことができること、丈夫で長持ちであることを発見し、猛特訓し、金メダルへ結びつけたということです。

 依然として景気・雇用情勢も厳しく、世の中は、悪い方向へ、暗い方向へと、目が向きがちですが、短所と言われるものの中にも長所がある、気がつかない所にも評価すべきものがある、それらを見つけ出して、きらら博のような良い循環を、スクラムを組んで創り出していく、このことが、今、最も求められているのではないでしょうか。私は、きらら博から「評価することの大切さ」も学ぶことができたと思っています。



 ◇ ポストきらら博:県民の力の発揮


(1)県民活動の推進

 さて、私は、このきらら博での体験を通して、ボランティア活動をはじめとする県民活動の重要性や、県民の皆様が一つの目的に向かっていった時に発揮されるパワーの大きさといったものを実感しました。先ほど、地方分権の時代は、県民の力が問われる時代であると申し上げましたが、私は、きらら博を通じ、今後の県の発展は、こうした「県民活動の活発化」にかかっているとの思いを新たにしました。

 そのため、この博覧会の成果を今後に活かし、県民活動のネットワークを一層拡大していくため、この2月県議会に、住民と行政とのパートナーシップに関する基本理念や活動促進のための方向性を示した「県民活動促進条例」を提案し、4月から施行しました。

 また、この条例と併せて、県民活動を支援していくための組織を充実することが重要ですから、そのための県の中核組織として、やはりこの4月から、「やまぐち県民活動きらめき財団」をスタートさせ、きらら博の剰余金のうち5億円を活用し、取り崩し型の基金とし、これを基に、県民活動の支援のための各種事業を実施することにしております。

 さらに、平成11年秋に県民活動の支援拠点として整備した「県民活動支援センター」を、NPO法人の協力を得て、民営化したところであり、全国的にも先進的な支援体制を整備しました。

 現在、山口県内には、県民活動団体が約1500団体、そのうち県民活動支援センター登録団体が約550団体あり、また、NPO法人は72件となっておりますが、私は、住民の要求が、物の豊かさから心の豊かさに移るにつれ、行政だけでは対応できない公益活動や、県民活動団体と協働で取り組むことで、より成果を上げることができる分野が、今後、確実に増えてくると考えており、きらら博を契機に芽生えた県民活動を、様々な分野で大きく育てていきたいと思っております。


(2)ポストきらら博戦略プランの策定

 また、きらら博は、「ホスピタリティー博覧会」、「ゴミゼロ博覧会」、「バリアフリー博覧会」を目指した、ボランティアの皆さんの協力をいただいての、個別具体の政策の、実験の場ともなりました。時間の関係で説明は省略しますが、いずれの実験も大きな成果をあげ、大成功を収めることができました。

 なお、私は、きらら博開催期間中、山口県全体を博覧会会場にしたいという思いで、全国JR6社と提携し、大型観光キャンペーンを実施しました。その成果もあり、昨年の本県の観光客数は、過去最高の2550万人、前年度比20%増となり、きらら博を除いても、2300万人、前年度比8.3%増となりました。特に、下関市は、海響館、唐戸市場等により、前年度比16.6%増となっています。今年に入りましても、下関の場合は、カモンワーフ、IWC、NHK大河ドラマ「武蔵」と、追い風が吹いていますので、この風をうまく捉えて、如何に良い循環を作っていくか、官民挙げた取組が重要だと思います。県においても、先般、「山口県観光戦略会議」を立ち上げたところです。

 さて、話を元に戻しますが、私は、きらら博の開催を提唱して以来、この博覧会を一過性のイベント、単なるお祭りに終わらせてはならない、この博覧会で創られた多くの資産をこれからの地域づくりや県づくりに具体的な形で継承し、また、発展させていくことが真に重要であると申し上げてきましたが、きらら博の成果も踏まえ、この度、「ポストきらら博戦略プラン」を策定しました。

 このプランでは、”県民活力”や”県民活動”を、「環境」や「地域づくり」、「文化」、「スポーツ」、そして「観光・情報発信」に、積極的に活用していく施策や、「県民活動」そのものの支援策などを幅広く盛り込んでおります。

 皆さん、童謡詩人金子みすゞの「星とたんぽぽ」という詩をご存じでしょうか。

     青いお空のそこふかく、

     海の小石のそのように、

     夜がくるまでしずんでる、

     昼のお星はめにみえぬ。

       見えぬけれどもあるんだよ。

       見えぬものでもあるんだよ。

という詩です。

 私は、きらら博を「21世紀の松下村塾」にしたいということも申し上げてきましたが、今、各地域で、きらら博を卒業した塾生の熱いエネルギーが燃え続けており、先日の「きらら博メモリアルイベント」にも、ボランティア等として多くの皆さんの参加をいただきました。

 今は、まだまだはっきりと目には「見えぬけれども」、必ずや、きらら博で播いた種が、地方分権時代にふさわしい、大輪の花となり実となって、「見えてくる」と確信しております。

 私は、これからも、今回の博覧会での成果も活かし、4年後の国民文化祭、また、9年後の国民体育大会も視野に入れつつ、県民の皆さんがその力を存分に発揮できるような「動き」を様々な分野で創り出していきたいと考えております。



◇ もう1つの舞台:「やまぐち情報スーパーネットワーク」


 次に、「やまぐち情報スーパーネットワーク」についてです。私が、県民の力を発揮するもう1つの舞台として取り組んでいるのが「やまぐち情報スーパーネットワーク」の「情報化プロジェクト」です。

 山口県では、全国に先駆け、県内15カ所に設置したアクセスポイントを622Mbpsという高速大容量の光ファイバー網で結んだ総延長約450Kmに及ぶ「やまぐち情報スーパーネットワーク」を整備し、既に昨年の7月より運用を開始しております。

 さらに、本年度から2カ年の予定で、このネットワークの安全性・信頼性を一層高めるため、ネットワーク網のループ化を前提とした延長整備を行うこととしており、この延長部分約380kmの整備が終了しますと、これまでの整備部分を加え、総延長は830kmの巨大なネットワークとなります。

 これは、自治体が独自に整備するネットワークとしては、全国で最大級のものであり、山口県は、全国に先駆けてブロードバンド時代に対応するインフラが整備されたと考えています。

 私は、この「やまぐち情報スーパーネットワーク」を大いに活用し、新しい知恵や活力を創出して、教育、福祉、文化、産業など県政の様々な分野を活性化させていくことが、今後の県づくりの鍵を握っていると考えています。

 したがいまして、現在、教育や医療、文化などの分野では、このネットワークを活用して、大学間を結んで行う遠隔講義や、全県立学校間を結んだ情報教育を行う「スクールネット21」、病院間を結んだ遠隔画像診断、美術館等の収蔵品のデジタルデータ化など、先進的なシステム開発に取り組んでいます。

 また、全国に先駆けたユニークな取組として、このネットワークを利用して、県内の携帯電話不感地域を解消するモデル事業にも取り組んでいるところです。

 具体的には、NTTドコモ中国が、携帯電話の基地局アンテナを設置し、このスーパーネットワークを経由して、自社の交換局に繋ぐという試みですが、従来、採算が成り立たないと切り捨てられていた山間の過疎地でも、通信事業者に県のネットワークを提供することで、最少の経費で事業展開が可能になるという全国の先駆けとなる取組で、この結果に多いに期待しております。

 また、産業面では、全国初の試みとして、NTT西日本と共同で、非常に低廉な料金で海外や東京、大阪と通話ができる「接続共同実験」を実施しており、3月末現在で、県内企業、ベンチャー企業約300社をはじめ、一般の県民の方々を含めると600件を超える利用がなされております。

 また、「やまぐち産業振興財団」内に、スーパーネットワークに接続する大容量のサーバー群を整備し、県内中小企業者が電子店舗の開設を行うための支援を行うなどの新たな取組などにも着手したところです。

 併せて、今後、県庁の電子化、いわゆる「電子県庁」へ向けた取組みも進めてまいりますし、昨日(平成14年8月1日)からは、NTT西日本の地域内のデータ通信網である、地域IP網との相互接続を開始し、県内の団体や企業が低廉な経費で高速ネットワークを構築できる仕組みを整備しました。

 このように様々な取組をしております。先ほどの金子みすゞの詩ではありませんが、情報化というのは、なかなか目に見えにくい、分かりにくいものではありますが、私は、今後とも、あらゆる分野での情報化を促進し、「目に見える形での」情報先進県になるよう、さらに努力してまいりますし、皆様も、ぜひ、この情報スーパーネットワークを積極的に活用していただき、また提案もいただきますよう、お願いいたします。



◇ 市町村の体力の強化


 次に、市町村の力という面についてです。

 御承知のように、山口県には、14市42町村の56市町村がありますが、そのうち、人口5千人未満の町村が15町村、5千人以上1万人未満の町が18町と、人口1万人未満の自治体が約6割(59%)を占めており、全国平均の48%に比べると、人口規模の小さい町村が比較的多いという特徴があります。

 一方、都市についても、瀬戸内海側に、下関市の26万人を筆頭に、宇部、山口、防府、徳山、岩国と、人口10万人台の中小都市が分散するいわば串団子のような都市構造になっており、県全体をリードする中核都市がないことが、本県にとって、古くて新しい最重要政策課題となっています。

 全国と比べると、個々の市町村の体力は総体的に弱く、他県に比していち早く高齢化社会を迎えた本県の現状を考えると、今後益々増大し、多様化していく住民ニーズに、個々の市町村が現在の規模で的確に対応していけるのか、憂慮すべき状況ではないかと考えています。

 御存じと思いますが、現在の市町村の体制は、昭和30年後の昭和の大合併といわれる時代に決まったもので、現在全国で約3,200の市町村があり、その数は約50年間ほぼそのまま維持されてきました。しかしながら、この間、道路網の整備や携帯電話などの情報伝達手段の発達により、県民の行動範囲は大きく拡大してきており、従前にも増して広域的な行政展開が必要となっています。

 一方、各自治体の財政状況は年々厳しくなっており、特に小規模な市町村ほど財政基盤は弱くなっておりますし、市町村の歳入総額の1/4を占める地方交付税の制度見直しも進められており、地方交付税への依存度の高い市町村では、財政運営が今後より厳しくなることが予想されています。

 したがって、今後ますます進展していく地方分権時代に対応していくためには、住民に最も身近な自治体である市町村の財政基盤を如何に強化し、また、政策・行政能力の向上を高めていくのかということが喫緊の課題であり、そのためには、特に山口県の場合、市町村合併は、避けて通れない課題となっております。

 国の合併支援措置を定めている合併特例法の期限は、平成17年3月とされておりますので、残すところ2年半余りということになっておりますが、合併に関するあらゆる事項を協議、検討する合併協議会の立ち上げから、合併の実現までの間に、一般的には約2年弱の期間が必要と言われております。

 したがいまして、本年度が、合併に向けて大変重要な時期となりますので、下関地域においても、9月に全国リレーシンポジウムの開催を検討しており、ぜひ合併論議を深めていただく必要があると考えております。



◇ 新たな協働の推進


 以上、地方分権の流れを踏まえ、県民の力、市町村の力を如何に高めていくか、「きらら博」や「やまぐち情報スーパーネットワーク」という舞台の活用も含め、申し上げました。

 私は、今後はさらに、それぞれの持てる力、特性を、お互いに連携・協働しながら、最大限に発揮し、地域の総合力を高めていくことが重要であり、産学官あるいは産学公の取組みを強化しなければならないと考えております。

 そこで、本日は、時間の関係もありますので、循環型地域社会の構築という視点から、本県が取り組んでおります、先進的な取組み事例を紹介してみたいと思います。


(1)産学官の連携・協働

 まず、「ごみゼロ社会プロジェクト」の推進です。

 この4月から、宇部興産とトクヤマの共同出資で設立された山口エコテック㈱という会社により、県内全域で排出される「ごみの焼却灰」をセメントの原料とするプラントが建設され、ごみ焼却灰を利用した普通セメントの生産が開始されました。

 県内の市町村から出るゴミの焼却灰は、年間約5万トンあり、この施設の本格稼働の前は、そのほとんどが埋め立て処分されておりました。この焼却灰を、セメントの原料である粘土の代わりに活用できないか、産学官が連携した実証試験を行った結果、その安全性と実用性が確認され、事業化の運びとなったものでして、この事業は、山口県から全ての焼却灰がなくなるという全国に誇れる画期的な取組みになっています。

 また、徳山市の帝人ファイバー㈱でも、産学官が参加したリサイクルシステムの検討を経て、今年4月から廃ペットボトルをポリエステル原料として活用する事業が開始されており、また、これまで、 せいぜい、繊維としての再利用されるにすぎなかったペットボトルのリサイクルの可能性を広げる、廃ペットボトルから新たなボトルを作るという、世界初の取組み「ボトルtoボトル」の事業も、来年10月からスタートしていただく予定になっております。容器包装リサイクル法が施行された1997年から、ボトルの回収量も大幅に増えており、その成果を大いに期待しております。

 さらに、宇部興産などが出資された㈱イーユーピーでは、廃プラスチックをアンモニア等にリサイクルするシステムが稼働しております。

 なお、これらの取組は、いずれも基礎素材型に特化した本県の特性を活かしたプロジェクトですが、お互いに、持てる能力、知恵を出しあうことによって、環境産業として新たな展開、活性化ができるというモデルだと思います。

 また、本年5月には、建設リサイクル法が完全施行され、また、今国会では自動車リサイクル法が成立するなど、新たな分野でのリサイクルを推進する必要が生じており、本年度から産学官の連携による本県の産業特性を活かした、これらのリサイクルシステムを検討していくこととしております。

 さらに、産学官連携のプロジェクトとして、本年度から「森林バイオマスエネルギーの活用推進」に取り組んでおります。

 本県は、県土の7割が森林であり、竹林面積も、京都府に次いで全国第2位でして、豊富な森林資源を有しています。具体的には、1年間に供給可能な未利用森林資源は約30万tで、これを石油に換算すると約11万klとなり、これを全量発電した場合、約7万世帯の年間電力消費量に相当します。

 このような間伐材や竹材などの豊富な森林資源を「バイオマスエネルギー」として活用し、未利用森林資源の供給からエネルギー利用に至るシステム、いわば「エネルギー地産地消」を構築し、新たな「資源循環型」地域産業づくりに結びつけていくというのが、このプロジェクトです。

 県では、これまで国に対し、このようなプロジェクトの必要性を提案してきましたが、この度、国がバイオマス資源を新エネルギーとして位置づけましたので、県として、本年度から、産学官連携で、このプロジェクトを推進することにいたしました。

 具体的には、中山間地域のエネルギーとして、バイオマスのガス化発電プラントの実証試験を開始するほか、既存の火力発電所での石炭との混焼技術の開発、森林バイオマスから製造するペレット燃料を活用する小規模分散型発電システムの実現可能性調査などを進めることとしており、山口県の特色を生かした新たなエネルギー源として、森林バイオマスの利用を積極的に推進していきたいと考えております。

 なお、森林資源の活用という面では、間伐材を活用した魚礁の開発も進めております。

 これまで、県単独事業として、間伐材魚礁を進め、一定の成果を上げてきましたが、今、新たに取り組んでおりますのは、「ハイブリット型魚礁」というものです。これは、間伐材とコンクリート、鋼材を組み合わせた新しいタイプの魚礁でして、従来型より耐用期間や堅牢性に優れるなど大きな利点がありますので、産学官協働で、研究開発の取組を進めていくこととしており、その成果等を踏まえ、この魚礁製作が「森と海をつなぐ」地場産業として定着するよう、努めていきたいと考えております。


(2)産学公の新たな取組

 次に、産学公の取組についてです。

 これまでお話しましたように、「産・学・官」の取組を推進していくことはもちろん重要ですが、私はこの概念をもう少し広げて「産・学・公」としての取組を推進していきたいと考えております。

 ここでの「公」は「公(おおやけ)」あるいは「パブリック」という意味で、行政はもちろん、NPOや市民組織等とコラボレーション(協働)を進めていこうという新しい概念です。

 今後、この「産・学・公」という新しい考え方も十分に研究し、県政に活かしていきたいと考えており、その取組として、今年度から「森・川・海共生プロジェクト」を開始いたしました。

 山口県は、森や山と都市部が近接し、また、ほとんどの河川が上流から河口まで県内で完結しているという地理的な特性を有していますし、先ほどお話しましたように、豊富な森林資源がありますので、森と川、そして海が一体となった総合的な施策を展開し、循環型社会の形成を目指していこうというものです。

 ただ、一気にはいきませんので、モデル的に実施することにしており、まず、県央部の椹野川流域をモデルに、上流の森林から、中流域の農地や市街地、そして下流域の干潟や海に至るまでの流域全体を一つの地域として捉えて、総合的なプロジェクトを推進することにしております。

 具体的には、住民や事業者、NPO、大学、県、市町村が連携した産学公の取組により、流域計画を策定し、この計画の下、とかく縦割りになりがちな部局の枠を越えた様々な施策を総合的に展開していくこととしております。

 たとえば、上流部では、県民参加の森づくりの推進による水資源の確保やビオトープなどの整備、中流域の河川での多自然型護岸の整備、下流域での藻場や干潟の再生、アマモ場の造成、さらには流域全体での地域通貨の導入など、広範囲にわたって様々な取組を進めてまいります。

 こうした、流域全体を一つの地域として捉え、総合的な取組をしていく試みは全国的にも珍しく、国の省庁に対しても、こうした取組を全国的に進めてはどうかと提案もしており、ぜひ成功させなければならないと考えております。

 なお、「循環」ということでは、食の安全、安心が求められている今日、「地産地消」、いわゆる地元で採れたものを地元で消費する、この運動も強化する必要があると考えております。


(3)産業振興財団の活用

 以上、循環型地域社会の構築という視点から、本県が取り組んでおります先進的な取組事例を紹介いたしましたが、県における、商工業の「産学官」や「産学公」の取組みは、基本的には、これからも「やまぐち産業振興財団」を中核にコーディネイトしていきたいと考えておりますし、より先見性と柔軟性のある取組みを強化するため、先般、前山口大学学長の広中平祐先生に理事長に就任いただきました。そして、「大学発ベンチャー創出支援事業」等、新たな視点での取組みも進めております。

 いずれにしましても、新産業の創出やベンチャー支援等は、これからの山口県の活性化にとって極めて重要な課題ですので、「起業化支援プロジェクト」として、大いに推進していきますので、皆さんの「知恵」と「技術力」で、積極的な提案をしていただくよう、よろしくお願いいたします。


(4)山口方式

 さきほど申し上げましたように、今後、地方分権の流れは確実に進展し、これからは、自己決定・自己責任の原則の下、それぞれの自治体がお互いに政策で競いあう、「知恵と行動の競争時代」となってまいります。

 そうした中で、激しい地域間競争に勝ち抜き、21世紀に燦めく「元気県山口」を創造していくためには、未来志向の観点から施策を集中し、本県が他県に先駆けて前へでられるものは、一歩でも二歩でも先に出ていき、本県の存在感を全国にアピールする取組みを進めて行かなければなりません。

 特に、福岡、北九州と広島という大都市に隣接し、とかく印象の薄れがちな本県にとって、常に山口県を印象づけ、山口県の元気を全国に発信していく取組みを継続していくことが重要です。

 こうしたことから、本県の個性や特性を活かした独創的なプロジェクトや全国に先駆けて本県が取組み、全国のモデルとなる施策を「山口方式」と名付け、現在、6つの総合プロジェクトを山口方式として位置づけ、積極的な施策推進を図っております。

 すでに、「情報化プロジェクト」、「ごみゼロ社会プロジェクト」、「森・川・海共生プロジェクト」、「起業化支援プロジェクト」の4つは、紹介いたしました。

 他の2つは、「夢つなぐ学び舎プロジェクト」と「生涯現役社会プロジェクト」でして、いずれも、「県民の力」の発揮という面からも、極めて重要なプロジェクトです。

 まず「夢つなぐ学び舎プロジェクト」についてですが、小学校入学前から高校・大学への各段階への移行をスムーズに行い、児童や生徒一人ひとりの個性や創造性を最大限に伸ばすための「きめ細かな指導体制」を確立するためのプロジェクトです。

 先日、起工しました下関市の中学・高校6年間の一貫教育をする県立の中等学校の設置も、このプロジェクトの重要な柱であり、国際都市下関にふさわしい、全国に名を轟かせるような学校にしたいと考えております。

 次は、「生涯現役社会プロジェクト」です。

 本県の高齢化率は、平成12年の国勢調査では22.2%となっており、全国平均の17.3%を大きく上回っており、先日発表された、国立社会保障・人口問題研究将来推計によると、2030年の本県の高齢化率は、34.3%となり、3人に1人が65歳以上の高齢者となると推定されています。

 こうした社会では、高齢者をネガティブなイメージではなく、経験に裏打ちされた豊かな能力と意欲を持つ人材として捉え、生涯を通じていつまでも元気で積極的に社会参加が進められるよう、総合的な取組みを進めていくことが必要となってまいります。

 このため、すでに高齢化率が50.6%と日本一の東和町のある大島郡をフィールドに、生涯現役を目指す様々な事業を展開しており、これを全県的にも波及していくプロジェクトです。

 本県は、全国に先駆けて高齢化が進んでいる訳ですから、「元気県山口」の創造のために、これをマイナス要因として捉えることなく、逆に高齢化を逆手にとった活性化策を今後とも検討してまいりたいと考えております。



◇ おわりに


 予定の時間がまいりました。本日は、下関の方が多いですので、下関地域における県の取組みについてお話すべきだったかもしれません。しかし、最初にお話ししましたように、私が県政を担当して6年という大きな節目でありますので、敢えて以上のような話をさせていただきました。

 日本経済は、底打ちはしたとされているものの、予断を許さない状況が続いておりますし、また、長期的な視点では、日本全体で2007年度から人口減少時代に突入してまいります。

 山口県の状況を申し上げますと、2030年には人口が120万になるとの推計もなされ、その時は3人に1人が高齢者となると予測されています。

 こういう大変な状況になってまいりますが、私はそうした時代にも十分対応し、県政を浮上させていくためには、今、思い切った対策を講じていくことが重要と考えており、山口方式の推進など、重点を絞った対策を進めていくことが必要と考えております。

 また、同時に、このような厳しい状況に対応していくためには、県は当然のこと、市町村の力、地域社会の力、そして県民の力が一体となり協働して、同じ目標に向かってチャレンジしていくことが必要であると考えております。

 これからも、皆様としっかりとスクラムを組んで、「前へ」「前へ」21世紀の元気県の創造を目指し懸命に努力してまいりますので、今後とも皆様の力強い支援をお願し、私の話を終らせていただきます。御静聴ありがとうございました。



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