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知事発言集・平成15年産・学・官新年交流会フォーラム 産・学・公連携による「元気県山口」の創造

ページ番号:0011402 更新日:2003年1月23日更新

 ただいま御紹介いただきました二井関成でございます。
 先ほど加藤学長さんから、山口大学からみた「産・学・公の連携のあり方」といいますか、課題についてお話がありました。
 私はそれを受けて、行政の立場から課題というようなものを申し上げた方がいいのかもしれませんが、私からは「産・学・公の連携」についての山口県の考え方、あるいは具体的、代表的な取組事例をお話しさせていただきたいと思います。
 その前に、これからは地方分権が大きな課題ですから、「産・学・公の連携」というものを、地方分権とのかかわりの中で捉えてみたいと思いますので、まずは地方分権の話からさせていただきたいと思います。

 皆様方、御承知のように、今、小泉内閣におきまして各種の構造改革が進められようとしておりますが、その中の大きな一つが「地方分権改革」ということになります。構造改革は、紆余曲折があり全体としてはなかなか進んでいかないというのが今の状況ですが、地方分権につきましても、平成12年4月に地方分権一括法が施行され、権限等につきましては一定の見直しはされましたけれど、その権限の裏付けとなる、税・財源の地方への委譲というものがまったく行われていません。
 したがいまして、実質的な面で、地方分権の実現にはまだまだ至っていないというのが現状でございます。
 こうした中で、昨年の6月に国の方でいわゆる「骨太の方針第2弾」というのが出されまして、国庫補助金、地方交付税、税源委譲等を含む税源配分のあり方を三位一体で検討するという方針が示されております。
 そして、今年の6月頃までには、この考え方を踏まえた地方への税、財源委譲等のスケジュールが示されるということになっております。
 ただ、これも関係省庁の抵抗も予想されますし、今後とも紆余曲折があろうと思いますが、これからのこの21世紀の「我が国のかたち」を決める上で地方分権改革がどのように進んでいくのかということが極めて重要な課題であると私は思っておりますから、国に対して、言うべきことはしっかり言いながら、是非地方分権が進むようにしなければいけないと思っております。
 同時に、地方分権というのは「地方のことは地方で」と、自らの責任のもとで行うということになるわけですから、自己決定と自己責任が一層求められるということになります。
 したがって、そういう大きな流れを踏まえて、我々は意識改革を進めなければいけませんし、体制づくりも進めていかなければならないと思っております。

 私は、こうした分権の時代に適合したシステムや意識の改革を進めるためには、県民が共通に持つキーワードが必要であると考え、最近特に強調しておりますのが「自立」「協働」「循環」という三つのキーワードです。
 「自立」というのは当然のことながら、行政も民間も県民も、それぞれ「自分でできることは自分でやっていく」ということをとにかく考えていくべきだということです。ややもすると我々行政も、市町村は県に、県は国にという依存体質にあったと思いますが、そういう依存体質からいかに脱却していくかということが今、非常に大きなテーマであると私は考えております。特に県の立場からみますと、「市町村の力」をいかにつけるかという意味で市町村合併を是非進めていかなければならないと考えておりますし、それと同時に「県民の力」をつけるという意味で、去年の4月から県民活動促進条例を制定して県民活動の活発化を図っているという状況にあります。
 それから、「協働」というのは、行政も民間も、そして大学も、それぞれ違った個性、特性を持っているわけですから、さっき加藤学長さんは「異文化」という言い方をされましたが、様々に異なった考え方を持つ者が集まることによって、さらに大きなエネルギーが生まれるということがあります。私はそれぞれの持てる力や特性をお互いに連携・協働しながら最大限に発揮することによって、1+1が2ではなくて5にも6にもなるような、地域の総合力を高めていく努力をしていかなければならないと思っており、この「協働」の大変重要な柱の一つとなるのが、本日のテーマである「産・学・公連携」であると考えております。そして、3番目の「循環」というのは、そういう「自立」と「協働」を通じて、人的資源も含めてですけれど、地域内の資源をうまく活用することによって地域内でいい循環をつくりあげていくということです。今、世の中はグローバル化が進んできており、地域において国際的な動きが影響してきているという状況にあります中で、その影響にできるだけふりまわされず、地域内における、人、資源の効果的な循環をするというシステムづくり、このことが大変重要であると思っています。

 さて、今申し上げましたような「自立・協働・循環の地域づくり」を進める上での重要な手段の一つが、この産・学・公の協働であり、県としてはこれからさらに力をいれていかなければいけないと思っています。
 私は、山口県の場合、産・学・公の協働を進める上で、二つの大きな条件が整っていると思います。
 一つは人材の集積があることです。古くから「山口県は教育県」だと言われてまいりましたし、現在も県内だけではなくて、広く各地で山口県出身の方が活躍されています。こうした、県外も含めた本県とかかわりのある人の「知恵」のネットワークづくりによって、産・学・公の協働を進めることができるのではないかと思います。
 それからもう一つは情報基盤があるということです。ご承知のように、山口県は、県独自で「やまぐち情報スーパーネットワーク」という高速大容量の光ファイバー網を整備しました。一昨年の7月には、430キロのネットワークができあがり運用を始めておりますが、来年度末には、総延長830キロのネットワークが整備され、都道府県が持つ光ファイバー網では全国最大級のものになります。
 今、ご承知のように山口大学と県立大学とを結んだ遠隔講義とか、あるいは県立学校間を結んだ情報教育の実施とか、山大の医学部と病院を結んだ遠隔画像診断というようなシステムが動きだしておりますけれども、こういう情報基盤をこれから産・学・公連携という中で、いかに皆さんに活用していただくかというのが、これからの地域の活性化の鍵を握っていると思っております。
 このように山口県は、人的な面、あるいは情報面において、産・学・公連携を進めていくための非常にいい条件は整っていると思っています。

 それから、先ほど加藤学長さんから、連携を進めていくためには全体をマネージメントする分野が課題であるというお話がありましたが、山口県では、産・学・公連携の窓口は、「やまぐち産業振興財団<外部リンク>」にしています。従来、私が理事長になっていましたが、どうも私がこのまま理事長になっていても産・学・公連携はなかなか進まないだろうと思いまして、昨年5月に山口大学前学長の広中平祐先生に、理事長に就任していただきました。
 県としては、この財団を産・学・公連携の要と位置づけておりますので、この財団を通じて、大学などの優れた基礎研究技術と企業ニーズとを、融合できるような体制を整備していかなければいけないと思っています。大学や企業の皆さんには、意見や期待などを積極的にいただきながら、連携を強固にしていくための体制をこれからさらに充実していこうと思っています。
 昨年は、この財団に「産・学・官連携イノベーション創出推進委員会」を設置して、これからの産・学・官連携アクションプログラムというものを策定いたしました。先ほど山口大学では、この3年間で600件の共同研究をするということでしたが、このアクションプログラムの中では、県全体で、14年度から16年度にかけて900件の共同研究をしていきたいという数値目標を掲げています。
 ちなみに11年度から13年度までの3年間では県全体で共同研究は600件ありました。これを、この3年間で1.5倍にするということですから、かなり皆様方の御努力に期待しなければいけないと思っています。
 それから、県の産業技術面での窓口としては、宇部にあります「県産業技術センター<外部リンク>」を位置づけておりますので、これも積極的に企業の皆さんあるいは大学の皆さんにも活用していただくようにお願いしておきたいと思います。

 さて、山口県では、産業振興の指針となる「産業振興ビジョン21」において、情報通信分野、環境分野、福祉医療分野と生活文化関連分野、この4つの分野を重点的に育成していくこととしております。
 そこで、この4分野での取組における今までの産・学・公連携の成功事例を簡単に紹介させていただきます。
 まず、環境分野では「ごみゼロ社会づくりプロジェクト」です。これは御承知の方も多いと思いますが、宇部興産とトクヤマさんが出資して山口エコテックという会社を徳山市につくっていただきまして、昨年の4月から、県内全域から出るごみの焼却灰を、セメントの原料として使っていただくという事業がスタートしました。市町村で出る焼却灰は、これが年間5万トンぐらいあるわけですが、これまではそのほとんどが埋め立てられていました。それをなんとかセメントの原料である粘土の代わりに活用できないかという研究を産・学・公で進めていただいて、ダイオキシン問題もクリアし、その安全性と実用性が確認されうまくいくということになったわけです。山口県は全国有数のセメント生産県ですから、この特性をうまく使った画期的な取組で、県下全域の焼却灰を集めて、こういう事業をやっているというのは、山口県が全国初ですから、産・学・公連携の非常に大きな成功事例だと思っています。
 また、ペットボトルについても、帝人ファイバーさんが、今年の夏ぐらいには廃ペットボトルからペットボトルに再生ができるという世界初の事業を山口県でスタートさせていただくということになっています。山口県は、このようなリサイクルのシステムの研究に力を入れながら、「環境産業は山口県だ」と言われるまでに育てていければいいなと思っています。
 それから福祉医療分野では、さきほど加藤学長さんの資料の中にありました「やまぐち・うべ・メディカル・イノベーション・クラスター構想」というのがありますが、これについては、文部科学省の事業の試行地域ということで、今年度からスタートしたところです。山口大学では、平成13年度に大学院応用医工学専攻というのを全国で初めて設置されたとうかがっていますが、こういうポテンシャルも生かして、これからこの福祉医療分野で産・学・公連携の強化をしていきたいと思っています。
 生活関連分野については、大橋代表幹事さんにも委員に就任していただいて、今年度から進めておりますが、生活に身近な分野でいろいろなビジネスの創出を図るため、「コミュニティ・ビジネス・カレッジ」を開催する等、「コミュニティ・ビジネス」の振興を進めていまして、今後の新たな起業のスタイルとして促進を図っていきたいと考えております。
 情報通信分野は、先ほど情報スーパーネットワークでお話させていただきましたので省略させていただきます。

 産業分野以外でも、産・学・公の連携というのはいろいろな分野で取組が可能だと私は思っています。
 例えば、「森林バイオマスエネルギー活用推進プロジェクト」というものを県は進めています。山口県は御承知のように森林が県土の7割を占めており、後ほど刀禰さんも竹の話をされますが、竹林面積が鹿児島県に次いで全国で2番目なんです。この利用されていない竹とか間伐材を、バイオマスエネルギーとして活用し、新たな資源循環型の地域産業づくりに結びつけようという取組を今しています。この中で、バイオマスのガス化発電プラントの実証試験というものに全国で初めて取り組んでいるとか、いろいろな形で、地域の持つ資源を活用するようなことを考えています。
 その他にも、これも全国初ですけれども、間伐材と鋼材、コンクリートを組み合わせた新しいタイプの魚礁、ハイブリッド型魚礁の開発にも産・学・公連携の下に取り組んでいます。

 これまで申し上げてきましたように、私は幅広い観点に立って、産・学・公連携を進めていきたいと思っています。とは言いましても、行政にはあまり知恵がないところがありますから、財政状況は厳しいですが、応援ができることについては積極的に応援したいと思いますので、後は皆様方の知恵をこれからもだしていただくようにお願いしまして、私の話を終わらせていただきます。これからもよろしくお願いします。