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知事発言集・山口ブロードバンド講演会知事講演「やまぐち情報スーパーネットワークを活用した地域情報化への取組」

ページ番号:0011408 更新日:2004年5月20日更新

平成16年5月20日 ニューメディアプラザ山口(山口市)

はじめに

 皆さん、こんにちは。二井関成です。
 私は名字も名前も変わっておりますので、選挙の洗礼を受ける身としては、特に名字をしっかり覚えていただきたいと、「二井」は数字で言えば「21」ですと、よく申し上げてまいりました。その余韻は今も残っておりまして、自家用車のナンバーも21、大好きな野球の背番号も21、ゴルフのハンディも21にしております。
 余談はさておき、今日は、この「山口ブロードバンド講演会」にお招きをいただきありがとうございます。また、NTT西日本山口支店の皆様をはじめご来場の皆様方には、平素から山口県の情報化の推進役としてご尽力いただき、心から感謝申し上げます。
 私からは、「やまぐち情報スーパーネットワークを活用した地域情報化への取組」というテーマをいただいておりますので、以下「やまぐち情報スーパーネットワーク(Yamaguchi information Super Network)」のことを「YSN」と略させていただきますが、このYSNを基軸として、山口県がどのように地域の情報化に取り組んでいるのかということを中心にお話をさせていただきたいと思います。

21世紀の基盤づくり

 私は、21世紀を目前にした1996年、平成8年8月の知事選挙で初当選いたしましたが、私の「21」にかけた本当の思いは、「21世紀の山口県を元気にスタートさせたい」「21世紀の山口県の新たな発展基盤、基礎を創りあげたい」という強い思いでした。
 したがって、その思いを実現するため、選挙公約の一つとして、「山口県版情報スーパーハイウェイ構想の実現」を掲げました。また、当選後の9月議会では、「2001年、21世紀のスタートに当たり、阿知須干拓地で博覧会を行う」ということを表明しました。
 まず、博覧会につきましては、表明直後から「博覧会は時代遅れ」だとか、「北九州でも開催されるし、どうせ失敗するよ」とか、かなり厳しい声が飛んできました。4年間という長い準備期間、辛い、苦しい道のりでしたが、NTT西日本さんやNTTドコモ中国さんをはじめ、多くの企業の出展、協賛をいただき、また、県民の皆さんの「百万一心」の力によって、大成功を収めることができました。
 一方、本題の「山口県版情報スーパーハイウェイ構想の実現」につきましては、当選直後から構想づくりに取りかかり、1998年に本県の情報化のマスタープランとして、「豊かで活力あふれる情報先進県の創造」を基本理念とする「山口県総合情報化ビジョン」を策定しました。
 また、せっかくの情報スーパーハイウェイも、「光ファイバー、ソフトなければ、只の線」ということになりますから、まず、ソフト、アプリケーション開発から入り、その目途を立て、光ファイバー網の整備に着手しました。このような手順を踏んで、2001年7月、きらら博会場で産声を上げ、運用を開始したのが、450kmの高速大容量の光ファイバー網「やまぐち情報スーパーネットワーク」、いわゆる「YSN」です。
 YSNについては、その後も整備を進め、この3月には、全県をカバーするループ化が完成し、830kmに及ぶ、地方自治体としては全国最大規模の「安全・安心のネットワーク」を構築することができました。

ITを巡る動き

 このような状況の中、国におきましては、2001年に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法、いわゆるIT基本法が制定されました。そして、総理大臣を本部長とするIT戦略本部においては、2005年までに世界最先端のIT国家を目指すという「e-Japan戦略」を策定し、また、2003年にとりまとめた「e-Japan戦略2」では、2006年以降も、情報インフラ面だけではなく、利活用面においても、最先端であり続けるという目標に加え、高度情報通信ネットワーク社会を世界に先駆けて形成することにより、国民の一人ひとりがITの恩恵を真に実感できるような社会を実現するとしております。
 「高度情報通信ネットワーク社会」とは、いつでも、どこでも、誰でも、ネットワークを通じて、時間や空間の制約を超えて、電子化された情報を容易にやりとりできる社会、最近よく使われる言葉で言えば、「ユビキタス社会」ということになりますが、こうした社会が実現されますと、人と人とのつながりも拡大されますし、新たなサービス、新しい産業も創出されるなど、住民生活から産業経済等あらゆる分野において、活力が飛躍的に高まるものと思われます。
 一方、本県におきましては、先ほど申し上げましたように、1998年に「山口県総合情報化ビジョン」を策定し、地域の情報化や県政各分野の情報化に取り組んでおります。特にYSNは、その戦略的・先導的な基盤として整備したものであり、また、他県に先駆けてYSNを利活用した様々なアプリケーションの開発にも早くから着手しておりますので、自画自賛にはなりますが、いわばユビキタス社会の実現を目指す国の施策や全国各地の取組を先取りしたプロジェクトであろうかと思っております。

本県情報化の現状

 次に、本県の情報化の現状についてお話しします。
 県内どの地域におきましても、県民が等しくITの恩恵に浴することができるようにするためには、本県の情報通信の基幹網であるYSNを十分活用して、これに接続する地域の情報ネットワークの整備を進めることが重要です。
 そのため、県といたしましては、市町村への地域イントラネットの導入やケーブルテレビ(CATV)網の整備など、それぞれの地域の特性に応じた地域の情報ネットワークの整備に必要な支援を行ってきております。
 その結果、53市町村のうち、都市型CATVは19市町、農村型CATVは6市町村で、それぞれ整備され、県内の5世帯に2世帯がCATVを利用しており、本県のCATVの世帯普及率は中国5県の中でトップとなっております。
 また、各市町村が事業主体となって構築する地域イントラネットなどの地域公共ネットワークの整備状況については、今年度整備予定も含めると22市町村となっております。
 ブロードバンドについては、CATVインターネットに加え、NTTさんをはじめ民間通信事業者の皆様のご尽力により、周防大島4町をはじめ、ADSL等のサービス提供地域の拡大が着実に進められてきています。しかし、過疎地域、離島地域等いわゆる条件不利地域では、ブロードバンド環境の整備がなかなか進みづらいところもあり、ブロードバンド提供市町村は、53市町村中37市町村となっております。世帯普及率についても20.3%と、残念ながらこちらの方は中国5県のうち4番目となっています。
 今後とも、YSNを十分活用し、市町村や民間事業者と連携して、ブロードバンドの面でも取り組んでいかなければならないと考えていますので、皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

やまぐち情報スーパーネットワーク(YSN)

 次に、YSNについての説明に入らせていただきます。
 お手元のパンフレット(やまぐち情報スーパーネットワークの概要)をご覧いただきたいと思いますが、まずYSNのメリットについてであります。
 1つは、高速大容量の情報伝達が可能な全県的ネットワークということです。YSNの伝送速度は、例えば、2時間のビデオ映像を、わずか60秒で送ることができます。
 2点目は、無料で利用できるということです。アクセスポイントまでの通信料は利用者の負担となりますが、YSNの各アクセスポイント間は無料で利用できます。
 3点目は、安全性、信頼性の高いネットワークであるということです。YSNは、ネットワーク管理センターによって、365日24時間体制で監視・制御され、常に安全で、安定した運用が確保されています。それに加えて、このたびのループ化により、ルートの1箇所に支障が出ても他のルートを使った通信が可能となり、より一層、安全性、信頼性が高まりました。
 4点目は、信頼性の高い高速インターネットが利用可能だということです。YSNには、山口県内のインターネット通信を、東京や大阪のインターネットエックスチェンジ(IX)を使わず県内で完結することができる「地域IX」を設けております。したがいまして、CATVインターネットなどYSNの地域IXに参加するプロバイダーを利用されている皆さんは、それと気付かないうちにYSNの高速性と信頼性の両方のメリットを受けられているということになります。

YSNの活用事例~これまでの取組

地域間の格差是正

 次に、YSNを活用した先進的な取組事例や情報化のプロジェクトをいくつかご紹介したいと思います。
 まず、県民生活の向上という面での地域間の格差是正、いわゆるデジタル・ディバイドの解消についてです。パンフレット(地域間の格差是正)をご覧ください。

携帯電話不感地域解消のモデル事業

 まず、携帯電話不感地域の解消の取組ですが、本県では、YSNを活用した全国初の取組を平成14年度からNTTドコモ中国さんの協力を得ながら実施しています。
 これは、従来、採算性の観点から携帯電話のサービス提供が困難であった中山間地域、過疎地域等の携帯電話不感地域について、不感地域の近くにあるアクセスポイントと山口市内にある電話交換局との間の区間を、無料で利用できるYSNでカバーし、携帯電話事業者の回線ランニングコストを圧縮することにより、採算性をアップし、携帯電話サービスの過疎地域等への提供を可能とするものです。現在、阿武町、菊川町及び美祢市の3地域でサービスが実現していますが、さらなる拡大を願っております。

中山間地域等過疎地域へのCATVエリア拡張

 次に、過疎地域へのCATVエリア拡張の取組です。
 阿武町、須佐町は、中山間地域で過疎という条件不利地域であるため、CATV事業者の参入の見込みが立たないエリアでしたが、地元CATV事業者である萩ケーブルネットワークが、センター局の所在する萩市と両町との間をYSNで結び、採算性の問題をクリアすることで、両町へのエリア拡張を行うことができました。
 これにより、従来、地上波を4から7チャンネルしか視聴できなかった両町において、「CATVならでは」の自主放送チャンネルを含めた多チャンネル放送が視聴可能となりました。
 さらに、ブロードバンドについても、従来ADSL等のサービス進出がなかなか見込めなかったこれらのエリアで、CATVインターネットにより、すべての公立小・中学校やすべての家庭や職場で利用できる、安価で高速のブロードバンド環境が実現されました。

医療分野

 また、医療分野では、安全・安心のネットワークであるYSNのメリットを生かして、平成13年12月から順次、山口大学医学部附属病院と県内の7つの医療機関をYSNで結び、高度専門医療に必要となるCT画像など大容量の情報を瞬時にやりとりしたり、テレビ電話で山大医学部附属病院の専門医による遠隔診断を行うなどの取組が進められてきました。これにより、遠隔地でも質の高い専門的な医療が受けられるようになっています。

教育分野

 次に、教育分野では、すべての県立学校を対象とした教育情報通信ネットワークシステム「スクールネット21」を構築し、すでに運用を始めております。今年度中に、すべての県立学校を10Mbps(メガ)で結ぶこととしていますし、児童や生徒の家庭学習等での活用も視野に入れて、教育情報ポータルサイトを開設し、WEBページで視聴可能な「動画」や「音声」によるコンテンツ制作を行うなど、YSNを使って学校教育においても全国でもトップレベルの情報化を進めております。
 また、高速大容量のメリットを生かして、山口大学や県立大学など11の県内の大学や短大を結び、他大学の講義を受講できる遠隔講義も現在行われています。

産業分野

 産業分野の取組としては、このビル内にある「やまぐち産業振興財団」において、YSNに大容量サーバー群を接続し、企業のIT化について「実践しながら学習できる仕組み」を提供する「ITフィールド提供事業」を実施しています。
 この事業は、電子商取引やグループウェアの活用による社内情報の共有化等を進め、販路の開拓や経営の効率化に取り組もうとされている中小企業の皆さんの情報化を支援しようというもので、すでに、400社を超える企業の皆さんに利用いただいており、YSNは、中小企業の情報化やベンチャー企業の育成にも役立っています。

接続共同実験

 また、NTTさんのご協力をいただき、YSNとNTTの電話網・IP網を相互に接続し、電話料が格段に安くなるIP電話サービスの実験も、平成13年8月から実施しております。
 現在、県内企業等を中心に約650の団体や個人の皆様に実験に参加していただいていますが、県内から東京・大阪へは3分15円、海外へは通常料金の半額程度で通話が可能であり、参加者の皆様から好評をいただいております。
 また、県民の皆さんが県庁に電話される場合、県内どこからでも市内料金で通話できるようにもなり、県民の方々には県庁が近くなったと喜ばれています。
 YSNは直接県民の皆さんの目に触れたりすることがないため、その効果がわかりづらい面もあるかも知れませんが、この取組は、県民の皆さんに、YSNの効果を生活利便性の向上の面でも実感していただける素晴らしい取組だと思っています。

YSN21独創的実験プロジェクト

 以上、YSNのこれまでの主な活用事例をご紹介させていただきましたが、さらにYSNの利用分野の拡大と民間利用の加速化を図るため、平成15年度から、「YSN21独創的実験プロジェクト」として、大学や企業などによる様々な独創的、先導的な実験に対する支援を行っています。平成15年度は、パンフレット(YSN独創的実験プロジェクト)にもありますとおり、5つの実験を行いました。
 例えば、山口大学の口径32メートルの大型電波望遠鏡と県内の高校等との間をYSNで接続し、電波望遠鏡の遠隔操作、遠隔観測などを行って、高校生に科学の楽しさを体験してもらおうという実験が行われました。
 また、山口大学と在宅介護支援センター等をYSNでつなぎ、山大医学部の介護予防の専門家が、地域の高齢者や介護スタッフに、テレビ画面上で、お互いの動作をリアルタイムで確認しながら、介護予防のためのトレーニングを行う、遠隔指導システムの実験も行われました。このシステムが実用化されれば、地域の高齢者や介護スタッフは、居ながらにして質の高いトレーニングを受けることができます。
 さらに、「YSN21-IPフォン実験プロジェクト」として、NTTの固定電話の高い技術力と県内のCATV網を組み合わせた高品質なIP電話サービスの実験も進められています。

YSNの活用事例~今後の取組

 先ほどもお話ししましたように、今回のループ化の完成により、ネットワークの安全性・信頼性が一層向上し、これまで以上に高度な利用が可能となりましたので、今年度からは、この「安全・安心のネットワーク」のYSNを活用して、「医療情報ネットワークシステム」の構築をはじめ、県民の皆様にとって安全・安心で便利な暮らしづくりに役立つ様々な取組を進めることとしています。

医療情報ネットワークシステム

 例えば、現在、全県的に医療機関等をネットワークで結ぶプロジェクトが進行中です。これは、地域の医療格差を解消し、より安全で質の高い医療を提供するための取組で、先ほどご紹介いたしました遠隔医療の取組をさらに拡大するものです。
 かかりつけの医院と大きな病院をネットワークで結んで、遠隔画像診断や遠隔病理診断などを行い、県内どの地域でも、安全で質の高い医療を提供できる「医療連携情報システム」や、へき地の診療所を支援する「へき地医療情報システム」をはじめ、「地域リハビリテーション情報システム」、「広域災害・救急医療情報システム」の4つのシステムを連携させた、全国的にも例のない総合的な医療情報ネットワークシステムの構築を進めており、平成17年度には完成する予定です。

電子県庁

 また、行政サービスの一層の向上と行政事務の効率化を図るため、YSNを活用して、従来の紙ベースの手続きに加え、インターネットで手続きを済ませることができる電子県庁の構築を進めています。現在、「電子申請・届出システム」や「総合文書管理システム」等の開発を進めており、この秋には一部運用開始する予定です。
 このシステムが稼働しますと、県民の皆さんが、インターネットを利用して、家庭や職場から、24時間365日いつでも、窓口に出向くことなく、各種の行政手続きや県立施設の利用予約ができるようになります。

産業分野

 さらに、YSNの民間利用の新たな展開、県内企業のIT化の加速化、企業立地面での地域間格差是正の実現を目指すため、NTT西日本さんにもご協力いただき、YSNと最新のネットワーク技術を組み合わせて、県内のインターネットデータセンター向けに、超高速通信ネットワークを構築する取組も進めています。この取組が実現すれば、県内企業に対し、低廉で高品質のデータセンターサービスが利用可能な環境が整備されることとなり、民間企業によるYSNを活用した創意工夫に富んだ様々な取組が一層拡大し、ひいては県全体の活性化につながるものと期待しています。

今後の展望

 さて、今後の展望ですが、IT化の流れは、今後ますます加速していくものと思われますが、こうした流れは、地方にとっても県民生活や地域経済面、さらには行政面で大きなメリットをもたらすものと考えています。
 これまで、情報は、中央、すなわち東京に集中しており、それを入手しようとしても時間がかかったり、あるいは一方的なものにとどまっていましたが、冒頭に申し上げました「高度情報通信ネットワーク社会」が実現すれば、どこにいても、瞬時に、しかも双方向に欲しい情報の交換ができるようになり、県民生活の向上や地域経済の活性化に大いに資することとなります。
 また、ITやネットワークを上手に使いこなすことができれば、これからは中央ばかりではなく、地方の情報発信能力もますます増大し、地方の存在感を高めることが可能と思っています。
 こうしたことを考えれば、これまで不便だとか、情報過疎とか言われていた地方にとって、ITの恩恵は大きく、IT革命は地域活性化への絶好のチャンスになるものと受け止めています。
 「地方の時代」と言われて久しいのですが、これをより加速するためにも、地域の情報化推進は、極めて重要な施策の一つであると考えております。

おわりに

 私は、前回の2000年の選挙で、2001年、21世紀のスタートに当たり、「山口きらら博」と「YSN」の2つの舞台を用意し、元気県山口の創造に向けて「前へ」進んでいく、ということを申し上げました。
 ご承知のとおり、現在、「地方のことは地方で」という地方分権の流れが大きく進もうとしております。地方分権というのは、地方同士の競争の時代になるということでもありますから、今後の道州制も視野に入れながら、今のうちに、山口県ならではの「山口県らしさ」を創りあげていかなければならないと考えております。
 今後とも、YSNを大きな舞台として、様々な情報化に向けた取組を計画的、戦略的に進め、情報化の面でも「山口県らしさ」をしっかり出していきますので、会場の皆様のお力添えを是非ともお願いいたします。
 時間の制約もあり、十分なお話ができませんでしたが、以上で私の話をおわります。ご静聴ありがとうございました。