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平成23年 (2011年) 6月 17日

政策企画課

やまぐちの森林づくりシンポジウム 知事講演

基調講演:「やまぐちの森林づくり」

[平成17年1月30日 山口県セミナーパーク]

はじめに

 皆さん、こんにちは。

 本日は、「やまぐちの森林づくりシンポジウム」を開催いたしましたところ、このように多くの県民の皆様に御参加いただき、誠にありがとうございます。

 また、皆様方には、平素から県政の推進につきまして、格別の御支援、御協力をいただいていることに対しまして、心からお礼を申し上げます。

講演する二井知事

 さて、昨年は、漢字一文字でいえば「災」だというふうに言われましたように、度重なる台風の襲来がありました。山口県でも、16号、 18号で多くの被害が出ました。10月には新潟県中越地震、そして、12月末にはスマトラ沖大地震と、大きな自然災害が多発し、尊い人命や財産が失われるなど、自然の猛威に晒された一年であったと思います。 山口県では、鳥インフルエンザも発生しました。

 私は、これらの災害への対応を通じまして、県民の皆様の安心・安全をしっかり守る山口県にしていくことが大切であるということを改めて認識した一年でもありました。


農山村・森林の果たす役割

きれいな水

 さて、私たちは、これまで普段生活する中で、生活環境、例えば、きれいな水や澄んだ空気など、ごく普通に当然あるものとして、そのありがたさを、あまり意識してこなかったのではないでしょうか。

本県では、近年、ひどい水不足の被害もなく、水は蛇口をひねれば出てくるもの、また、土砂災害は山奥など限られた地域で起こるもので、暮らしには直接影響のない、何か遠いものと考えがちであります。

緑豊かな森林

 しかし、少し立ち止まり、本題である森林に、今一度、目を向けていただきますと、私たちが生きていく上で欠かせない水や空気をはじめ、県土を災害から守り、県民の健康やレクリエーション、さらには、ふるさと山口の美しい景観を創り出すなど、様々な恵みを私たちに提供してくれているのは、緑豊かな森林であることがわかります。

 さらには、様々な動植物に生息の場を提供するなど、多面的な機能を発揮しておりまして、私たちが暮らす上で、とても重要な役割を果たしています。

 また、森林を構成する1本1本の木は、その成長の過程で光合成により、地球温暖化の主要な原因となっている二酸化炭素を吸収し成長していきますので、森林は、いわば「二酸化炭素の大きな貯蔵庫」であるともいえます。

バイオマスエネルギー

 さらに、現在、他の県に先駆けて本県で進めております森林バイオマスエネルギーの活用推進は、石油や石炭などの化石燃料に代えて、間伐材や竹材等の森林バイオマスを発電や熱エネルギーとして利用することにより、化石燃料の消費による二酸化炭素の排出抑制にも貢献しますので、地球的規模で環境の問題が表面化する中、大きな期待が寄せられております。

 このように森林の持っている機能は、どれ一つ欠くことのできない大切なものであります。

この多面的な機能を貨幣で評価しますと、全国で年間約70兆円、ちなみに、農業は約8兆円とされており、その森林の機能が失われた場合の損失は、計り知れないものがあります。


森林の現状と課題

植林された森林

 このようにかけがえのない森林は、今から約60年前、第2次世界大戦前後の軍需や戦後の復興用資材として利用するために、大規模な伐採が繰り返されました。

 その結果、土砂が流れ、草も生えない荒廃した状況となり、山口県でも、錦帯橋が流失した昭和25年のキジア台風、そして、翌年のルース台風による災害をはじめ、多くの洪水や土砂災害が多発するようになりました。

 このため、荒廃した森林の再生を図り、戦後の復興や高度成長に伴う旺盛な木材需要に応えるため、農山村の人々が、荒れた山肌に木を1本1本植え続け、森林が再生されてきました。

 県としましても、森林所有者による森林の適切な整備・保全を推進するため、これまで、国の施策と連携して森林の整備を支援してきたところであり、特に、最近は、間伐に重点をおいた森林整備を積極的に推進しております。

 しかしながら、現在、農山村における過疎化・高齢化の進行や林業経営の著しい採算性の悪化などにより、木を切り、その跡地に再び木を植え、そして育てるという循環の仕組みが途絶えようとしております。

森林

 森林所有者の負担を伴う従来からの補助事業のみでは、森林の適切な整備が滞り、森林の荒廃に歯止めがかからないという状況にあります。

 約40年間、一生懸命に育ててきたスギの木1本が、市場で千円前後の価格にしかならず、しかも、木を切り出すのに千円程度かかるような現状では、負担を伴う森林の整備を森林所有者のみに委ね、その努力だけで、本県の全ての森林を適切に管理することは、もはや困難な状況になっております。

荒廃し、機能低下した森林

 皆様方の周りにあります森林は、一見、緑豊かに見え、何の問題も無く健全に生育しているように見えますが、一歩、その中に分け入りますと、健全な森林を育てる上で欠かせない間伐が行われず、真っ暗で、本来、地表に生えているはずの草や落ち葉も無く、泥が剥き出しになった、荒廃した森林の姿を県内のあちらこちらで目にするようになりました。

 このまま森林の荒廃が進行することとなると、森林の多面的な機能が著しく低下し、県民生活に支障を来すことが懸念されるようになりました。

 また、他県に比べ、私有林が多いという特色を持つ山口県ですが、本県の河川は、広島県境を流れる小瀬川を除いて、全て県内を流れることから、水の量、質ともに、県独自に維持する必要があること、さらには、皆様の暮らす生活圏域に森林が近接し、森林の荒廃の影響を受けやすいなどという本県の特性からも、森林の適切な整備・保全を図るための新たな取組みが必要です。


県民税の検討経緯


 このため、私は、こうした本県の特性を踏まえ、今後の森林づくりを如何に進めていくのか、そのためには、どのような取組みが必要であるのか、「今後の山口県の森林づくり」について検討するため、学識経験者や消費者、企業関係者、森林所有者などの皆さんからなる「やまぐち森林づくり検討委員会」を一昨年6月に設置しました。

 この委員会におきまして、「今後の森林づくり」の目標や施策の展開方向などについて議論を重ねますとともに、都市住民や森林所有者の皆様方へのアンケートやパブリックコメントを実施し、これらの結果も踏まえながら、昨年3月に百年先の森林の姿を見据えた「やまぐち森林づくりビジョン」を策定・公表しました。


 本日は、資料として、お手元に、その概要版をお配りしておりますが、このビジョンは、『未来へ引き継ぐ、みんなで育む豊かな森林』を基本理念とし、県民の皆様一人ひとりがそれぞれの立場で森林づくり活動への参加や、木材を使う生活を通じて「循環型社会」を創っていくなど、森林と様々なかたちで関わりを持ちながら、上流の農山村部と下流の都市部の住民や地域の方々が一体となって森林づくりを進めていく「みんなですすめる協働による森林づくり」を目標としたものであります。

 そして、このビジョンの策定の審議の中で、「ビジョンを着実に推進していくためには、新たな財源を確保する必要がある。」との提言がありました。


 このことを踏まえ、昨年4月に、本日のパネルディスカッションのコーディネーターを務めていただきます、藤井大司郎山口大学経済学部教授を会長に、県民各界各層の委員からなる「やまぐち森林づくり財源検討委員会」を設置しました。

 この委員会では、荒廃した森林の現地調査や森林所有者などからの意見聴取を行いながら、森林を県民全体で支えることの必要性や様々な財源について議論が重ねられました。

その結果、財源につきましては、森林の多面的な機能の恩恵を受けている県民の皆様に幅広く負担していただく税へ絞り込まれ、その課税の仕組みなどの検討結果が、昨年12月に取りまとめられ、私に御報告いただいたところであります。


 もとより、私自身も、県民の皆様に新たなご負担をお願いするものですから、熟慮に熟慮を重ねてまいりました。

 当然のことながら、これまでも、時代の変化や厳しい行財政環境に的確に対応するよう、組織の再編や財政健全化などの行財政改革に努めてまいりましたし、さらに、一層の改革を進めるため、平成16年度から平成19年度までの4年間を、懸案事項の解決に道筋をつける、「県政集中改革期」と位置付け、新たな視点に立った「行政改革」「財政改革」等の推進に全力を挙げて取り組んでいくこととしております。

 このような状況の中、委員会からご報告をいただいたのでありますが、私としても、森林を次世代に、健全な姿で引き継ぐためには、県民共有の財産として、県民全体で守り育てていく取組みが必要であると考え、今回、新たな「税」という形で、「やまぐち森林づくり県民税(案)」を公表させていただきました。


県民税(案)の説明

 この県民税の(案)につきましては、本日の資料としてお配りをしておりますが、県民の皆様方すべてが、森林からの恩恵を受けておられますことから、課税の仕組みについては、県民の皆様方に広く負担をお願いする「県民税均等割に上乗せする方式」として、その上乗せ額は、個人については、一年間に5百円、法人については、資本等の金額によって異なりますが、一年間に千円から4万円としております。

 また、税収の使途につきましては、大きく3つの柱を考えておりまして、これに沿って、森林の整備のために使っていきたいと考えております。


 まず、大きな柱の1つ目は、「健全で多様な森林づくりの推進」であります。

長期間放置され荒廃した森林の機能回復を図るため、それらの森林に対し、これまでにない集中的な間伐、いわゆる強度の間伐を実施して、針葉樹と広葉樹の混じり合った混交林へと誘導し、将来的には、維持・管理に人手がかからない自然林の状態に戻す取組みを進めていきたいと考えております。この対策は、今日、深刻化している「杉花粉」や「クマの出没」の問題の解決にも繋がってまいります。

 さらには、現在、竹が里山周辺に拡大し、森林の機能の低下が懸念されておりますので、その原因である放置された竹林を緊急的に伐採し、適切な整備・保全を図る取組みなどにより、森林の多面的な機能を確保し、安全で快適な県民生活を守っていこうと考えております。

県民との協働による森林づくりの推進

 次に、大きな柱の2つ目としましては、子供達をはじめ、県民の皆様に森林の果たす役割の重要性などをわかりやすく理解していただくための体験学習等の普及啓発活動などを行う「県民との協働による森林づくりの推進」を図ることとしております。

 大きな柱の3つ目は、「適切な森林整備につながる森林資源の利用促進」であります。具体的には、県産木材を利用した木製品などを小学校等の公共施設に整備し、実際に手で触れ、目で見て「木の良さ」を体感していただき、木材を利用することの意義を理解していただく取組みなどを推進していきたいと考えております。

 なお、この県民税の具体的な使途については、毎年度わかりやすく公表し、県民の皆様のご理解を深めていただく努力をしていきたいと考えております。

 大きな柱の3つ目は、「適切な森林整備につながる森林資源の利用促進」であります。具体的には、県産木材を利用した木製品などを小学校等の公共施設に整備し、実際に手で触れ、目で見て「木の良さ」を体感していただき、木材を利用することの意義を理解していただく取組みなどを推進していきたいと考えております。

 なお、この県民税の具体的な使途については、毎年度わかりやすく公表し、県民の皆様のご理解を深めていただく努力をしていきたいと考えております。


県民からの意見聴取

以上、県民税(案)を簡単に御説明いたしましたが、私は、広く県民の皆様の御意見をお伺いしながら、さらに検討を進めていきたいと考え、今月14日から、岩国市を皮切りに、周南市、下関市、萩市など、一昨日までに県内10か所で県民説明会を開催し、県民の皆様方に、御意見を伺ってまいりました。

会場の受講者

 この県民説明会の中では、「環境問題に真剣に取り組むべき時期である。循環型社会を構築する上からも、一日も早い制度創設を望む。」でありますとか、「荒廃した森林を再生させる県民運動として展開すべきである。」との御意見がありました一方で、「税の必要性は理解できるが、県民への周知に努めてほしい。」とか、「県で独自に取り組むのではなく、国が進めるべき問題ではないか。」など、いろいろな御意見も頂戴しているところであります。

 また、今月4日から来月3日までの間、パブリックコメントも実施しております。

 私といたしましては、この県民説明会をはじめ、テレビ・ラジオでのスポット放送や、今後予定しております今回のシンポジウムを中心に構成したテレビ放映など、様々な方法を通じて、県民の皆様に、この県民税案に対するご理解を深めていただく努力を重ねてまいりたいと考えております。


終わりに

会場の様子

以上、県民税案を提案するに至るまでの経緯等について説明してまいりましたが、私は、今日の地方分権の大きな流れの中で、新しい地域づくりを進めていくためには、県民が共有するキーワードが必要であると考え、「自立」「協働」「循環」の3つのキーワードを掲げています。

 「自立」というのは、県も、市町村も、県民も、それぞれが「自分ですべきことは自分で」「自分でできることは自分で」という主体性と役割分担意識をしっかり持つということです。

 また、「協働」とは、県も、市町村も、県民も、それぞれが持つ個性や特性を認め合い、持ち寄り、活かし合うこと、異質なものとの出会い、交流を大切にすることによって、その相乗効果で、個々の能力の総和を超えた力を生み出し、1+1が2ではなく、5にも6にもなるように、地域の総合力を高めていこうというものです。

 そして「循環」とは、こうした「自立」と「協働」により生み出された地域資源や、地域で様々な活動をしている人たちの力を、地域内で効果的に循環させることにより、新たな価値を創り出そうとするものです。


 私は、今回の県独自の県民税は、県民協働の森林づくりを通じて、新たな循環を起そうという、「自立」「協働」「循環」の取組みであると考えております。

 現在進行する森林の荒廃は、木材の利用が停滞し、森林所有者の管理意欲が著しく減退するなど、いわば生産から消費までの循環が途絶えたことによる荒廃ということができると思います。戦後の大規模な伐採による荒廃とは異なる今日的な新たな課題です。

 これまで、スピードや効率化を追求するあまり、私たちが忘れがちであった「循環」の仕組み、これは物の循環だけでなく、人や心も含めてでありますが、これを今一度、思い起こすことが必要だと思います。

 また、今年は、新しい「山口県のかたち」を創り上げていく、極めて重要な年と位置づけておりますが、県民の皆様みんなで森林を支えていく、県民協働の森林づくりは、「環境県」として、次の世代に、自然の恵み豊かな山口県を引き継いでいく上でも重要なテーマであると考えております。

 私は、百年後に、この地域に住んでいる皆さんが、今ある美しい森林は、あの時の県民の皆さんががんばってくれたお陰だと言っていただけるよう、「森林づくり」の仕組みを、今、創り上げておきたいと思います。

 県民の皆様方には、この「やまぐち森林づくり県民税」の趣旨を十分御理解いただき、積極的な御支援・御協力を賜りますようお願いたしまして、私からのお話を終わらせていただきます。



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