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平成23年 (2011年) 6月 16日

政策企画課

内外情勢調査会知事講演

基調講演:「住み良さ日本一の県づくり」

[平成17年(2005年)4月26日]

はじめに

皆さん、今晩は。本日は、お話をする機会を与えていただき、誠にありがとうございます。また、皆様方には、平素から、県政への力強いご支援やご協力をいただておりますことに対し、心からお礼申し上げます。

講演する二井知事

 さて、私は、お陰をもちまして、昨年の8月の選挙で当選させていただきました。知事選挙は、オリンピックの年と重なっておりますが、私のオリンピックということでは、3度目の金メダルとなりました。

 しかし、私にとって、本当の金メダルは何なのでしょうか。 私は、司馬遼太郎の大河小説「坂の上の雲」が大好きですが、私の「坂の上の雲」は、「山口県を住み良さ日本一の県にしたい」ということであり、それを実現することが私の「金メダル」ではないか、と思っています。

 この金メダルを獲得することは永遠のテーマかもしれません。しかし、その「坂の上の雲」を目指して、「努力に終わりはない」という決意のもと、努力をし続けていきたいと思っています。

 そこで、本日は、私が取り組んでおります「住み良さ日本一の県づくり」について、私の考えや、現在、そして将来に向けての取組みについて、要約してお話をしたいと思います。


2 今なぜ「住み良さ」なのか

(1)時代の変革期~地方分権の本格化

 ご承知のとおり、我が国は、既に成長社会から成熟社会に移行し、人々は、「ものの豊かさ」から「心の豊かさ」を求めるようになり、その価値観も多様化しています。

 さらに、まもなく日本は人口減少社会を迎えますが、かつてのような右肩上がりの成長は当然見込めません。こうした中で、高度成長期にはうまく機能していた社会・経済システムは行き詰まり、その変革が必要となっています。

 中央集権から地方分権への本格的な動きも、そのうちの一つです。 1985年に制定されたヨーロッパ地方自治憲章に「近接と補完の原理」というのがあります。

 この原理は、政治行政は、まず住民に最も身近な市町村で行い、市町村ではできない広域的な分野は、日本で言えば都道府県で行い、そして、どうしても国でなければできない分野のみ国が行うというものです。

 私は、市町村合併についても、この原理と同じ考え方で積極的に取り組んできました。

 住民に最も身近な市町村が住民ニーズに的確に対応できるためには、それだけの体力、知力、別の言葉で言えば、地方分権の受け皿になれる力を付けること、すなわち、市町村の財政基盤を強化し、政策・行政能力を高めていくことが不可欠なのです。そして、そのための最も有効な手段となり得るのが「市町村合併」なのです。

 本県では、平成15年3月末現在で、56あった市町村が現在33市町村になっています。来年3月末には22になる見込みです。

 そして、市町村合併が進み、その機能が強化されますと、県の役割や枠組みも見直す必要があり、現在、国の地方制度調査会や知事会において、道州制等の新たな広域自治体のあり方についての議論がなされています。

 このように、市町村や都道府県の役割や枠組みが大きく変わろうとしている中、真の地方分権を実現していくために、ぜひ必要となるものが「三位一体の改革」です。

 「三位一体の改革」については、皆さんから見れば、国と地方が「金」を巡って「分捕り合戦」をしているようにしか見えないかもしれませんが、私は、この改革は、単なる「国」と「地方」の役人や政治家の争いではなく、21世紀の「国と地方のかたち」を「近接と補完の原理」に沿ったものにすることができるかどうか、という極めて重要な改革と位置づけています。

 私ども地方の主張は、国の役割は、「国でなければできない仕事」、すなわち、外交、防衛など国家の存立に関する問題や、社会保障や経済など政府がリーダーシップを持って全国的な観点から進めなければならない課題に限定すべきであり、それ以外の権限や財源は国から地方に移譲すべきであるということなのです。

 しかし、昨年来の国の対応は、我々地方の思いを真摯に受け止めたものとは到底言い難く、これからも、地方も一致団結して、真の地方分権の実現に向けて全力で取り組んでいかなければなりませんので、皆さんには、今後の成り行きを注視し、応援していただくよう、お願いします。


(2)住民ニーズと行政の役割

 さて、私どもも、こうした地方分権の流れを確かなものとしていきながら、住民のニーズは何なのか、そして、その中で、行政の役割は何なのか、県の役割は何なのかを、しっかりと考えていくことが大切であります。

 アメリカの心理学者マズローの欲求段階説というのがあります。

 人間の欲求は、ピラミッド型の段階構造になっており、人間の欲求は、まず「食べる」「眠る」という「生理的欲求」から始まり、安全に生活したいという「安全の欲求」に移っていく、この2つが、人間が生存していくために必要不可欠な最低限の欲求である、そして、この低次の欲求が満たされると、高次の欲求である「社会的欲求」、「自我の欲求」、「自己実現の欲求」が芽生えてくる、というものです。

 私は、このマズローの欲求段階説に沿って考えれば、人々の欲求のうち、いわゆる低次の欲求ほど、行政の果たす役割が大きくなると考えています。

 特に、近年、相次いでいる大規模地震や台風等による災害や、健康を脅かすSARS、BSEの発生、さらには、高齢者や幼児など弱者をねらった犯罪の増加など、安全とか安心というものが、当然のように与えられるものではなくなっています。

 したがって、今、私が進めようとしている「住み良さ日本一の県づくり」は、もう一度、原点に立ち返り、県政の基本を「県民の安全・安心」に置きながら、県民と市町村、県がしっかりと協働して、各分野、各地域で、暮らしの質を高めていくことにより、創り上げていくべきものであると考えています。


(3)「自助」「共助」「公助」

 特に地方分権型の社会では、住民の皆さん自らの意識や行動がとても重要となってきます。住民の意識も、「依存型」から「自立型」へ変えていくことが求められています。

 そのため、私は、よく「自助」「共助」「公助」ということをお話します。

 まず、自分たちでできることは自分たちで、家庭でできることは家庭で行うという「自助」、そして、個人が社会の一員として、お互いに助け合って問題を解決するという「共助」、さらに「自助」「共助」でどうしてもできないことを、公がサポートする「公助」ということです。

 特に、「自助」については、かつてイギリスの作家サミュエル・スマイルズが、「自助論」の中で、「自助の精神が、その国民全体の特質となっているかどうかが、一国の力を見る際の正しい尺度になる」と述べています。

 この言葉は、「国」を「県」に置き換えれば、「自助の精神が、その県民全体の特質となっているかどうかが、その県の力を見る際の正しい尺度になる」ということであり、まさに地方分権の時代にふさわしい言葉になります。

 これからの県づくり、地域づくりにあたっては、県や市町村という行政だけではなく、地域で暮らし、活動している人たちの知恵や力を結集し、県全体の総合力、いわゆる県民力を発揮することが重要になってきます。

 私は、住み良い地域とは、県民一人一人がお互いに支え合いながら、それぞれが自発的に努力をし、力を発揮していけるような地域でなければならないと考えています。


(4)「多様性」と「バランス」による「住み良さ」の追求

 もちろん、「住み良さ」はどの地域にも求められることですが、表面的な便利さや快適さをつくるなら、大都市が経済的にも有利ですし、これを突きつめると、結局は一極集中になってしまいます。

 そのような中で、「山口県の住み良さ」を創りだすためには、地方特有の風土や文化、さらには、人と人とのつながりや、思いやりの心など、地方が培ってきた資源を活用し、地域独自のアイデアと工夫で、オリジナルの「住み良さ」を創造していくことが非常に大切ではないかと思います。

 言い換えれば、地域の中に、いかに資源を多く持っているか、それを見出し、そして、それをどう磨き、どう生かしていけるかということが「住み良さ」を創造していく上で重要な鍵になると思います。

 私は、山口県の持つ多様性の例として、よく「サザエ」の話をします。

 日本海でとれるサザエは、荒波にさらわれて転がらないよう、角があるのです。瀬戸内海でとれるサザエは、波が穏やかですので、角がないのです。サザエ一つとっても、山口県は、2種類のサザエが水揚げされています。

 私は、山口県の紹介をするときに、このような例もあげ、水産県のほか、観光県、教育県、工業県、さらには環境県でもあり、多彩でバランスのとれた県だと話しています。多様で多彩な顔があり、この多様さこそが山口県の特色ではないかと思います。したがって、私は、県政の基本を「県民の安全・安心」に置きながら、この山口県の特色を如何に伸ばしていくのか、このことが、「住み良さ日本一」の県づくりに向けた戦略であると考えています。


3 住み良さの基本は安全・安心


 そこでまず、「安全・安心」の取組みから、お話したいと思います。 ご承知のとおり、昨年、国内で79年ぶりとなる鳥インフルエンザが、本県をはじめ、大分県や京都府で発生しました。私は、これまでの様々な体験や教訓から、「危機管理」を重視してきましたが、この鳥インフルエンザへの対応でも、その力を如何なく発揮することができ、全国的にも高い評価をいただきました。

 また、昨年は、台風の度重なる襲来や「新潟中越地震」の発生、さらには、インドネシア・スマトラ島沖の大地震と津波、そして、今年に入りましても、先月、福岡やスマトラ島沖で大きな地震があったばかりです。昨日は、兵庫県で脱線事故の大惨事がありました。どこで何が起こるかわからない、人々の不安が大きくなっています。

 そのため、私は、住民の皆さんの「安全・安心を守る」ため、より一層、防災対策等を強化していきたいと考えております。

 皆さんは、「ハザードマップ」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。高潮や洪水が発生した場合、どの地域が被害を受ける可能性があるのか、その場合の避難経路や避難場所はどこなのかなどを、わかりやすく色分けし、地域の住民に配布するマップです。

 昨年の台風16号、18号では、山口県も大きな被害を受けましたが、このマップをすでに作成していた「旧山陽町埴生地区」では、マップのお陰で、住民が自主的にいち早く避難し、被害を最小限に抑えることができました。このことは、NHKのクローズアップ現代でも全国に紹介されましたが、この教訓を生かし、山口県では、洪水により大きな被害が想定される県内55の河川と23の海岸地区全てを対象に、ハザードマップを今後5か年間で計画的に作成することにしました。全国でも、先駆的な取組みです。

 また、災害時の避難場所や災害対策の拠点ともなる公共施設については、昨年度までに耐震診断を全て終え、今年度から10年間計画で、耐震化改修を進めることにしています。

 今、世の中は、表面的なもの、目立つことに目が行きがちですが、私は、こうした防災対策だけではなく、防犯、医療、食の安全など、県民の皆さんが、安全に、そして、安心できる環境づくりを、地味ではありますが、「住み良さ日本一」の県づくりを進める上での基本であるとの考え方のもと、これからも全力で取り組んでいきたいと考えています。


4 持続可能な地域社会づくり

 そして、こうした「安心・安全な県」ということを基本にしながら、私が、今特に重視しておりますのが、「循環」をキーワードに、本県の多様な地域資源を活かしながら「山口県らしさ」を創り上げていくこと、そして、地域の中でお互いに「支え合うような仕組み」を創りだしていくということです。


(1)地域資源の活用


 ①周南コンビナートでの取組み

 そこでまず、地域資源を生かした取組みを2つご紹介したいと思います。

 周南地域では、コンビナート内のソーダ工場で、ソーダを造る過程で大量に発生する水素ガス、これを副生水素と言いますが、これを活用する取組みを進めています。

 ご承知のように、水素エネルギーは、燃料電池など次世代のエネルギー源として注目を集めていますが、周南では、この副生水素の量が全国一を誇ります。これを燃料電池の燃料として活用すれば、自動車28万台分の年間燃料消費量を賄うことができます。

 現在、その多くはボイラーの燃料や化学製品の原料として使用されていますが、これを燃料電池の燃料として活用しようと、「水素フロンティア山口」と銘打った施策を展開しており、昨年は、電気と給湯の家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの実証実験を行いました。これにより、電池の実用性については、目途がつきましたので、さらに、一般家庭での実用化を目指し、ガス管の安全性等の具体的な研究を行うなど、水素の幅広い活用に向けた取組みを進めていくこととしています。

 そして、この取組みは、岐阜県がインターネットを活用して行っている「平成の関ヶ原合戦」という、全国自治体の政策を競い合うサイトにおいて、アクセス件数が全国のトップを走っており、全国的にも注目されています。

 また、周南コンビナートでは、この他にも、規制緩和を通じて地域の活性化を図ろうという、国の構造改革特区制度を活用し、環境への取組みと産業の活性化を狙った「環境対応型コンビナート特区」に取り組んでいます。

 コンビナート内の企業が自家発電施設を持っておりますことから、電力や熱を融通し合い、エネルギーを有効利用することにより、二酸化炭素の削減やコスト減による競争力の強化を図っていこうという特区です。

 私は、こうした未利用資源を活用した取組などとあわせて、さらに、関連する環境産業の育成や立地の促進にも取り組んでいきたいと考えています。


②知的クラスター

 また、宇部地域においては、高い工業機能や、山口大学の医学部や工学部など学術研究機能が集積しているという特性を活かして、現在、山口大学で独自に培われてきた白色発光ダイオードなどの光技術を基盤に、最先端の次世代医療機器の開発等を図る、いわゆる「うべ・メディカル・イノベーション・クラスター構想」に取り組んでいます。

 山口大学で研究されている白色発光ダイオードは、自然光と変わらない色映りの良さや照度の強さが大きな特徴でして、この特長を生かし、これまで発見が困難であった僅かな病変、初期段階での腫瘍や潰瘍などを見つけることのできる内視鏡の開発など、次世代医療機器の開発に取り組んでおり、医療の分野でも大きな飛躍につながると期待しております。この構想が実現すれば、1,800億円の生産効果や2,000人の新規雇用創出効果があると見込まれています。

 さらに、基幹となる白色発光ダイオード等に係る製造技術や工程を地域に根付かせば、そこから、その技術を活用して、新たな事業展開がされたり、ベンチャー企業が生れるということも期待できますので、全国のモデルともなり得る新産業創造のリーディング事業として、大学、企業、行政が連携した取組みをさらに進めていきたいと考えています。


(2)地域の支え合い  

 これまでお話しした2つの取組みは、いずれも産学公が協働して進めてきたものですが、こうした取組みを生みだしていくためには、やはり、地域の中で、あらゆる主体がお互いに支え合うという風土を創ることが大切です。

 最近は、人間関係が希薄化し、人と人との繋がりがなくなりつつありますが、私は、少子高齢化やグローバル化が進む中、今後、益々地域における「助け合い」、「支え合い」が必要になってくると考えており、こうした視点での取組みも、積極的に進めています。

 ①地産・地消

 その一つが「地産・地消」の取組みです。

 「地産・地消」とは、「地域生産、地域消費」の略語で、「地域で採れたものを地域で消費しよう」という意味で、山口県産農産物の「販売協力店」の要請や外食産業におけるモデル店の設置、学校給食での米、大豆、小麦の一体的な利用などに取り組んでいます。

 さらには、地産・地消を進めることは、輸送エネルギーの軽減を通じ、地球温暖化防止にも役立つのです。 特に、山口県は、平地が少なく、一戸当たりの耕地面積が狭い、中山間地域が多いという厳しい条件の中で、農林業が行われておりますだけに、それを支えていくためには、農地が単に農産物を栽培するだけの場所ではないことを理解し、県民あげて自分たちの身近なテーマとして、地産・地消の問題に取り組んでいかなければならないのです。

 たとえ、地元で採れたものが高くとも、それは「豊かな自然環境・生活環境を守る経費」であると考え、みんなが地産・地消の取組みを応援していけば、地域内に「むら」も「田んぼ」も守る「好循環」を創り上げることができ、中山間地域の活性化にもつながるものと考えています。


②森林づくり(やまぐち森林づくり県民税)

 さらに、こうした県民みんなで、農山村・農林業を守っていこうという考えに立って、本年度から導入したのが、「やまぐち森林づくり県民税」です。

 森林に、今一度、目を向けていただきますと、私たちが生きていく上で欠かせない水や空気をはじめ、国土や県土を災害から守り、私たちの健康やレクリエーション、さらには、ふるさとの美しい景観を創り出すなど、様々な恵みを、私たちに提供してくれているのは、緑豊かな森林であることがわかります。さらに、様々な動植物に生息する場所を提供するなど、私たちが暮らす上で、とても重要な役割を果たしています。

 このようなかけがいのない森林が、農山村における過疎化・高齢化の進行や林業経営の著しい採算性の悪化などにより、木を切り、その跡地に再び木を植え、そして育てるという循環の仕組みが途絶えようとしています。

 森林所有者の負担を伴う従来からの取組みだけでは、森林の適切な整備が滞り、森林の荒廃に歯止めがかからない状況になっています。今日、深刻化している「杉花粉」や「クマの出没」の問題も、森林の荒廃によるものではないかと危惧しております。

 こうしたことから、森林を県民共有の財産として、適正に維持・管理し、多面的機能が持続的に発揮され、そして、次の世代へと引き継いでいけるよう、このたび、新たに森林整備のための県民税を導入しました。個人については、1年間に500円、法人につきましては、資本等の金額により異なりますが、1年間に最大で40,000円を負担していただくことにしています。

 この税源を活用して、森林の整備や県産木材の利用促進、さらには、県民との協働による間伐等の実施や環境教育を通じた普及啓発等を進めることにしていますが、県民の皆さんが、この県民税を通じて、森林をみんなで守り、育てていく、支え合っていくのだという気持ちが育まれていくことを期待しています。


(3)「県民力」の向上

①県民パワー発揮の舞台「山口きらら博」

 さて、このような取組みは、地域で暮らし、そこで活動する人たちの総力を結集して進めていかなければなりません。そのためには、先ほども申し上げましたが、県民一人一人の持っている力をうまく結びつけ、県民力として高めていくことが何よりも大切です。

 私が、こうした県民力を高める舞台として開催しましたのが、あのジャパンエキスポ「山口きらら博」なのです。  ご承知のように、「山口きらら博」入場者数は79日間で、目標の200万人を大きく超える251万人余と、同時期開催の福島や北九州と比べて、入場者数で圧倒的にトップを切ることができ、大成功を収めました。 その成功の理由は、この博覧会を素晴らしいものにしようと、まさに、県民挙げて取り組んだ、県民パワーだったのです。「山口きらら博」は、山口県の県民力が開花した博覧会であったと思います。

 なお、この県民パワーが、翌年度、平成14年度の経済成長率の全国1位、県民所得の中四国・九州地方でのトップにつながったのではないでしょうか(?)。


②自立・協働・循環

 そして、私は、県民パワー発揮の過程で、「自立」「協働」「循環」が、今後の県づくりで、県民、市町村と共有すべきキーワードであることを学びました。

 「自立」とは、「自分ですべきことは自分で」という主体性と役割分担意識をしっかり持つということです。

 「協働」とは、それぞれが持つ個性や特性を認め合い、持ち寄り、活かし合い、その相乗効果で、個々の能力の総和を超えた力を生み出し、1+1が2ではなく、5にも6にもなるように、地域の総合力を高めていこうということです。さきほどお話した産学公の取組みも、この「協働」による取組みです。

 「きらら博」は、企画・運営に参加してくれた県民スタッフやボランティア等の「自立」「協働」による対応の素晴らしさが、来場者に大きな感動を与え、口コミで拡がっていき、このことがスタッフやボランティア等自身へも伝わり、その対応に一段と磨きがかかっていきました。会場内に、来場者の「評価する、誉める」、スタッフ、ボランティア等のその「期待に応える、頑張る」という「好循環」が生れたのです。先ほどから「循環」という言葉をくどいほど使ってきましたが、「循環」の重要性も、「山口きらら博」から学んだものなのです。


③若者の活動~学生耕作隊の取組み

 さて、この博覧会を契機に、県民の皆さんの様々な活動が、県内各地域で起こり、また、県民参加のネットワークも広がってきています。

 その中には、例えば、山口大学の学生さんたちが立ち上げた、農作業支援を目的とするNPO法人「学生耕作隊」があり、今、全国から注目を集めています。

 細かい仕組みは省略しますが、参加した学生たちの中には、農業への見方が変わり、将来農業をやってもいいという学生も出てきましたし、重いコンテナを運ぶ若者の姿が、高齢者が目立つ地域に「活気」を生んでいます。大学生の地域に役立とうという「思い」が、今、地域内で、「もの」や「こころ」、「元気」の循環を起しているのです。

 昨年からは、平日や試験期間中も派遣を行えるよう「シニア耕作隊」の募集も始めているということで、今では20代から70代まで多彩なメンバーが揃い、シニア会員は、50名にものぼるそうです。


④シニアの活躍~生涯現役社会づくり

 また、本県では、こうしたシニアの知恵や経験を地域づくりに生かすとともに、社会参加を通じて、高齢者自身に、「楽しみ」「喜び」「生きがい」を感じてもらうことで、生涯にわたり、いきいきと活躍できる「生涯現役社会づくり」という取組みに、いち早く取り組んでいます。

 この取組みは、全国で高齢化No1の瀬戸内海の周防大島をモデル地域に、平成10年に「元気・にこにこ・安心」の島づくりとしてスタートしましたが、その成果を全県に波及させていくため、昨年11月には、生涯現役を考え行動する全国唯一の学会として、「生涯現役社会づくり学会」を山口県立大学に設立しました。

 本県は、4月1日の推計人口で、150万人を下回りました。人口が減少傾向にある中、高齢者のパワーの発揮が益々重要になってきますので、生涯現役社会づくりの面でも、全国のモデルになるよう、頑張っていきたいと考えております。

 今後、住民ニーズが多様化する中、行政だけでは対応できない活動や、県民、NPO等との協働で取り組むことでより成果があがる分野は、今後ますます増えてきます。

 私は、今後も、県民活動の活発化のための環境づくりに取組み、行政と県民、NPOなど多様な主体が参加したパートナーシップづくり、さきほどの言葉で言えば、「協働」になるのですが、パートナーシップづくりを進め、山口県の県民力をさらに高めていきたいと考えています。


5 住み良さ指標による推進

 そして、県民や市町村と一体となって、県全体の取組として、「住み良さ日本一の県」づくりを進めていくわけですが、「住み良さ」というのは、ある意味、漠然としていますから、各主体が共通の理解をもちながら、知恵と力を結集していくためには、その具体的な目標像を共有しておかなければなりません。

 そのため、現在、「住み良さ日本一」の目標像をできるだけわかりやすく示す「住み良さ指標」の策定に向け、検討を進めています。

 子どもからお年寄りまで、生涯の様々なライフステージにおける「住み良さ」を考えながら、「安全な暮らし」をはじめ、「快適な暮らし」、「健康と福祉」や「子育て・人づくり」、そして、「働く環境」の5つの分野ごとに、全国比較が可能な客観的な指標で示していきたいと思っています。

 画面には、昨年12月に、中間案として県民に公表した41の指標のうち、特に、住み良さの基盤となります10の指標について、レーダーチャートにしたものを映しています。全国数値で偏差値化していますので、偏差値の50を超え、外側に出ている指標は、全国レベルを上回っているもので、50より内側にある指標は、全国レベルを下回ったものです。

 御覧いただくと、山口県の住み良さのポテンシャルが総じて高いことがお分かりいただけると思います。「自然災害安全指数」は全国14位、「自然環境の豊かさ指数」も23位と、自然に恵まれ災害が少ないことが分かります。

 また、道路等の交通基盤や情報基盤の整備を進めていることから、「通勤・通学時間の快適指数」は17位に、「情報化基盤の充実指数」は13位となっています。

 さらに、「県民学習施設等充実指数」は5位、「医療・健康施設等充実指数」は7位と、生活関連の社会資本は高い水準にありますし、「観光資源豊かさ指数」は7位、「産業生産力指数」は17位と、産業面での資源や基盤もしっかりしていることが分かります。

 その他31の指標を5つの分野ごとに分けて、レーダーチャート化したものについては、本日は時間の関係もあり、詳しくお話できませんが、総体的に、全国平均を超えるものが多く、バランスの取れた「住み良さ」が出来上がりつつあります。しかし、その一方で、例えば、「三大生活習慣病の死亡率」が、高齢化が進んでいる背景はありますものの、全国レベルでみると、悪い状況にあることが分かります。

 この中間案について、現在、県民、市町村等から幅広く意見を聴いており、今後、いただいた意見をもとに、指標項目や数値目標について、さらに検討を加え、充実させた上で、今年秋までに公表する予定です。

 そして、この「住み良さ指標」をもとに、本県の長所はさらに伸ばし、十分でない分野はランクアップする取組みを強化し、レーダーチャートが、高い水準でバランスのよい形となるようにしていきたいと思っています。


6 交流の視点の重要性


(1)交流人口の拡大

 さて、これまで、「住み良さ」の創造という、山口県に暮らす人々に視点をおいた県づくりのお話をしました。私は、これからの県づくりのために必要となるもう一つの視点が、「交流」だと考えています。

 これから人口減少社会を迎えます。人口が減少していくということは、モノやサービスを買う人が絶対的に減るわけですから、需要が減少し、地域の経済力の低下を招くことになります。その影響は、地方圏ほど深刻です。

 ですから、地方は、人口減少という事態に直面する中で、地域の活力を維持し、地域の元気を創造するために、いろいろな方策をとっていかなければなりません。

 すでにお話した、地域のものは地域で消費しようという「地産・地消」の取組みや産業振興の取組みもそうですが、これに加えて、私は、外からの需要を取り込んで、地域の経済力を上げることがとても大切だと考えています。

 つまり、定住人口だけではなく、「交流人口」というものも視野に入れ、その拡大を柱の一つに据えた県づくりを進めていく必要があります。

 そして、その交流人口拡大の中核を担うのは観光です。観光は、交通、輸送、ホテル・旅館、飲食はもとより、農林業・漁業など幅広い分野に関連し、観光産業は、地域経済全体の生産や雇用への「波及効果」が著しく大きいからです。

 幸いなことに、山口県は観光資源が豊富です。歴史的、文化的資源は言うまでもなく、「きらら博」で評価を受けたホスピタリティも、より高まっています。こうした資源に磨きをかけながら、できるだけ本県にきていただくよう、観光PR等も強化していきたいと考えています。

 さらに、山口大学経済学部には、今年、琉球大学とともに国立大学では初めて、観光政策学科ができましたので、山口大学の今後の取組みには、産学公が協働して全国に誇れる「観光県山口」を創造していくに当たって、大きな力になると期待しています。


(2)ブランド戦略

 また、外からの需要を取り込むのは、本県に人を呼び込むだけに限りません。県産品が県外でも活発に消費されることも重要です。そのため、私は、県産品のブランド化を積極的に進めています。

 県産の魚介類や水産加工品等で使っている「新鮮やまぐち」や「山口海物語」というブランドや、県農産物で使っている「正直やまぐち」というブランドは、そうした取組みの一つです。 そして、これからは、それを産み出した地域そのもの、つまり、山口県という地域のブランド力をあげていくことがとても重要だと考えています。

 たとえば、皆さんが店で、いろいろな産地のみかんを前に、どれを買おうか迷っているとします。その中には、「山口県の大島みかん」というのがあります。さきほどお話したお年寄りたちが元気で、現役で頑張っている周防大島で採れたみかんです。その大島産のみかんを見たときに、山口県は、新鮮・安心・安全をモットーに「地産・地消」を推進しているところ。また、とても自然が豊かで、人が大切にされ、人々が元気な県。そこに住む人たちが丹精こめて作ったみかんだから、おいしいに違いない、安心できる食べ物に違いない、だから、私は、山口県のみかんを買おう。そう思っていただき、山口県産のみかんを選択させる力が、地域のブランド力だと思います。

 私は、このように、地域の資源を、これを守り続ける地域、そして、地域の人々の存在や思いとともに差別化し、発信していく戦略を、地域ブランド戦略として構築し、皆さんに「山口県を選択してもらえる力」(これも「県民力」)を創り上げたいと思っています。


7 おわりに


 山口県では、今年10月には、技能五輪・障害者技能競技の全国大会が、また、来年11月には、国民文化祭が、そして、2011年には、国体が開催されます。これからも、さまざまな「動き」を創りながら、県民力を高め、「住み良さ日本一」を目指していきたいと考えています。

 また、そのためには、持続可能な行財政基盤が必要ですから、私は、この4年間の任期を県政集中改革期にしたいと考えております。皆様の引き続いてのご理解とご協力をお願いし、私の話を終わらせていただきます。




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