このページの本文へ移動

ここから本文

トピックパス
トップページ > 組織から探す > 国際課 > CIRレポート・1101

平成26年 (2014年) 9月 3日

国際課

CIRレポート 1月号

「21日間」

国際交流員 サンティアゴ・ガスタミンザ(スペイン)



皆さん、¿Qué tal? こんにちは。


新年あけましておめでとうございます。今は、わたしにとっては、終わったばかりの年のことを振り返って反省する時期です。一年間で一番流行した歌や一番大変な出来事など、印象的なことを思い出しています。


この度お話ししたいのはとても気に入った「21日間」というテレビ番組です。世界のどのテレビでも見たことがない番組。基本的にドキュメンタリーの様式ですが、いつものと違ってジャーナリストがある状況について調べたり取材したりして報告するではなく、ジャーナリスト自身がそれを21日間のあいだ実際に経験しながら報告するものです。取材者自身が選んだテーマにわざわざ巻き添えになり、中から感想や気持ちなどを伝えてくれます。番組のモットーは「語るよりも体験のほうが本物に近い!」。


苦労しないで済む体験ではなく、社会的に論争を引き起こす話題ばかりを扱っている番組です。ジャーナリストにとっても3週間も友達や家族に会えないつらい状況です。「21日間」ほど多くの印象を受けた番組はわずかです。その一つについてこれから説明します。


サマンタ記者はこれからの3週間、とても辛くて危ない仕事に携わります。スペインのあるイベリア半島の大部分は海に囲まれています。地中海にせよ、大西洋にせよ、漁業が昔から盛んです。延縄(はえなわ)という技術を使う漁師たちと一緒に生活する体験ドキュメンタリーです。


サマンタ記者は漁船乗組員の住宅で取材します。漁師は平均で月25日間ぐらい外海上で働いています。結婚してからもう14年以上なのに、奥さんはまだご主人の定期的な不在に慣れることができません。でも「仕事は仕事だ」と言いながらうつむきます。「行かさぜるをえない・・・」。


サマンタ記者がエサを釣り針に引っ掛ける様子


12人の乗組員は皆こう言います。「10年以上船に乗っていても最初の日は酔ってしまう」。記者もそうなりますが、ただ1日目だけでなく3日目まで吐きっぱなしの状態です。あと十数日間、耐えられるのか、その自信が持てません。


一日の仕事時間は20時間。残りの4、5時間は眠れれば眠る。目的はできるだけ短い時間でたくさんの魚を釣ること。早く帰れば帰るほど魚は新鮮だから。


一日に2000キロの魚を釣れれば、それでやっと利益を出すことが可能になります。船の整備や魚のエサ、燃料や漁具に高い出費がかかるので。


何日も狭い船の中で生活するからには、仲良くしないと大変な状態になってしまいます。本当の家族と比べても、一緒に長時間を過ごすので、乗組員とは特別な関係が生じます。


サマンタ記者は乗組員と接しているうちに、それぞれのメンバーが色々な経験を語ってくれます。漁船でずっと生活するとめっきり老けるという話がよくあります。40歳の漁師は自分が60歳に見えていやな気持ちだと言います。


サマンタ記者が調理役のポチョロさんと一緒に乗組員のために料理を作る場面も面白いです。今日の献立はリブ煮込みなのですが、船が揺れているので非常に作り難いのです。テーブルの上でジャガイモの皮を剥く包丁が滑ったり、フタをかけても鍋からスープがこぼれそうになったりします。


朝から夜までの仕事はとても過酷で、誰でもできるものではない。今回の操業は18日間。家へ帰る前に魚の分別と整理の後、船の掃除もしなければなりません。仕事はまだ終わっていませんが、皆家族に会うのが待ち遠しい様子です。


第19日目には上陸。


乗組員は陸地に戻ってうれしい気持ちですが、釣った魚を売るのは冒険に出かけるときのように不安。なぜかというと、たとえ魚をたくさん釣っても、売る時の値段が安ければ、利益が出ないから。需要と供給の法則で。


魚市場でのセリの様子


今回の漁獲量は目標より20%少ないので、卸売市場でいい値段で売らなければなりません。目安になる値段は1キロ3.5ユーロです。


セリの時間が迫り、船長も記者もとても緊張しています。1キロ3ユーロ以下になったら、苦労した2週間以上の仕事の価値がなくなるどころか、損して、給料も出ません。


セリの担当者は早いスピードで、息苦しそうに、順番に値段を呼びかけていきます。集まった魚屋さんのうちのだれかが、呼びかけられた値段を払おうとしたら、その値段になります。


魚の種類ごとに別々の競りがあります。毎回獲ってくる魚が違うので、それにあわせて最終的な値段も変わります。


今回は運が良かったようです。1キロあたり4.05、4.10、8.10ユーロでそれぞれ売れたのでホッとして船長と記者が抱き合います。


いよいよ乗組員との別れの挨拶です。2週間以上も狭い船中で一緒に生活すれば、お互い悩みも喜びも共有しますので、別れる時涙を流す人もいます。


最後に記者がこう話します。「『21日間』というシリーズを始めてから一番つらい経験は今回の外海上の釣りでした。漁業という仕事は何も決まっていません。悪天候の日が多いし、あまり釣れない可能性もあるし、たくさん釣っても卸売市場で需要が高くなければ損しますし・・・。この先、天気予報を見た時には、ただ気持ちよく町を歩けるかどうかだけではなく、漁師の命に危険があるかどうかも気になるだろうと思います。皆が海の魚を食べられるのは漁師やその家族の犠牲のおかげです。これは決して忘れてはならない」。



お問い合わせ先

地域振興部

閉じる