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山口ブランドストーリー「維新から明治へ〜近代化の礎を築いた長州人脈〜」公開! 明治時代、長州で学んだ者たちが、政治だけでなく文化・教育・産業などの面でも日本に維新をもたらしたストーリーを紹介しましょう。   

匠の技 伝統的工芸品

赤間硯

硯の高級品として知られる「赤間硯」。その歴史は鎌倉時代にさかのぼるといわれています。赤間硯の名は現在の下関市、赤間関(あかまがせき)で作られ始めたことに由来するもの。江戸時代には、厚狭(あさ)や万倉(まぐら)の赤間石(あかまいし)が用いられるようになりますが、藩主の許可がなければ採石できず、赤間硯は藩主の贈答品などに使われた貴重な硯でした。筆墨硯紙という文房四宝の中でも最も永く時を共に過ごす硯は、ことに文人が愛した至極の宝。文人も武将も手元に置きたいと、その心を魅了した赤間硯の味わい深い魅力を堪能してください。

赤間硯制作風景
作家写真

山口県赤間硯
生産協同組合
日枝玉峯さん
(ひえだ ぎょくほう)

■赤間硯は、どんな点に特徴があるのですか?
日枝さん/まず「赤間石」と呼ばれる美しい石を用いることです。次に、石質が緻密なため硯に適していること、石質に粘りがあるため彫刻しやすいことも特徴です。また、硯に使われる石は、墨を下ろすザラザラとした「鋒鋩(ほうぼう)」、つまり石英や鉄分を多く含みます。赤間石は、鋒鋩の大きさが一定していて良いのですが、小さいため、目立て用の泥砥石で硯の陸(おか)を研ぎ、鋒鋩を立てます。それによって墨が細かくすれ、墨色が良く、さらっと伸びの良い墨汁が得られます。赤間硯ですった墨は仮名文字など、細かい表現に向いています。泥砥石も赤間石同様、近くで採れ、それも赤間硯の産地の特徴といえるかもしれません。


■赤間石は作り手自身の方が採石されるそうですね?
日枝さん/はい。標高約120メートルの山に長さ約25メートルの坑道を掘り、そこで採石しています。ほかの硯の産地は露天掘りですが、赤間石は乾燥しやすいため、坑内掘りが適しているのです。坑道は約20度の傾斜があって水がたまりやすく、排水も自分たちで行います。また、赤間石は約1.5メートルの層に限られるのですが、その層のどの石でも硯に適しているわけではないのです。そのため、職人はまず、石を見極めることから覚えねばなりません。火薬の扱いを覚えることも必要で、採石道具の刃物も自分で作らねばならず、採石の習得に10数年かかるほどです。昔は採石専門の人がおり、硯を作る職人も50人ぐらいいたのですが、今は宇部市内に6人、下関市に1人。採石権は地区住人に限られ、それが後継者難の理由の一つでもあるんです。


■赤間石は、赤っぽい石だけではなく、全部で5種類の石があるそうですね?
日枝さん/はい。紫雲石(しうんせき)・紫青石(しせいせき)・紫玉石(しぎょくせき)・紫石(しせき)・紫金石(しきんせき)の5種類があり、一番多いのが赤みを帯びたチョコレート色の紫雲石です。紫青石は石全体が青っぽく、石質については一番硬くて緻密ですが、数が多くありません。その紫青石が文字通り丸くなった、割っても丸いのが紫玉石。紫石は少し白っぽいザラザラした、墨がよくすれる墨色の良い石で、数は少なく、わたしの好きな石です。紫金石はわたしが住む宇部市万倉ではなく、旧山陽町で採れる縞模様のある青みや赤みを帯びた美しい石で、硬い部分と柔らかい部分があるため彫るのに時間がかかります。現在、採石が困難なことから、あまり多くは作硯されておりません。


■赤間硯はどうやって作られるのですか?
日枝さん/採石後、石の目を見つけ、制作したい硯の大きさを考慮しながら、割り矢とハンマーを使って板状に割ります。次に、丸ノコで切断し、タガネを使って形を整えていく「型取り」。次いで、硯の裏表をノミなどで平らに削ったり、円盤で研磨したりする「平板作り」。続いて、硯の海や陸の位置を決める「縁立て」が終わると、大きなノミで粗く彫る「粗彫り」、小さなノミを7〜8本用いて内彫りを行う「仕上げ彫り」。そしてノミ跡などを磨き、最後に、墨をする陸と墨をためる海を残し、風化防止のために塗った漆が薄く均一になるよう布で軽く拭くと完成です。難しいのは、陸と海の境目のハト(胸)の部分。墨がなめらかにすれるよう、でこぼこがなく、ふんわり丸く…。職人が最も神経を使うところです。


■赤間硯を入手された方へアドバイスを。また、何かメッセージがあれば。
日枝さん/「墨をするのに時間がかかるようになった」「墨の色が悪くなった」という方は、目立てをすれば元に戻ります。また、硯は文房四宝の中で一番寿命が永いものです。それだけに飽きがくるものではならず、使いやすさや品の良さも醸し出す硯を求めていく必要があるのではと、わたしは考えます。墨をすると心が落ち着き、精神修養になります。墨色の良さも含めて硯の魅力を知り、それを伝えていってほしい。赤間硯は7〜800年もの永い間伝わってきた、非常にいい硯です。後継者の育成が難しいのですが、わたしたちもこの伝統を大切に守っていきたいと思っています。

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