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山口ブランドストーリー「維新から明治へ〜近代化の礎を築いた長州人脈〜」公開! 明治時代、長州で学んだ者たちが、政治だけでなく文化・教育・産業などの面でも日本に維新をもたらしたストーリーを紹介しましょう。   

匠の技 伝統的工芸品

萩焼

萩焼の歴史は、16世紀末の朝鮮出兵の際に、毛利輝元(もうりてるもと)が招いた陶工李勺光(りしゃっこう)、李敬(りけい)の兄弟が、萩市で毛利家の御用窯として開いたことに始まります。昔から「一楽二萩三唐津」と評され、茶人を初め多くの人に愛されています。現在は萩焼の伝統の中から陶芸家たちは、伝統工芸派、現代工芸派、前衛派(ぜんえいは)と多彩 な活動を展開し、人間国宝、芸術院会員、前衛作家等を輩出しています。その手触りの良さ、ざんぐりした土の味わい、装飾の素朴さに特徴があります。

萩焼イメージ
作家写真

萩陶芸家協会
金子信彦さん
(かねこ のぶひこ)

■萩焼は、どんな点に特徴があるのですか?

金子さん 焼き締まりにくい土なので、器となって手に取った時に、すっと違和感なく、その人の肌になじむ、優しく感じられることだと思います。だから、茶を好む人に愛された。そして思いやりをもって使っていく中で「萩の七化(ななば)け」(焼き締まりが少ない土のため、釉薬の貫入を通して、使うにつれてお茶が浸み込み、色艶が変化して風情が醸し出てくる状態)が生じていく。それも萩焼の大きな特徴です。

 

■窯の温度は何度ぐらいになるのですか?

金子さん 素焼きの時は、800℃ぐらいで時間をかけて湿気を完全に取り除きます。(釉薬を掛けた後の)本焼きは、登り窯の場合、窯の大きさによって異なりますが、1200℃ぐらいまで上げてから7〜800℃へ。所要時間は、まず、れんがから温めないといけないので、わたしのところでは、まず大口(胴木窯)だけで約20時間、焼成に約24〜40時間。わたしは温度計に頼らず、昔の人と同じように火の動きや色、煙の色などを見たり体感したりしながら、薪をくべる量などを加減します。もともとわたしには師匠がおらず、登り窯で焼くのに何回もきりがないほど失敗しました。その窯に合った釉薬の調合、釉薬の厚み、窯詰めの時にはどういうバランスで積めばいいのか…。薪も完全に乾燥していないと1200℃まで上がらないんです。焼き上がる寸前になって全部だめになったこともあって、こんな情けないことは二度と繰り返したくない、と自分で原因を探し、どんな火にしたいのかなど、からだで覚えてきました。魅力あるものになるかどうか。すべては窯焚きによって決まります。でも、無難なものだけでなく、実験、冒険心も必要で、失敗の中に新しいヒントを見つけることもあるんです。最近では、一見、物足りないようだけど、萩焼の原点の色である、冴えた「枇杷釉(びわゆう)」に魅力を感じています。

 

■枇杷釉は文字通り、枇杷色に焼き上がる透明な釉薬ですね?

金子さん はい。もともとはイスノキの落葉の灰を使ったようですが、わたしは今、炭焼き小屋の雑木の灰に長石(ちょうせき)を混ぜて作っています。萩焼のきめの細かい土には、枇杷色がよく合います。藁灰釉だと白い色に。大道(だいどう)土に荒砂を混ぜた土にざっくりと白を掛けた「鬼萩(おにはぎ)」は人目を引き、風情がありますが、水が漏れやすい、欠けやすい一面もあります。枇杷釉がおろそかにされた時代もありますが、シンプルだからこそ、かえって作り手の姿勢が出て、ごまかしがきかないんです。水が漏れることもなく、長く使っても飽きないものです。

 

■萩焼の土には、主に大道土・金峯(みたけ)土・見島(みしま)土があるそうですね?

金子さん 大道土は白い粘土です。金峯土は肌色に近い、まさ土で、大道土に混ぜることによって耐火度が高まり、肌色に焼き締まった萩焼らしいものになります。見島土は比較的近年、萩の陶芸家によって使われ始めた土で、火山灰が風化した、鉄分の多い赤茶黒い土です。見島土をベースに化粧土、釉薬を掛け、味のある抹茶茶わんが生まれてきたんです。

 

■萩焼について何かメッセージがあれば。

金子さん 萩焼に毛細管現象で茶渋が完全に入ると、実にいい絵になります。萩焼はていねいに布巾で拭くという、日ごろから大切にする扱いが不思議と品良く出てくるんです。使うことによって出てくる七化けは、日本にしかない美意識。長く使うことで一体感や親しみが生まれ、その人の一部になり、心が落ち着く気がします。どうぞ大事に使ってください。また、萩焼は16世紀末、朝鮮半島から連れてこられた陶工によって、いい物を作らなければ生き延びられない、生きるか死ぬかの中で誕生した焼き物です。以来400年、消えかかったこともありながら続けられてきた。伝統を守ることもいいけれど、それだけでなく、自分たちの役割は先人たちのエネルギーを受け継ぎ、ベストを尽くし、少し前へ、少し前へと進んでいくこと。作品をご覧になる方も、ご自身の目で見て、心ひかれるものを、もてなしに使われる茶陶の器は、お客様をどうもてなしたいかを考えて、どうぞ選んでください。

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