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山口ブランドストーリー「維新から明治へ〜近代化の礎を築いた長州人脈〜」公開! 明治時代、長州で学んだ者たちが、政治だけでなく文化・教育・産業などの面でも日本に維新をもたらしたストーリーを紹介しましょう。   

山口ブランドストーリー

5.産業経済界で近代日本を支えた「藤田組の創始者」藤田伝三郎

藤田伝三郎(国立国会図書館ウェブサイトより)

藤田伝三郎(国立国会図書館ウェブサイトより)

  

 大阪で土木建設業などの「藤田組」をおこし、近代化産業遺産の「琵琶湖疏水」や、日本人だけの手による初の鉄道トンネル「逢坂山トンネル」、日本初の大規模な干拓「児島湾(岡山県)の干拓」など数々の大事業を手掛けた 藤田伝三郎(ふじた でんざぶろう) (1841-1912)も長州出身です。
 藤田は1841(天保12)年、萩で酒造業を営む家に生まれました。幕末、志士と交わり、高杉晋作に師事。維新後、大阪に出て、2人の兄(藤田鹿太郎・久原庄三郎)と「藤田組」を設立。秋田県小坂鉱山をはじめ全国各地の鉱山の経営や、数々の後の大企業の創立にかかわったほか、大阪商法会議所(現 大阪商工会議所)の設立に参加し、第2代会頭となり、関西財界のリーダーとして活躍しました。
 また、藤田は古美術品の海外流出を防ごうと仏教美術や茶道具を中心に収集し、現在、国宝「曜変天目茶碗」などがかつて藤田の大阪本邸の蔵だった「藤田美術館」で大切に守られています。さらに秋田鉱山専門学校(現 秋田大学工学資源学部)や日本女子大学校(現 日本女子大学)の創立に資金援助を行うなど文化・教育の発展も支えました。


久原房之助(日鉱記念館)

久原房之助(日鉱記念館)

  

 藤田の親戚からは明治・大正・昭和期に日本の産業をけん引した2人の人物が生まれています。 1人は、藤田の兄である庄三郎(須佐の久原家の養子となった)の子、萩市に生まれた久原房之助(くはら ふさのすけ。1869-1965)です。久原は藤田組に勤め、小坂鉱山へ赴任すると、銀の鉱床が尽きかけていた鉱山を黒鉱精錬法の開発によって銅山へと甦らせます。
 久原は藤田組から独立後、茨城県の「日立鉱山」を開発し、世界屈指の銅山に育て上げ、「久原鉱業」をはじめ多方面の事業を国内外で展開していきます。県内では、藤田家先祖ゆかりの下松市に世界有数の大工業都市計画を立てて着手しますが、第一次世界大戦下でアメリカの鉄鋼禁輸が始まり、計画を縮小。下松で創業した造船所は操業を中止し、その工場は機関車の製造へ転じます。やがて工場は、かつて久原の下で働き、鉱山用電気機械の修理工場から起業した小平浪平(おだいら なみへい)の「日立製作所」の傘下に入り、現在、新幹線など世界最先端の鉄道車両を製造する「株式会社日立製作所笠戸事業所」となっています。下松市は現在、周南工業地帯の一角をなし、その芽は久原の壮大な大工業都市計画の夢の種から生まれたといえます。


鮎川義介(国立国会図書館ウェブサイトより)

鮎川義介(国立国会図書館ウェブサイトより)

  

 もう一人は久原房之助の妻の兄、鮎川義介(あゆかわ よしすけ。1880-1967)です。父は旧萩藩士。鮎川は山口で生まれ育ち、困窮した生活の中でも学業に励み、東京帝国大学(現 東京大学)を卒業後、工学士の肩書を隠して芝浦製作所(現 株式会社東芝)で職工として働き、渡米して見習工として働いた後、親類である井上馨の支えも得て「戸畑鋳物株式会社」(現 日立金属株式会社)を創業します。後、同社に自動車部を設け、「日産自動車株式会社」に発展させます。
 さらに妹婿の久原から請われて久原鉱業の再建に着手して「日本産業株式会社」として事業を再編し、水産・自動車・化学工業などにも進出して「日産コンツェルン」を形成し、産業界をリードしていきました。



 長州に生まれ育ち、現在につながる日本の高等教育や産業振興に寄与した先人たち。その生涯を振り返ると、彼らには共通して、人材育成を国の振興の根本に据え、教育施設の設立などに尽力した熱い志と、壮大な夢を実現していく行動力・強い意思・幅広い人脈、時代を読む卓越した先見の明があったといえます。長州幕末のエネルギーは、維新を成し遂げた後の明治期の国づくりにも脈々と受け継がれ、高等教育や産業振興においても日本の近代化を支えてきたのです。



【主な参考文献】

  • 青木生子『いまを生きる 成瀬仁蔵-女子教育のパイオニア』
  • 鮎川義介先生追想録編纂刊行会『鮎川義介先生追想録』
  • 岩下清周『藤田翁言行録』
  • 宇部市史編集委員会『宇部市史』
  • 小沢親光『鮎川義介伝』
  • 小野田市史編集委員会『小野田市史 通史』
  • 笠井順八頌徳会。『笠井順八翁小傳』
  • 笠戸工場史編集室『日立製作所笠戸工場史』
  • 兼清正徳『山尾庸三傳』
  • 国史大辞典編集委員会『國史大辞典』
  • 砂川幸雄『藤田伝三郎の雄渾なる生涯』
  • 道迫真吾『長州ファイブ物語-工業化に挑んだサムライたち-』
  • 独立行政法人造幣局 公式ウェブサイト
  • 中嶌邦『成瀬仁蔵』
  • 百年史編纂委員会『宇部興産創業百年史』
  • よしだみどり『知られざる「吉田松陰伝」-『宝島』のスティーブンスンがなぜ』

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