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[巻頭特集]交流のすすめ 産業観光で巡る先人たちの志が生きるまち

海底炭坑採掘を目的に築かれた「沖ノ山電車竪坑櫓」跡。竪坑櫓の基礎である石垣は国の登録有形文化財に登録されています。

宇部市・美祢市・山陽小野田市では、産業を興して、まちづくりに寄与し、まちの発展の礎を築いた渡邊祐策(わたなべ すけさく)・笠井順八(かさい じゅんぱち)・本間俊平(ほんま しゅんぺい)という3人の翁(おきな)に注目した「産業観光」を行い、話題を呼んでいます。
どんな産業観光が行われているのか、山口県出身のタレントで、「山口ふるさと大使」の松村邦洋さんが体験しました。

松村邦洋(まつむらくにひろ)

1967(昭和42)年山口県田布施(たぶせ)町生まれ。県立田布施農業高等学校卒業後、大学在学中にアルバイトをしていたテレビ局で片岡鶴太郎(かたおか つるたろう)氏にものまねを認められ、芸能界入り。ものまねのレパートリーは、タレントからプロ野球選手、政治家まで幅広い。歴史が好きで、特に中世から幕末・維新の歴史に興味がある。阪神タイガースの選手を絵と思い出でつづった『ボクの神様〜心に残るトラ戦士』(リベロ社)などの出版のほか、似顔絵展も開催。バラエティやテレビドラマ、映画、ラジオなどで活躍中。山口県の魅力をPRする「山口ふるさと大使」に就任している。

 石炭によって発展の礎が築かれた県内有数の工業都市・宇部市にやってきた松村邦洋さん。 「高校野球で有名な“宇部商”のことなら詳しいんですが、宇部の歴史っていうと、うーん…」

 松村さんの産業観光は、このツアーのガイド「産業観光エスコーター」を務める、地元企業OBの渡邉輝弘(わたなべ てるひろ)さんによる歴史解説から始まりました。 「宇部は江戸時代、長州藩の永代家老、福原(ふくばら)氏が治めた寒村でした。幕末、京都御所で起きた『禁門の変』の後、幕府による長州征伐が決まり、長州藩は幕府へ恭順を示すため3人の家老に切腹を命じます。そのとき…」 「その禁門の変って、蛤御門(はまぐりごもん)の変のことですね!そうか。長州征伐を前にして切腹させられた三家老の一人は宇部の“殿様” ※注1だったんですね」

※注1 福原越後(ふくばら えちご)。

 丸い目が一層丸くなった、幕末の歴史が大好きという松村さんの表情に、渡邉さんの顔がほころびます。

 「ええ!宇部では、江戸時代、すでに石炭は掘られていたんですが、本格的になったのは明治維新後のことです。福原家の養子・福原芳山(ほうざん)が、他村の人の手に渡った宇部の石炭を掘る権利を地元のために買い戻してくれたのがきっかけなんです」

 その後、宇部の人たちは、譲り受けたその権利を共同で管理する「宇部共同義会」を設立します。宇部共同義会は、石炭で得た収益を社会事業に活用することも目的としており、学校や図書館、道路など、まちの社会資本を次々と整備していきました。

 一方、炭鉱の運営は「宇部式匿名組合」と呼ばれる宇部独自の形態で行われました。それは、地域の人が資金を出し合って組合をつくり、頭取と呼ばれた代表者がその資金で炭鉱を運営するものでした。頭取と組合員は共に働き、同じ釜の飯を食べ、同じ額の給料を受け取り、家族的な絆(きずな)で結ばれていました。そうした中で最大規模の炭鉱に成長したのが1897(明治30)年に創業された海底炭鉱「沖ノ山炭鉱」で、その頭取を務めたのが渡邊祐策でした。

  「渡邊翁も事業の収益を私欲のためではなく、社会事業のために使われた人で、『共存同栄 ※注2』という言葉を好んで使われていました。そして早くから将来を見据え、『石炭は有限の資源。掘り尽くせば子孫の代には何もなくなる。有限の鉱業から無限の工業へ』と鉄工所をはじめ、セメント、化学工業などの会社を次々と設立。それが現在日本有数の企業の一つ宇部興産株式会社の母体となったんです」

※注2 渡邊翁が、企業と地域の発展を同軸で捉えて使っていた言葉。

 渡邉さんの説明をノートに書き留めながら、 「宇部が炭鉱のまちだったなんて、知らなかったなあ」
 と松村さん。渡邉さんの案内で宇部興産宇部本社へやってきました。

  「渡邊翁は晩年、現在の化学事業の第一歩となった、石炭から硫安を生産する方法を学ばせに社員をヨーロッパへ派遣します。そして宇部にプラントを造り、1934(昭和9)年、待望の硫安が完成。亡くなられる直前の翁に届けられ…」
  「その硫安って何ですか?」
 と松村さん。
 「硫酸アンモニウムのこと、窒素肥料 ※注3です。戦後、エネルギー革命で全国の炭鉱町は活気を失いますが、宇部は渡邊翁の先見の明で発展し続けられたんです」

※注3 その後、アンモニアからナイロン樹脂の原料カプロラクタムの生産へ。宇部興産株式会社はその生産量世界トップ3のメーカー。

発行:山口県広報広聴課

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