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萩の夏ミカンの栽培は、明治維新後の士族を 経済的に救うために奨励されたことから始まる。酸味が強く、さわやかな味わいが特徴。
岩国市に生まれ、8歳から11歳までを萩市で過ごした岡本さんは「萩といえばもちろん夏ミカンですが、近年の山口県には、さらに素晴らしいかんきつがありますね」と、山口県オリジナル品種のかんきつ「ゆめほっぺ」を絶賛。 「初めて食べたときは、その香り高さや甘さにも驚きましたが、何より、なんて品のいい果物だろう…って感動しました」
「清見(きよみ)」と山口県原産の「吉浦(よしうら)ポンカン」を掛け合わせて生まれた「ゆめほっぺ」は、温州(うんしゅう)ミカンの倍近い大きさで、糖度はデコポン以上。3月上旬から出荷され、柔らかな中袋ごと食べられる手軽さも人気ですが、岡本さんは「果物というより、まるでパティシエが手をかけて仕上げたスイーツのような完成度を感じます。しっかりした甘さと香りがぎゅっと詰まっていて、かといって熱帯フルーツのように主張し過ぎないので、食べ飽きることがない。実力がありながら出しゃばらない奥ゆかしさがあるというか…なんだか、山口県人の気質と似ていませんか?」
さすがは、山口ふるさと大使。鋭くも温かいご指摘です。
「まずは、旅館やホテルでデザートとしてどんどん提供して、ゆめほっぺの魅力を全国に広めてほしいものですね」
山口県農林総合技術センターで20余年の年月をかけて育成され、 2004(平成16)年に品種登録された。品種名は「せとみ」。「ゆめほっぺ」 の愛称は「新しいかんきつに夢を託す」、「ほおが落ちるほどにおいしい」の意味が込められている。

果実は180〜200グラムと大ぶりで糖度が高く、 プチプチと弾力のある食感や、皮がむきやすい点も魅力。 温州ミカンよりやや遅い3月上旬から 出荷される点でもかんきつが好きな人に喜ばれている。
全国各地の美味を知り尽くしているに違いない岡本さんの言葉だけに、説得力があります。
「そう、高級フレンチやイタリアン、懐石料理を食べていても『あれが食べたいな』と思い出す味といえば、キンタロウの生干しもそうですね」

ベニサシやアカイオと呼ぶ地方もあるが、 山口県ではキンタロウの名で親しまれている。
赤い体色と下顎(したあご)にある一対の長いヒゲが特徴。 淡泊でクセのない白身の小魚として、 どんな調理法でも楽しめ、特にうま味が凝縮された 丸干しはお土産にも最適。
キンタロウ(標準和名・ヒメジ)は、体長20センチほどの朱色の小魚で、下関や萩の魚屋ではおなじみ。特に干物が人気です。
「少し湿り気の残った生干しをさっとあぶって口に運ぶと、脂が乗った白身の旨味(うまみ)がわーっと広がって、お酒にもご飯にも最高です」
野草の愛好家としても知られる岡本さんは、「川や田畑、林に囲まれて育った萩での少年時代は、フキノトウやツクシ、ヨモギなどを摘んでは母や祖母に料理してもらったり、グミやイタドリを採っておやつにしたり…まさに自然に包まれて暮らしていました。今も野草を探し歩いては摘み、季節の味として楽しんでいるのは、あのころへの郷愁なのかもしれません」と自然が身近にあった故郷での暮らしを懐かしみます。
そのころに磨かれたもう一つの味覚・嗜好(しこう)が「かまぼこ」へのこだわり。
「山口県は、かまぼこの宝庫。すり身を板の下から直火であぶった『焼き抜きかまぼこ』が特徴で、長門、萩、宇部、防府など県内各地に自慢の品がありますね。塩味の中でエソの旨味がストレートに伝わってきて、鮮魚を食べているようなシンプルさが魅力です。山口県が全国に誇るべき味ですが、僕は萩のものが好き。ちりめんじわの入った白いかまぼこは、子どものころには憧(あこが)れのごちそうでした。そして現在、わが家の冷蔵庫にはいつも故郷のかまぼこがあります」
岡本信人さんの「心に残るやまぐちの味」は、シンプルだけれど確かな底力を秘めた逸品ぞろい。そのお人柄をも物語るようです。
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新鮮なエソ(白身魚の一種)などをすり身にして板に塗り付け、直火でゆっくりあぶり焼きにした山口県独自のかまぼこ。シコシコとした歯応えと、 平らな表面にちりめん状のしわが入っているのが特徴。 |
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岡本 信人(おかもと のぶと)
1948年、山口県岩国市生まれ。8歳から11歳まで萩市で過ごし、神奈川県を経て東京都へ。劇団ひまわりに入団後、NHKドラマ「少年福沢諭吉」でデビュー。東海大学二部工学部建築学科卒業。1968年にTBS系ドラマ「肝っ玉かあさん」で注目されて以来、テレビ、映画、舞台、ナレーター、旅番組のリポーターなどの各分野で活躍中。主な出演作品はほかに、「ありがとう」「渡る世間は鬼ばかり」など多数。野草の愛好家でもあり、著書に「道草を喰(く)う」(法研)がある。1970年日本映画制作者協会新人賞受賞。






