防府市で現在、オーナー漁師※注1として働いている東京都出身の坂田秀作(さかた しゅうさく)さん。以前は外食産業の世界で働いていました。
※注1 自分の船を持ち、自分の技術で生活していく、独立型の漁師のこと。
その出発点は、住み込みでの日本料理店の板前修業から。一人前の板前となった後、居酒屋チェーンの会社に入り、新店舗の開設や人事採用、料理の考案などを担当。そこで培ったノウハウや経験を生かし、26歳の時、知人と3人で飲食関連の会社を起業。業績が順調に伸びる中、坂田さんは夫人の出身地である山口県への移住を考えるようになりました。
「板前として食材を扱う中で生産者に興味を持ち、農業か漁業をやりたいと思うようになって。でも、農業をするには、農地が必要。漁業なら、船舶免許を持っていたし、自分が捕った魚を知り合いの店に卸せるのもいいなと。それに漁業人口は減っているから、新人を受け入れてくれやすいんじゃないかと思ったんです」
山口県の制度を活用し、短期研修を経て移住へ

親方の中崎公治さんと一緒に。
坂田さんはインターネットで山口県のニューフィッシャー確保育成推進事業※注2を知り、面接へ。面接後、研修生としての合格の知らせが届き、4泊5日の短期研修を、防府市にある山口県漁業協同組合向島(むこうしま)支店の指導の下で受けることになりました。
「その時は向島のみ受け入れが可能だったんです。後で分かったんですが、漁業を教えるって簡単なことじゃない。まず教えようという親方を確保することから始めなきゃいけない。だから、どこでも好きな場所ですぐ漁師になれるわけじゃないんですね」
※2 長期研修をはじめ、漁業協同組合による漁船のリース事業への補助などの支援があります。詳しくは「山口県フィッシャーズコーナー」へ。
親方を引き受けてくれたのは、小型底びき網漁業のベテラン漁師・中崎公治(なかざき こうじ)さん。坂田さんは中崎さんの船に乗り込んで短期研修を受けた後、2年間の長期研修を受けることを決め、妻子と共に防府市に移住しました。
坂田さんが教わった小型底びき網漁は、山口県の瀬戸内海域における全漁業生産量の第一位を占める主幹漁法。網を引きながら船を走らせ、数時間後に網を巻き上げて、網の中のさまざまな魚を甲板に広げると、すぐに種類やサイズごとに選別。そして網を再び海へ投入。こうして網入れを何回も繰り返しながら漁を行っていきます。
漁場は、県の規則で漁法ごとに定められています。向島周辺の底引き網漁業の漁師は、狙いとする水産物によって大分県近くまで行く場合もあり、いちいち戻っていたのでは燃料代がかかるため、船中で2泊・3泊しながら漁を行います。
坂田さんの長期研修は同じように新規就漁を希望するもう1人の男性と一緒に行われました。しかし、漁業は「板子(いたご)一枚下は地獄※注3」といわれるほど危険と隣り合わせの世界。やってみなければ分からないことが多く、もう1人の男性は途中で船を下りました。
「漁場のこと、網を操作するタイミング、網の作り方とか、覚えなきゃいけないことはたくさんある。それに仕事は昼も夜もなく、寝泊まりも船の中だから人間関係も大事。正直、しんどかったですね。僕は板前修業時代の苦労があったから、頑張れたのかもしれません」
※3 船乗りや漁師の仕事の危険なことを例えた言葉。
長期研修を経て、 独立
長期研修を終えた坂田さんは、夫人の同意を得て山口県の沿岸漁業改善資金貸付金を活用し、中古の漁船などを購入。オーナー漁師として独立しました。
「無利子貸付だったので助かりました!でも、本当に大変だったのは独立してからでしたね。操業中、エンジンのベルトが切れて航行できなくなったり、網が海の底の岩に引っ掛かって上がらなくなったり、研修中にはなかった事が起きて。船には、自分一人。どうすればいいんだ、と。そういう時は代用品を考えたり、無線で助けを呼んだりすればいいんですが、最初は頭が真っ白になってしまって…」
トラブルも糧としながら着実に経験を積んでいる坂田さん。同じ制度で漁師となった仲間たちや、親方をはじめ周囲の人たちが支えになっている、と語ります。
「今はまだやりがいを感じるところまでいっていないですね。生活がかかっているから必死なのかな。でも、漁業は努力次第。技術を磨けば、水揚げ量に直結していく。そこに面白みがあります」
市場への出荷のほか、以前からの人脈を生かし、自分が捕った魚を東京などの店に送って喜ばれていると言います。
「いつか、調理師免許を生かし、自分が捕った魚を自宅で干物などに加工して販売できるようにしたいですね。でも、まずは地道にこつこつと稼げる漁師を目指します!」
![]() 東京から防府市へIターンして、 小型底びき網漁業の漁師となった坂田さん。 |
![]() 県漁協向島支店の皆さんと向島漁港にて。 |
![]() 坂田さんが所有する底びき網漁業の船。 |
[お問い合わせ先]
■山口県へのUJIターンの情報
山口県地域政策課地域企画班
電話:083-933-2546 FAX:083-933-2539
ホームページ「見つけて! やまぐちニューライフ」 http://www.ymg-uji.jp/
■山口県での漁業就業の情報
山口県フィッシャーズコーナー
下関市伊崎町1-4-24 山口県漁業就業者確保育成センター 山口県漁協指導課 内
電話:083-231-2212 FAX:083-231-6466
ホームページ「山口県で漁師になろう」 http://www.jf-ymg.or.jp/ryoushi/
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インターネットで山口県ニューフィッシャーマン制度を知り、電話で問い合わせ、面接を受け合格。漁業研修生への採用が決まる。 |
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漁業研修生として、短期研修を受ける。短期研修後、長期研修の意志確認が行われ、参加する旨を答えた後、東京から防府市へ移住。 |
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県漁業協同組合向島支店所属の小型底びき網漁業のベテラン漁師の船に乗り、2年間の長期研修を受ける。 |
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長期研修を終え、中古の漁船を購入して独立。県漁業協同組合向島支店の正組合員となる。 |
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