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特集1 夢先案内人/作曲家 鈴木 淳(すずき じゅん)防府天満宮まつりの音は、未来につづく。

秋は祭りの季節。
どの街も、祭りの日は昔ながらの活気に包まれますが、それが荒祭りであればなおさら。
今年創建千百年を迎える防府天満宮の御神幸祭「裸坊(はだかぼう)まつり」は、西日本屈指の荒祭りとして知られ、その賑わいは、防府に伝わるエネルギーと可能性を象徴するものです。今年は御神幸祭千年の年でもあります。
この記念すべき年の祭りの季節を前に、防府に生まれ育った作曲家・鈴木淳氏が故郷を訪ね、元気を探りました。

鈴木 淳(すずき じゅん)
作曲家。昭和9年(1934)防府市生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科を卒業後、音楽之友社へ入社、「音楽芸術」「ポップス」などの編集長を経て昭和37年、映画音楽の担当をきっかけに作曲家としてデビュー。昭和42年「小指の想い出」が大ヒット。以後、数々の大ヒット曲を生む。昭和62年日本レコード大賞企画賞、平成10年日本レコード大賞第1回吉田正賞など受賞多数。(社)日本作曲家協会理事長、日本レコード大賞制定委員/実行委員長、(社)日本音楽著作権協会理事。

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音の記憶

 防府天満宮・本殿に向かう57段の大石段は、創建千百年というこの神社の歴史を伝えるに十分な貫録と風情をたたえている。一段一段、踏みしめるように上り、朱塗二層の楼門を仰ぎ見て、
「子どものころ、この石段を数えながら上ったなぁ。ほら、この石段の途中、ここに僕の家があったんだよ」
と懐かしげに語る作曲家・鈴木淳氏。「小指の想い出」「なみだ恋」「海鳴り」などのヒット曲で知られる氏は、防府天満宮の宮司の家に生まれ、高校卒業までをこの地で過ごした。
 「あのころは裸坊まつりが毎年待ち遠しくてね。いよいよその日になると朝早く、4時半頃にはこの石段を上って行く人たちの足音で目が覚めるんだ。最初は2、3人の足音とささやき声だったのが次第に足音も声も大きくなっていき、やがてワッショイ、ワッショイという裸坊のかけ声が響くほどになって、ああ、ついにこの日がきた!って、ワクワクしたものです」

裸坊まつりの様子

 裸坊とは、防府天満宮で旧暦10月15日に開催される御神幸祭(※注1)の当日、2体の御神輿と巨大な網代輿を天満宮から御旅所の旧勝間の浦まで担いで運ぶ白装束の若者たちのこと。勝間の浦は、延喜元年(901)、天満宮の祭神・菅原道真公が都から大宰府に左遷される途中、立ち寄ったといわれる着船地である。当時の道真公の送迎にちなんで行われるようになったこの御神幸祭の行列には、江戸時代中ごろまでは一般民衆が加わることはできなかった。やがて天神信仰の発達とともに、どうしても奉仕したいという声が高まり、清浄なる者の証しとして裸になって潔斎することを条件に一般民衆にも奉仕が許されるようになったという。熱意に満ちた担ぎ手・裸坊たちが心をひとつにしてワッショイ、ワッショイの掛け声とともに振りまく活気は、いつしか御神幸祭に「裸坊まつり」という別名を与え、定着させたのだった。

裸坊まつり 天満宮前の様子  夕刻の天満宮出発を前に、身を清め、鉢巻きを受け取るために朝から境内に向かう裸坊たちの足音は、熱く、長い一日のプロローグ。そして、夕暮れ過ぎ、号報とともに天満宮拝殿正面の扉が開かれ、数百人の裸坊たちが一斉に拝殿になだれ込むと、殿内が熱気に包まれる。先頭みこし、第二みこしと次々に担ぎ出され、最後に威勢のいい裸坊たちに取り囲まれた綱代輿が、地響きをたてながら大石段を滑り降りる。ワッショイ、ワッショイ、兄弟ワッショイ…。
 「生命力にあふれたあの声。あれだけの数の裸坊たちが一心にみこしを担ぎながら上げる声は…実にすばらしかったなぁ。荘厳でしたよ」と、語る鈴木氏の口調もだんだんと熱を増してくるのだった。自身も裸坊の一員となり、その熱気の渦中に加わったこともあるという鈴木氏は、
「兄弟ワッショイ、っていうんだよね。裸坊は皆、同じ熱い気持ちで行列に加わっている。だからこの日は皆、兄弟というわけ。あの一体感や熱気は、忘れられないものです」
 今でも、裸坊の夢を見るという。「東京で防府出身者が集まると『何年、裸坊を見ていないの?』って聞いてしまう。我々にとって裸坊は懐かしい防府の原風景そのものなんだな」

 鈴木氏の心に「音の記憶」として刻まれている故郷の祭り・裸坊まつり。耳に残る記憶をゆっくり広げていくように熱く語られた祭りのシーンは、聞く者に鮮やかな映像を思い描かさせてくれた。歌謡界を代表する作曲家にこれほどの思い出と感動を与えた裸坊まつり。誰もが心そそられるのは当然といえよう。

※注1 御神幸祭(ごじんこうさい)
 菅原道真公の御分霊を公が立ち寄ったといわれる旧勝間の浦に運び、その霊を慰める祭り。別名裸坊まつり」とも呼ばれる防府天満宮最大の祭りで、毎年11月の第4土曜日に開催される。今年の御神幸祭は11月22日。

歴史と力を秘めた街

 「裸坊まつりを聴覚からとらえられるとは、さすがですね」
と、鈴木氏の話に楽しそうに耳を傾けるのは、地域史研究家であり天満宮近くの松崎幼稚園園長の脇正典氏。お二人は、ちょうど鈴木氏の生家があった付近に平成三年に完成した天満宮茶室・芳松庵で一服しながら、裸坊まつりと故郷・防府への想いを語り合った。
 「昭和30年頃までは、防府は県下屈指の商業都市でした。その防府の街は元来、天神様を中心に発展してきたわけですね。さらにさかのぼれば、防府には周防の国府が置かれていたために菅原道真も立ち寄ったわけです」と、脇氏。
 防府天満宮が福岡の太宰府、京都の北野と並ぶ日本三天神に数え上げられているのは、全国に約12,000社ある菅原道真を祀った神社の中で最古の社であるため。平安時代、右大臣の重責にあった道真は、延喜元年(901)、左大臣藤原時平の中傷によって大宰府に左遷となり、その下向途中に防府に立ち寄った。菅原氏の祖先は土師氏といい、当時のこの地の役人であった土師氏と同族であったことから立ち寄ったといわれているが、脇氏は「道真が防府に寄ったのは、当時の国司の多治有友(※注2)が道真の門人であったからでしょう」という。

 社伝によれば、失意の道真は、この地で祖先を同じくする土師信貞(※注2)から熱いもてなしを受けた。酒垂山(現・天神山)に登った道真はその景色を深く愛で、
「身は筑紫にて果つるとも、魂魄は必ずこの地に帰り来らん」と感激したという。 2年後の延喜3年(903)、勝間の浦に神光が現れ、酒垂山に瑞雲がたなびいたため国司が道真公の異変を予感し、筑紫に使いをやったところ、道真はまさにその日に亡くなっていた。国司は早速館に道真の霊を祀り、翌延喜4年(904)に松崎の地に宝殿を建て、松崎の社と号した。これが松崎天満宮(昭和28年に防府天満宮と改称)の創建とされている。
 左遷された道真を温かくもてなし、没後はいち早くその霊を祀る社を建てたこの地には、体制への反骨精神が息づいていたのだろうか。そして、その気風は時代を越えて脈々と受け継がれ、裸坊まつりのパワーへとつながったのかもしれない。エネルギーを秘めた歴史を受け継いできた街・防府…。
 「阿弥陀寺にある国宝の鉄宝塔は鎌倉初期に作られたものですが、土師氏の名前が刻まれており、道真が防府に立ち寄った頃にも土師氏が勢力を振っていたようです。国府が置かれ、中央の文化が移入されやすい条件下にあり、また県の中央に位置するという地理的条件にも恵まれた防府は、文化的にも商業的にも栄えていましたから、それぞれの時代の文化遺産が市内に点在しています。近代になって作られた毛利氏庭園・毛利博物館にある雪舟の『四季山水図巻』も国宝に指定されており、どの教科書にも出ているものです」と脇氏。
 「そういう歴史のある街が故郷だということは私自身、幸せなことだと思いますね」と、鈴木氏の口調もしみじみとしてきた。道真ならずとも、魂は必ず帰りたくなる街、というべきか。
 「防府の街は現在、魅力が拡散している感じですが、かつては広島から裸坊まつりのために特別列車が運行された時期もありました。祭りの力の大きさを感じますね。歴史を見ていると、祭りというものは時代に合わせて変わっている。ワッショイ、ワッショイと参加して心がワクワクする裸坊の魅力はそのまま伝えながら、一方では時代に合致した新しい工夫も取り入れていくべきですね。実は上天神街アーケードも山口県で最初に作られたアーケードでしたし、防府は元来、進取の気風に恵まれた街のはずなんですよね」
 郷土への温情に満ちた脇氏の言葉は、いにしえからの繁栄の上に立つ防府の今と未来への興味をかき立ててくれる。

※注2 多治有友(たじありとも)、土師信貞(はじのぶさだ)
 当時の国司は、多治有友であったという説と、土師信貞であったという説がある。

脇 正典氏写真

脇 正 典(わき まさのり)

学校法人脇学園松崎幼稚園理事長・園長、地域史研究家。
昭和20年(1945)、防府市生まれ。九州大学大学院修士過程修了(国史学)。防府市史編さん委員、山口県史近世部会専門委員として研究、執筆活動を行っている。
防府市幼稚園連盟会長、防府ユネスコ協会会長、防府市史談会会長、防府・モンロー国際交流市民の会会長。

街づくりの足音

 天満宮を歴史ある街・防府の中心ととらえた地域活性化の動きは現在、少しずつ広がりを見せている。
 平成4年に防府青年会議所のOB10人が発足させた「天満宮をとてもよくする会(通称・天とて会)」による活動はその先駆けといえよう。天とて会は発足後、毎年8月3、4、5日の天満宮・御誕辰祭(※注3)の夜、大石段に2,300本ものろうそくを立てる「万灯の夕べ」を開催し、防府の夏の風物詩として定着させてきた。天とて会は、参道脇の土産物店・天とて屋のオープンや、天満宮の石段を駆け上がる競技「インターナショナル大石段早駆け競争」、巨大茶碗を使った茶会なども開催し、天満宮を訪れる人々への新たな楽しみの提供に努めている。

※注3 御誕辰祭(ごたんしんさい)
 菅原道真公の誕生日を記念し、奉納する祭り。毎年8月3、4、5日に開催され、学童らによる文武行事の奉納や花火が行われる。

写真

万灯の夕べ
天満宮大石段が2,300本ものろうそくに照らされる。毎年8月3、4、5日の御誕辰祭の夕刻に、天とて会が開催している。


写真 防府天満宮境内に平成14年に地元有志により建立された歌碑の前で、鈴木宏明宮司と。歌碑には、平成10年に日本レコード大賞第1回 吉田正賞を受賞した鈴木淳氏作曲の「浮雲」(作詞は夫人の悠木圭子さん)の歌詞と楽譜がそれぞれ夫妻の直筆で刻まれている。
   
天満宮と絵馬写真
防府天満宮は学業の神様として親しまれている菅原道真を祀る神社。年間を通して多くの受験生が参拝に訪れ、合格祈願の絵馬を奉納する。

 また、防府天満宮と駅通り商店街を結ぶ天神商店街、銀座商店街は、平成15年末からは年末年始にも店を開け、毎年県下最高といわれる多くの初詣で客を歓迎する方針だ。銀座商店街では、山口短期大学の学生たちが毎週1回野菜市を、防府商業高校の生徒たちが毎年2学期にはホットショップを開催している。
 「商店街のホームページも高校生が制作していますし、10月の防商文化祭は、今年はこのアーケードを会場にして開催されます」と天神町銀座商店街振興組合理事長の坂本恵次氏。
 「それはユニークな試みですね。僕も高校時代はこの商店街を歩くのが楽しみだったけど、若者たちのフレッシュな発想と活動が今後の発展にどう生かされていくのか楽しみですね」と応える鈴木氏の声も弾むようだった。

写真
防商ホットショップ
商店街の活性化について語る坂本氏。
 

 銀座商店街の中心部には防府市観光情報館「コア銀座」が平成14年4月に、さらに通りの南端には旧山口銀行行舎を活用して大きな多目的スペースを備えた「天神ピア」が15年2月にオープン。それぞれ市内観光や街づくり活動の拠点として市民に気軽に利用されている。
 「防府の街づくりへのいろいろなチャレンジの足音が聞こえるようだね」と鈴木氏。
 今はまだプロローグのその音は、いつの日か、大きなうねりとなって防府をわかせるに違いない。
 何しろ防府は、裸坊まつり千年の街なのだから。


インフォメーション

天神ピア

天神ピア写真

 まちづくり活動に取り組む市民団体やボランティア活動などの活動・発表の場と
して利用できる「まちと市民のふれあいスペース」。使用料は無料。1階のフロアーには、イベントにも使える多目的展示スペース、憩いと交流の場のサロンスペース、会議・作業に利用できるワークスペース、情報コーナーなどがある。
問い合わせ
/まちづくり防府
 〒747―0034 防府市天神1-6-37
 TEL 0835-22-4930
 FAX 0835-22-4970
開 館 時 間
 午前10 時 〜午後9時(日曜、祝日は午後6時まで)
 休 館 日/火曜日

防府市観光情報館「コア銀座」

コア銀座写真

観光情報はじめ各種情報の受・発信基地及び観光客と市民の交流の場。1階では、防府市の観光情報を無料でインターネット検索ができ、交流・憩いのコーナーや瀬戸内国際観光テーマ地区紹介コーナーも設置。2階インターネットコーナーでは30分100円でインターネットを使用できる。

 〒747―0034 防府市天神1-11-1
 TEL 0835-23-0140

 開 館 時 間/午前10 時 〜午後6時
 休 館 日/無休


防府市

阿弥陀寺 周防国分寺
1 3
毛利氏庭園
2

周防国の国府であった防府市には多くの歴史遺産が残されている。
1「阿弥陀寺(あみだじ)」は、後白河法皇のために重源上人(ちょうげんしょうにん)が建立した名刹。
2「毛利氏庭園(もうりしていえん)・毛利博物館」は旧藩主毛利氏の邸宅。回遊式庭園も美しく、邸内の毛利博物館には国宝などを所蔵している。
3 「周防国分寺(すおうこくぶんじ)」は聖武天皇の勅願で建てられた国分寺のひとつ。標高631mの4「大平山」山頂へはロープウェイで。
5「山頭火の小径(さんとうかのこみち)」は漂泊の俳人・種田山頭火(たねださんとうか)が幼少期に歩いた道。
6「青少年科学館ソラール」では太陽の黒点が観察できる。

大平山ロープウェイ

山頭火の小径

5
青少年科学館ソラール
4 6

地図

観光の問い合わせ
●防府市観光課 0835-25-2148
http://www.city.hofu.yamaguchi.jp/

参照サイト

山口県広報広聴課課


〒753-8501
山口県山口市滝町1-1
TEL 083-933-2566
FAX 083-933-2598
E-mail
a11000@pref.yamaguchi.lg.jp
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