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海鳴りネットワーク・山口県水産業の概要
1 概況
山口県は、本州の最西端に位置し、三方が日本海、響灘及び瀬戸内海の3つの海に開けている。海岸線の総延長は、全国第6位の1,503kmに達し、屈曲に富んでいることから、漁港整備、水産資源の増養殖のための自然条件に恵まれ、古くから漁業が盛んである。
日本海側は、海岸線は一般に単調で急深であるが、中部海域は、湾入、島しょに富み、天然礁が数多く点在しており、また、大陸棚が遠く対馬、朝鮮半島まで達している。このため、カサゴ、イサキ、アワビ等の定着性魚貝類を対象とする釣、はえ縄、採貝漁業等のほか、イワシ、アジ、サバ、イカ等の回遊性魚種を対象とする、まき網、敷網漁業(棒受網、すくい網漁業)等が営まれている。
また、日本海で操業するフグ・アマダイはえ縄、下関漁港を基地とする沖合底びき網、大中型まき網漁業などの沖合漁業や、ブリ、マダイ、ヒラメ等の魚類養殖業、ワカメ養殖業等が営まれている。
瀬戸内海側は、潮位差が大きく、西部海域を中心に広大な干潟を形成している。
このため、西部海域では、エビ類等を対象とした小型底びき網漁業やアサリ、タイラギ等を対象とした採貝、潜水器漁業等とともに、ノリ養殖が営まれている。
一方、中東部海域には数多くの島々が点在し、岩礁域に富んでおり、マダイ、クロダイ、フグ、カレイ、タコ、ナマコ等の各種魚介藻類の繁殖に適しているため、小型底びき網、建網、釣、はえ縄等を主体とした漁業が営まれている。
内水面漁業は、13河川に漁業権が免許され、アユ、ウナギ、モクズガニ、マス等の漁業が行われている。
2 漁業構造
(1)漁業経営体について
平成17年の漁業経営体数は4,719経営体で、前年の5,205経営体に比べ486経営体(9.3%)の減少となった。また、内訳を見ると、日本海が2,394経営体、瀬戸内海が2,325経営体となっているほか、そのほとんどは零細な個人経営で、全体の97.7%を占めている。
区分 |
合計(構成比%) |
日本海 |
瀬戸内海 |
---|---|---|---|
合計 |
4,719体(100.0%) |
2,394体 |
2,325体 |
個人経営 |
4,611体(97.7%) |
2,313体 |
2,298体 |
団体経営 |
108体(2.3%) |
81体 |
27体 |
農林水産統計年報
(2)漁業就業者について
平成15年の漁業就業者数は8,084人で、平成10年に比べ1,695人減少した。また、男性の漁業就業者のうち、60歳以上の占める割合は60.0%と高く、年々高齢化が進行している。
区分 |
昭和58年 |
昭和63年 |
平成5年 |
平成10年 |
平成15年 |
---|---|---|---|---|---|
男 |
14,488人 |
12,429人 |
9,783人 |
8,033人 |
6,815人 |
60歳以上 |
3,177人 |
3,519人 |
4,179人 |
4,394人 |
4,056人 |
40~59歳 |
7,808人 |
6,337人 |
4,379人 |
2,892人 |
2,157人 |
40歳未満 |
3,563人 |
2,573人 |
1,225人 |
747人 |
602人 |
女 |
3,723人 |
3,049人 |
2,233人 |
1,746人 |
1,269人 |
合計 |
18,211人 |
15,478人 |
12,016人 |
9,779人 |
8,084人 |
3 生産動向
海面漁業・養殖業生産量は、平成2年までは20万トン台を維持してきたものの、平成4年を最後に遠洋漁業が撤退したことや沖合漁業の不振等により、生産量は急速に減少し、平成17年には54,140トンとなった(対前年比324トン(0.6%)減少)。また、漁業生産額も同様に減少しており、平成17年は約251億円で、前年に比べ15億円の減となった。
区分 |
昭和63年 |
平成5年 |
平成15年 |
平成16年 |
平成17年 |
|
---|---|---|---|---|---|---|
海面 |
漁業生産量 |
244,562トン |
135,544トン |
60,122トン |
54,464トン |
54,140トン |
遠洋漁業 |
10,918トン |
65トン |
- |
- |
- |
|
沖合漁業 |
159,765トン |
81,550トン |
28,403トン |
26,726トン |
27,226トン |
|
沿岸漁業 |
56,045トン |
40,776トン |
24,724トン |
22,555トン |
22,479トン |
|
養殖業 |
17,834トン |
13,135トン |
6,966トン |
5,183トン |
4,434トン |
|
漁業生産額 |
721億円 |
537億円 |
276億円 |
266億円 |
251億円 |
山口県漁業の動き
区分 |
まき網 |
沖合 |
敷網 |
小型機 |
船びき網 |
のり類 |
刺網 |
沿岸 |
その他 |
採貝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平成16年 |
9,294トン |
8,006トン |
5,510トン |
7,553トン |
3,038トン |
4,357トン |
3,714トン |
1,657トン |
2,527トン |
1,405トン |
平成17年 |
9,844トン |
7,860トン |
6,557トン |
6,327トン |
4,232トン |
3,622トン |
3,413トン |
2,280トン |
2,057トン |
1,232トン |
山口県漁業の動き
区分 |
カタクチ |
マアジ |
サバ類 |
ケンサ |
ウルメ |
カレイ |
エビ |
ブリ |
キダイ |
マダイ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平成16年 |
5,149トン |
6,480トン |
3,370トン |
2,098トン |
1,232トン |
2,249トン |
1,283トン |
1,566トン |
1,344トン |
1,091トン |
平成17年 |
6,260トン |
5,654トン |
4,412トン |
3,005トン |
2,125トン |
1,902トン |
1,397トン |
1,227トン |
1,205トン |
1,077トン |
山口県漁業の動き
4 流通・加工
区分 |
平成5年 |
平成10年 |
平成15年 |
平成16年 |
平成17年 |
---|---|---|---|---|---|
ねり製品 |
49,674トン |
63,455トン |
61,408トン |
62,483トン |
62,260トン |
生鮮冷凍水産物 |
27,768トン |
20,934トン |
10,576トン |
9,791トン |
9,747トン |
冷凍食品 |
5,741トン |
6,861トン |
7,381トン |
6,281トン |
8,780トン |
素干・塩干・煮干 |
10,449トン |
8,347トン |
6,009トン |
5,575トン |
5,712トン |
その他 |
20,376トン |
21,290トン |
13,255トン |
13,085トン |
12,778トン |
合計 |
114,008トン |
120,887トン |
98,629トン |
97,215トン |
99,277トン |
農林水産統計年報
(1)水産物の流通について
県内には、産地市場・消費地市場を合わせて32の水産物卸売市場があり、このうち地方卸売市場は18、その他の市場が14となっている(平成19年4月1日現在)。平成17年度の本県における産地水揚量は、漁港港勢調査によると約54千トンで、このうち約63%が県内消費に回り、残る37%が県外に搬送されている。また、産地水揚の大部分は、下関、長門及び萩の日本海側主要産地市場で扱われている。
(2)水産加工について
水産加工は従来から盛んに行われており、ウニ・フグなどの加工品やかまぼこ等は全国的な知名度も高く、本県を代表する特産品にもなっている。平成17年の水産加工品の生産量は約99千トンで、前年に比べ約2,000トン増加した。これを主な品目別に見ると、冷凍食品は、生産体制の見直しやフライ等需要が拡大している商材加工への生産シフトの影響により大幅に増加、素干品・塩干品・煮干品は増加、かまぼこ等のねり製品及び生鮮冷凍水産物は前年並みとなった。
5 その他
(1)漁港について
県内の漁港数は97港で、全国で9番目の順位となっている。これら漁港の内訳を見ると、第1種漁港が57港、第2種漁港が34港、特定第3種を含めた第3種漁港が3港、第4種漁港が3港となっている。海域別では、日本海側が43港、瀬戸内海側が54港であるが、日本海側には大規模漁港が、瀬戸内海側には小規模な漁港が集中している。
第1種 |
第2種 |
第3種 |
特定第3種 |
第4種 |
合計 |
---|---|---|---|---|---|
57港 |
34港 |
2港 |
1港 |
3港 |
97港 |
(2)漁業協同組合について
漁業協同組合は、13の沿海漁協と17の内水面漁協がある(内水面漁協数には、地区が山口・広島にまたがる芸防漁協を含む)。これらの漁協のうち、平成18年9月に県漁連及び県信漁連から事業譲渡を受けた山口県漁協以外の漁協は全般的に規模が小さく、経営基盤が脆弱な組合が多い。
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