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平成30年2月県議会定例会知事議案説明要旨
はじめに
本日は、平成30年度当初予算その他の諸案件につきまして、御審議をお願いするため、お集まりをいただき、厚くお礼を申し上げます。
今定例会は、知事選挙後、初の定例県議会でありますので、議案の説明に先立ち、私の今後の県政運営に関する所信を申し述べさせていただき、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと思います。
私は、この度の知事選挙におきまして、多くの県民の皆様から温かい御支援をいただき、二期目の県政を担当させていただくことになりました。大変光栄なことであり、心より感謝申し上げます。
本日、知事として、伝統ある山口県議会の議場に再び立ち、改めて、これから4年間の山口県政を担う、その責任の重さに身が引き締まる思いです。県民の皆様から寄せられた御期待をしっかりと受け止め、それにお応えすべく、これからの県政運営に全力で取り組んでまいります。
さて、本格的な人口減少社会に突入している我が国では、少子高齢化の進展、東京一極集中の傾向が依然として続いており、特に、地方においては、生産年齢人口が大幅に減少するなど、地域の活力が失われてきています。
このため、私は、4年前の知事就任以降、県政運営の指針としてチャレンジプランを策定し、元気な産業や活力ある地域の中で、県民誰もがはつらつと暮らせる「活力みなぎる山口県」の実現を目指し、全力で取り組んでまいりました。
この結果、123の成果目標のうち、8割以上が達成見込みとなるとともに、目に見える成果も挙がってきています。
一方で、本県最大の課題である人口減少問題、とりわけ社会減の流れには依然として歯止めがかかっていないなど、将来にわたって元気な山口県を創っていくためには、解決すべき多くの困難な課題が残されています。
県政を取り巻く環境は厳しいものがありますが、この山口県には、豊かな自然、誇るべき歴史や文化、すぐれた農林水産資源、ものづくりを中心とする力強い産業集積など、本県ならではの多くの強みと成長への可能性があります。
こうした強みや特性を活かした取組をさらに加速し、本県の持つ潜在力を余すところなく引き出し、大きく伸ばしていく。私は、このことこそが、「活力みなぎる山口県」を創っていくために目指すべき道と考えています。
今年は、明治維新から150年目の節目の年です。新たな150年のスタートに立ち、私は、明治維新を成し遂げた先人達のチャレンジ精神を手本としながら、これまで進めてきた県づくりの成果の上に立ち、今の困難を突破し、新しい時代を切り拓く、この山口から新たな維新を起こす、その決意で、「3つの維新」に果敢に挑戦してまいります。
1つ目は「産業維新」です。
山口県の強みを最大限に活かし、活力の源となる産業力を大きく伸ばしていきます。瀬戸内産業の再生・強化、医療・環境等の成長分野での事業創出、中堅・中小企業や農林水産業の成長支援など、地域産業全体の底上げを図ってまいります。
2つ目は「大交流維新」です。
山口県の潜在力を活かし、人やモノの流れを飛躍的に拡大し、山口県を活性化します。観光力の強化、農林水産物等の海外展開、山口ゆめ花博や東京オリンピック・パラリンピック等を通じた魅力発信と大交流の実現を図ってまいります。
3つ目は「生活維新」です。
県民誰もが、今を安心して暮らし、将来に希望をもって暮らせる山口県の基盤を築いていきます。防災・減災対策の強化、医療・介護提供体制の充実、結婚から子育てまでの切れ目のない支援、地域教育力日本一の推進を図ってまいります。
さらに、これらを支える強固な行財政基盤を築いてまいります。
国においても、一億総活躍社会の実現に向け、「人づくり革命」、「生産性革命」による経済再生と地方創生の取組が進められており、今後の県政運営に当たっては、こうした国の政策ともしっかりと連携していかなければなりません。
私は、山口県の新しい時代を切り拓く「3つの維新」を必ずや成し遂げ、「活力みなぎる山口県」を実現するため、私自らが先頭に立ち、県民の皆様方と力を合わせ一丸となって、全身全霊で取り組んでまいる所存でありますので、議員各位並びに県民の皆様の、より一層の御理解と御協力をいただきますようお願い申し上げます。
平成30年度当初予算
それでは、平成30年度の当初予算編成について、御説明申し上げます。
まず、我が国経済は、緩やかに回復しており、先行きについても、雇用・所得環境の改善が続く中で、緩やかな回復が続くことが期待されています。
一方で、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要があるとされております。
こうした情勢の中、国においては、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本に、経済の好循環をより確かなものとし、持続的な経済成長を実現するため、昨年12月に取りまとめた「新しい経済政策パッケージ」に基づき、少子高齢化という最大の壁に立ち向かうとともに、基礎的財政収支の黒字化という目標は堅持し、これまでの経済・財政一体改革の取組を精査した上で、その達成時期及び具体的な計画を示すとされています。
こうした考え方の下、国の平成30年度一般会計予算案は、現下の重要課題に予算を重点化するとともに、「経済・財政再生計画」における集中改革期間の最終年度として、財政健全化への着実な取組を進め、経済再生と財政健全化の両立を実現することを基本に編成され、その総額は、前年度に比べ、0.3パーセント増の97兆7,128億円となっています。
次に、平成30年度の地方財政については、地方税が増収となる中、可能な手段を最大限活用しながら地方交付税総額を確保することで、臨時財政対策債の発行を抑制し、一般財源総額については、前年度とほぼ同水準が確保されたところです。
また、公共施設等の老朽化対策や社会保障関係の地方単独事業費の増に対応した歳出を確保した上で、歳出特別枠が廃止されたほか、「まち・ひと・しごと創生事業費」については、引き続き、前年度と同額の1兆円が確保されるなど、地方の重点課題に要する経費について拡充が図られ、その結果、地方財政計画の規模は、前年度に比べ、0.3パーセント増の86兆8,973億円となっています。
こうした国・地方を取り巻く諸情勢の下、来年度当初予算は、「活力みなぎる山口県」の実現に向け、私が挑戦する「3つの維新」を具体化する最初の予算となります。
明治150年を契機として、来年度開催する「山口ゆめ花博」などを通じて、県づくりの主役である県民をはじめ、県全体の活力を高めるとともに、これまでの県づくりの成果を活かし、最重要課題である人口減少問題をはじめ、様々な課題の克服に向け、限られた財源の中、全事業の見直しにより捻出した財源も活用しながら、新たな時代を切り拓く「3つの維新」への挑戦を力強く始動していく必要があります。
一方で、人口減少等により歳入が伸び悩む中、社会保障費の増大等によって、恒常的に歳出が歳入水準を上回る硬直化した財政構造を転換し、「3つの維新」への挑戦を支える、揺るぎない行財政基盤の確立に向けた道筋をつけるため、行財政構造改革の確実な具現化にも取り組んでいかなければなりません。
このため、私は、「明治150年の開花と未来への継承」、「新たな3つの維新の始動」、「財政健全化に向けた行財政構造改革の確実な具現化」の3つの柱を基本的な考え方として掲げ、「3つの維新への挑戦」と「財政健全化」の両立を図る観点から、予算編成に取り組み、来年度当初予算を、新たな県づくりを速やかに前に進めていくための「3つの維新発進予算」と位置づけたところです。
それでは、最初に、1つ目の柱である「明治150年の開花と未来への継承」について、御説明申し上げます。
平成30年は、明治改元から150年の節目の年に当たり、本県が明治維新や日本の近代化に重要な役割を果たしたことを振り返り、その精神に学び、明治150年を契機とした新たな県づくりを進めていく、そのスタートとなる重要な年です。
このため来年度、「明治維新胎動の地」である山口県への県民の誇りと愛着、国内外での本県の認知度を一層高め、未来に向けた県づくりにつなげていくため、明治150年プロジェクト「やまぐち未来維新」をさらに推進していきます。
まず、その中核イベントとして、本年9月に開催する「山口ゆめ花博」では、「山口から開花する、未来への種まき」をテーマに、県民や市町をはじめ、県内のあらゆる主体と一体となって、本県の未来に向かう活力を高めていきます。
併せて、バーチャルリアリティ技術を駆使し、維新を体感できる「維新体験館」など、来場される多くの方が楽しめるイベントの実施や、「明治150年記念式典」、「若者国際シンポジウム」等の様々な催しを通じて、山口県の新しい魅力と活力を国内外へ向けて、力強く発信していきます。
また、「幕末維新回廊」として、県内各地の博物館等が開催する明治150年関連企画展を結びつけ、楽しみながら県内を巡る全県的なイベントを展開します。
さらに、平成の薩長土肥連合の連携による幕末維新をテーマとした広域観光など、5つの中核プロジェクトによる明治維新150年を記念した観光キャンペーン「やまぐち幕末ISHIN祭」を展開し、「山口ゆめ花博」や「幕末維新回廊」等とも連携して、さらなる観光需要の拡大につなげるほか、県外メディアに対し、本県魅力情報の戦略的な売り込みを行います。
このほか、明治150年を契機として、先人たちの志と行動力に学び、未来を担う人材の育成を図るため、若者を対象とした「やまぐち未来維新塾」の開催や、大学と企業が連携した課題解決型の教育プログラムの実施に向けた環境整備を行います。
次に、2つ目の柱である、「新たな3つの維新の始動」について、御説明申し上げます。
これまでの県づくりの成果の上に立ち、人口減少問題をはじめ、選挙期間中に皆様から伺った県内企業の人手不足や厳しい中山間地域の実情など、県政が直面する課題を克服するため、本県の未来を切り拓く「3つの維新」への挑戦に向けた取組を速やかに始動します。
最初に、「産業維新」についてです。
瀬戸内の産業集積をはじめとする、本県の強みを最大限に活かし、活力の源となる産業力を大きく伸ばしていきます。
具体的には、まず、「産業力の強化と成長分野でのイノベーションの創出」として、本県の強みである化学や製薬の産業集積と、これまで培った医療関連、環境・エネルギー分野での産学公金連携による取組を基盤として、新たにバイオ関連産業の創出に向けた推進体制を整備するほか、水素先進県の実現に向け、市町等による再生可能エネルギー活用型水素ステーションの導入促進に向けた支援制度を創設します。
また、国際バルク戦略港湾や、山陰道等の幹線道路網など、産業を支える基盤の整備促進を図ります。
次に、「中堅・中小企業の成長・安定・創業支援」として、県経済を牽引する地域中核企業の創出や成長を支援するため、新たに官民連携による「地域中核企業創出・支援カンファレンスチーム」を設置するとともに、宇宙利用産業の創出に向け、産業技術センターに「宇宙データ利用推進センター」を新設し、JAXAや山口大学との連携により、県内企業による衛星データを活用した研究開発・事業化を支援します。
また、企業の事業拡大と地域の安定的な雇用の創出・拡大を図るため、新たに、やまぐち産業振興財団に「生産性向上・人材創造拠点」を設置し、人材創造と企業活動の両面から生産性向上の取組を推進するほか、IoTビジネスプランナーの配置により、IoT技術を活用した事業創出を促進します。
さらに、深刻化している県内中小企業等の人材確保を図るため、「若者就職支援センター」にシニア・女性向けコーナーを新設し、8月から「山口しごとセンター」に改組するなど、女性の就業促進等に向けた支援体制を強化するとともに、県内企業の魅力発信や県内外の大学生等を対象とした県内企業でのインターンシップの取組を拡充することにより、若者の県内就職・定着を促進します。
次に、「強い農林水産業の育成」として、市町が選定したブランド品目の産地計画に基づき、新規就業者の受入や生産強化に必要な機械・施設整備等を支援し、魅力ある産地形成と新規就業者の確保を促進します。
また、国の米政策改革に対応し、米の事前契約拡大に向けた大規模流通試験や地域間連携による統一商品づくりなど、米価変動の影響が少ない安定した生産供給体制を構築するとともに、消費者の多様なニーズに応える高収益作物への生産転換を図るための体制整備を促進することにより、農業者の所得向上を図ります。
さらに、女性農林漁業者向けの経営講座・販路開拓支援による経営参画者の育成やネットワークの構築により、農林水産分野における女性の活躍を促進します。
このほか、畜産分野では、全国初となる「後継牛バンク」の立ち上げ支援等により、乳用後継牛の安定確保体制を構築するとともに、全国和牛能力共進会での3位入賞を踏まえ、「やまぐち和牛」の高品質化とブランド力の向上を図ります。
また、水産分野では、水産大学校の専門的知見を活用し、中核的漁業経営体による収益性の高い取組や新たな基幹漁業の立ち上げ支援等に取り組みます。
次に、「3つの維新」の2つ目、「大交流維新」についてです。
本県の潜在力を活かし、人やモノの流れを飛躍的に拡大して、山口県を活性化する大交流を実現していきます。
具体的には、まず、「国内外との交流の拡大」として、明治維新150年を契機とした観光需要の拡大を図るとともに、韓国との国際定期便の定着・拡大や国際チャーター便の運航拡大など、山口宇部空港の国際交流拠点化を推進します。
また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、キャンプ地誘致活動に加え、新たにキャンプ国の県内周遊への支援を行うほか、スペイン・ナバラ州やロシア・クラスノダール地方など、海外自治体との国際交流を推進します。
次に、「国内外への売り込みの強化」として、昨年10月に設立された「地域商社やまぐち株式会社」との連携による首都圏等への売り込みを強化するほか、「ぶちうま!維新」による県産農林水産物の需要拡大に向けた取組を支援し、大都市圏への販路拡大や海外への輸出拡大に向けた取組を促進します。
また、本県の強みを活かした水産インフラ輸出構想を推進するため、ベトナムへの水産関連技術・製品等の輸出を目指す県内企業の取組を支援するほか、やまぐち産業振興財団に海外コーディネーターを配置し、中小企業の海外展開を総合的に支援します。
次に、「やまぐちへの人の還流・移住の促進」として、本県への移住関心層を移住につなげる連続講座等を大都市圏で開催するとともに、「やまぐち暮らし東京支援センター」の移住相談員を増員し、首都圏での移住希望者に対する相談体制を強化します。
また、林業分野では、東京・大阪での就職相談会の開催から県内事業体視察や就業体験までを一体的に実施し、県外の林業就業希望者の本県への移住を促進します。
次に、「3つの維新」の3つ目、「生活維新」についてです。
県民誰もが、希望を持って、いつまでも安心して暮らし続けることのできる山口県の基盤を築くため、「希望を叶える暮らしづくり」、「人材の育成と活躍への支援」、「安心・安全で活力ある地域づくり」の3つの視点から、新たな施策を展開していきます。
最初に、1点目の「希望を叶える暮らしづくり」についてです。
まず、県内153箇所にある地域子育て支援拠点を、妊娠・出産等の相談にも対応できる「まちかどネウボラ」として位置付け、より身近な場所で、妊娠期から子育て期までの相談ができる支援体制を構築する「やまぐち版ネウボラ」の取組を全県で展開します。
また、中学校・高等学校に、定期的に乳幼児親子が集う「子育て広場」を開設し、家庭や子どもを持つことの楽しさや素晴らしさを身近に感じる機会を創出するとともに、病児保育施設の整備や県内全市町参加による広域利用協定の締結を推進し、子育てと仕事を両立できる環境づくりを進めます。
さらに、働き方改革の取組を一層推進するため、企業に身近な専門家を新たに民間アドバイザーとして養成し、相談支援体制を強化するほか、働き方改革取組支援助成金を創設します。
このほか、再生可能エネルギーの導入に向け、新たに蓄電池導入に対する助成制度を創設し、快適な暮らしづくりを推進します。
次に、2点目の「人材の育成と活躍への支援」についてです。
まず、コミュニティスクールでの取組を更に活性化するため、地域連携教育エキスパートやアドバイザー等を配置し、「地域教育力日本一」の推進体制を強化するほか、学校業務支援員や部活動指導員を新たに導入し、教員の負担軽減による教育環境の充実を図るなど、新時代を創造する子どもたちの育成を進めます。
また、女性が働きやすい職場環境整備への補助制度の創設や、「男女共同参画手帳」の配布により男性の家事・育児への参画意識を醸成するなど、女性の活躍促進に向けた取組を充実させるとともに、「山口ゆめ花博」を契機として県民活動を活発化させ、将来に継続していく取組を推進し、誰もが活躍できる地域社会を実現していきます。
次に、3点目の「安心・安全で活力ある地域づくり」についてです。
まず、大規模災害発生時における被災者の迅速な生活再建を実現するため、市町と連携して統一的な支援システムを導入するとともに、流木災害の危険度や過去の浸水被害の範囲など、災害危険箇所を事前に調査・把握するなど、県民の安心・安全の確保を図ります。
また、県民の健康寿命の延伸を図るため、本県独自の健康アプリ開発による健康づくりの「見える化・日常化」と県民総参加による健康づくりを推進します。
併せて、肝がん患者等の医療費助成制度を新設し、多額の医療費負担を軽減するとともに、がん検診の受診率向上のため、協会けんぽと連携した受診勧奨を実施するほか、新専門医制度に対応した若手医師確保対策を重点的に推進するなど、保健・医療の充実を図ります。
さらに、中山間地域の厳しい現状を踏まえ、集落機能の低下が著しい地域を対象として、地域の維持・活性化に向け、支援員の配置と取組への助成による集中的な支援を新たに実施するほか、市町等が取り組む元気生活圏推進方針に基づく地域づくり活動をソフト・ハード両面から支援し、中山間地域の活力の向上に取り組みます。
このほか、若者の県内定着に向けた特色ある学校づくりの加速と学校現場での「働き方改革」の推進が図られるよう、運営費補助金の単価を引き上げるなど、私学助成の充実を図ります。
さらに、拡充措置された再編関連特別地域整備事業については、交付金や基金等を活用し、ハード・ソフト両面から、岩国・和木・大島地域の安心・安全対策や地域振興策の一層の推進を図ります。
最後に、3つ目の柱である、「財政健全化に向けた行財政構造改革の確実な具現化」について、御説明申し上げます。
私が目指す「活力みなぎる山口県」を実現するためには、「3つの維新」への挑戦による新たな県づくりの取組を支える揺るぎない行財政基盤を確立することが何より重要です。
このため、収支均衡した持続的な財政構造への転換に向けた道筋をつけるため、予算編成過程を通じて、「行財政改革統括本部」で取りまとめた改革の方向性に沿って、徹底した歳出構造改革や財源確保対策の確実な具現化に取り組んできたところです。
まず、平成29年度当初予算時点で1,350億円と見込まれた改革期間中の財源不足額は、平成30年度地方財政対策等を踏まえ、再試算した結果、1,292億円を見込んでいます。
この財源不足に対して、総人件費の縮減や全事業の見直し等の歳出構造改革や臨時的・集中的な財源確保対策、執行段階での節減等を着実に実行することで、約1,302億円の効果額を確保し、平成33年度までの改革期間中における財源不足額の解消に、一定の目途が立ったところです。
さらに、改革期間中において、徹底した歳出構造改革を進め、本県の歳入水準に見合った歳出構造への転換を図るとともに、臨時的な財源確保対策を段階的に縮減することにより、平成34年度当初予算時点では、臨時的な財源確保対策に依存しない財政運営を実現する見通しも立てることができたと考えています。
また、予算編成方針時点で約290億円あった来年度の財源不足額は、行財政構造改革の取組等により約30億円まで改善し、最終的に、財源調整用基金の取崩しで対応した結果、来年度末の基金残高の見込みは約78億円となりました。
依然として基金残高は100億円を下回るものの、基金取崩額は、今年度当初予算より減少し、基金残高も増加となるなど、これまで進めてきた行財政構造改革の効果も現れてきており、改革期間中に、基金残高を100億円以上に回復できる見通しとなっています。
また、財政の硬直化の要因となる県債についても、引き続き、プライマリーバランスに着目した財政運営に努めた結果、一般分の県債残高は、16年連続の減少を達成できる見通しとなり、県債全体でも、5年連続した減少が見込まれるところです。
私としては、今回の予算編成を通じ、収支均衡した持続可能な財政構造への転換に一定の道筋をつけることができたと考えていますが、これを実現するには、今後、改革の着実な実行が必要不可欠です。
このため、これからの地方財政対策等の動向も踏まえながら、行財政改革統括本部の適切な進行管理の下、引き続き全庁を挙げた改革に取り組み、活力ある県づくりを支える自立・安定した財政基盤の確立に向け、しっかりと取り組んでまいります。
これらの結果、議案第1号に係る一般会計の総額は、前年度当初予算に比べ、1.2パーセント減の6,729億8,300万円となったところです。
歳入予算については、まず、県税収入について、海外経済の改善や国内経済の好調を背景とした企業収益の改善により法人二税の増収等が見込まれることから、前年度当初予算に比べ、0.4パーセント増の1,757億7,900万円を計上しています。
また、地方財政対策に伴い、地方交付税については、前年度当初予算に比べ、0.4パーセント増の1,683億5,400万円を見込むとともに、県債については、特別分である臨時財政対策債の減少等により、前年度当初予算に比べ、2.6パーセント減の826億3,600万円を計上しています。
以上が、議案第1号に係る平成30年度一般会計予算の概要です。
次に、議案第2号から議案第17号までは、特別会計及び企業会計に関するものであり、その予算規模は、母子父子寡婦福祉資金特別会計ほか15会計を合わせ、総額3,181億8,500万円となっています。
条例、事件議決
議案第18号から議案第55号までは、条例の制定、改正及び廃止に関するものです。
その主なものを御説明しますと、
議案第18号は、介護保険法の改正により、介護医療院が創設されることに伴い、介護医療院の人員等の基準を定めるため、
議案第19号は、農林事務所と水産事務所を統合し、農林水産事務所を新設するため、
それぞれ条例を制定するものです。
議案第20号は、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の施行に伴い、改正及び廃止を要する関係条例について、
議案第21号は、都市緑化法等の一部を改正する法律の施行に伴い、改正を要する関係条例について、
それぞれ一括して整備等を行うものです。
議案第22号から議案第55号までは、いずれも条例の一部を改正するものであり、山口県若者就職支援センターの業務及び名称を変更するため、また、県西部多部制定時制高校の整備に伴い、県立下関双葉高校を新設するなどのため、それぞれ関係条例の一部を改正するものです。
議案第56号から議案第65号までは、工事請負契約の締結等に係る事件議決に関するものであり、それぞれ県議会の議決をお願いするものです。
議案第66号は、人事案件に関するものであり、教育長の任命について、県議会の同意をお願いするものです。
教育長 浅原司氏は、来る3月31日をもちまして、その任期が満了いたします。
つきましては、後任の教育長の任命を要するのですが、私としては、浅原司氏の再任をお願いすることとし、ここにお諮りいたします。
なお、同氏の御経歴は、お手元に配布をいたしました履歴書のとおりです。
平成29年度補正予算等
議案第67号から議案第82号までは、平成29年度の各会計に係る補正予算に関するものです。
議案第67号は、一般会計補正予算です。
今回の補正予算は、国の補正予算に対応し、生産性革命の推進に係る事業や補助・直轄公共事業の追加実施を行うほか、県税収入等の歳入財源の確定見込み及び各事業の最終見込みにより、所要の補正を行うものです。
まず、歳入予算についてですが、県税収入について、企業収益の改善により法人二税の増収が見込まれるものの、輸入額の減少により地方消費税の減収が見込まれること等から、1億2,900万円の減額補正を行っています。
また、地方交付税については、7月算定等の結果、16億500万円を増額するとともに、その他、国庫支出金及び県債等については、歳出予算との関連など、確定見込みにより、それぞれ所要の補正を行っています。
次に、歳出予算については、まず、国の補正予算関連経費として、TPP等への対策や防災・減災対策を中心とした補助・直轄公共事業55億4,800万円を追加するとともに、畜産経営体の収益力強化に資する施設整備や介護人材確保のための貸付金原資の増額を行うなど、合わせて69億1,700万円を計上しています。
このほか、災害復旧費における最終整理、その他事業の最終見込みによる所要の補正を行うとともに、年度間の財源調整を図るため、地方財政法の規定に基づき、平成28年度決算剰余金の一部を含め、財政調整基金に21億4,100万円を積み立てるほか、今後の県債の償還に備えるため、減債基金に16億5,000万円を積み立てることとしています。
以上の結果、議案第67号に係る一般会計補正予算の総額は、268億6,200万円の減額となり、補正後の予算額は、6,550億5,900万円となっています。
なお、今回の国の補正予算に対応し、補助公共事業において、工事の早期着手等を図るため、債務負担行為3億7,800万円の追加設定をしています。
また、建設事業等に係る繰越明許費については、国の補正予算への対応や用地補償交渉の遅延等により、11月補正予算での設定分と合わせ、305億9,100万円を予定しています。
議案第68号から議案第82号までは、特別会計及び企業会計に関するものであり、母子父子寡婦福祉資金特別会計ほか14会計について、いずれも最終整理による所要の補正を行うものです。
議案第83号は、平成29年度に県が行う建設事業に要する経費の最終確定に伴い、市町が負担すべき金額を変更することについて、県議会の議決をお願いするものです。
その他
この際、御報告申し上げます。
訴えの提起をすること、訴訟上の和解をすること、訴え提起前の和解をすること及び交通事故等による損害賠償の額を定めることについては、専決処分により、処理をいたしました。
また、地方独立行政法人山口県産業技術センターの常勤職員の数について、地方独立行政法人法の規定により、別添のとおり報告します。
以上、提出議案等について、その概要を御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議のほど、お願い申し上げます。