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CIRレポート・1102
CIRレポート 2月号
韓国のお風呂事情!
国際交流員 辛 裕美(韓国)
アンニョンハセヨ!
明けましておめでとうございます。今年は2月3日が「ソルナル(韓国の正月、日本の旧正月、中国の春節)」なので、私としては新年になったばっかりです。離ればなれになっている家族が集まってトックク(韓国のお雑煮)やおせち料理を食べて、伝統遊び(凧揚げやコマ回しなど)をしながら楽しく過ごします。お年玉の習慣もありますが、すでにお年玉をあげないといけない立場になった今は薄べったい自分の財布を確認して、ため息をつくばっかりです。
話が変わりますが、今年の冬は日本だけではなく韓国も極寒の日が続いています。日本の冬といえば、お風呂や温泉に浸かってポカポカになってからお布団に入り、気持ちよく眠るシーンが頭に浮かびますが、韓国の事情はちょっと違います。今回は韓国のお風呂事情について紹介します。
各家庭のお風呂
湯船がない?
韓国では自宅のお風呂に入る習慣があまりなく、平日はシャワーで済まして週末になると銭湯に行く人が多いです。
日本人とお風呂について話をすると入浴の習慣がない国でもないのになぜ毎日入らないのか、もしくはせっかく浴槽があるのになぜ入浴しないのか疑問に思う方もいらっしゃいます。しかし、日本で生活してみたところ、こういうお風呂文化または認識の違いは両国の住宅構造(主に防寒対策)などから生まれたと感じました。
冬の場合、韓国人は体を「洗う」ために入浴しますが、日本人は体を「温める」ために入浴することが多いです。韓国の家屋は、昔から「オンドル」という床暖房が敷かれてあったので、寝る前に体を温める必要がありませんでした。ですから、普段は簡単に汚れを落とす程度にして週末になったら、たまった汚れやアカを念入りに洗い流すようになりました。ところで、昔の日本家屋は暖房設備がほとんどなく厳しい寒さを凌いで、ぐっすり寝るためには温泉やお風呂に浸かり、体の芯まで温めることが大切だったと思われます。つまり、韓国は体の外側からの暖房、日本は体の内側か体自体が暖房になって冬を凌いできたということです。
銭湯、チムジルバン
アカスリ文化
韓国人にとって「入浴」という言葉は「銭湯に行ってアカスリする」と同義語だと言っても過言ではないです。体にたまったアカ、つまり老廃物や角質を専用のタオルで洗い流してからこそ入浴したような気がします。
銭湯の風景は日本とあまり変わりません。脱衣場で服を脱ぎ、みんなが裸になって大浴場に入りますが、日本人以外の共同浴場に馴れていない外国人は驚くこともしばしばあるようです。
ところで、浴場に足を一歩踏み入れると日本とは少し違う光景が広がります。静かに体を洗い流してお風呂に入り、温まったらまた簡単に体をすすぐ日本人とは違い、韓国人は何回も浴槽と洗い場を往復しながら忙しく動き回ります。お湯に浸かって十分に垢をふやかしたら洗い場に戻り、アカスリをします。体が冷えたらまたお湯に入ってから席に戻り、残った汚れなどを落とします。アカスリで全身を洗い流すことは、予想以上の重労働なので、家に帰る頃にはくたびれてしまいます。
韓国式サウナ
韓国ドラマなどでもたびたび登場する「チムジルバン」は韓国式サウナと理解したらいいです。古くから韓国には「オンドル文化」がありまして、暖かい(あるいは暑い)部屋で時間を過ごしたり、炭を取り出した後の暑い炭窯などで汗を流すことを楽しんでいました。これもアカスリと同様に、溜まっていた老廃物を排出することによってお肌だけじゃなく体の内側もキレイになる、美容法または健康法だと言えます。
しかし、汗を流すことが大好きな韓国人は伝統文化を現代のアトラクションとして蘇らせました。サウナを楽しみながら、仲間とゆっくり過ごせる憩いの場として変わり始めたのです。休憩場を設けたり、簡単な食事ができる場所も設けて誰でも気軽に寄れる場所にしました。友達同士、カップル、家族、同僚と集まる場として人気を集めることになります。大きいチムジルバンの場合はいくつかの窯があって好みの温度を選んで入ることもできます。
もちろんすべての人に効果があるわけではありません。特に冬になるとチムジルバンで高血圧の方が死亡したというニュースをたまに聞くことがあるので、くれぐれも自分の体質や健康状態に見合うリラックス方法を選んでください。
十数年前から始まったチムジルバンの人気は衰えることなくいまだに健在ですが、おかげでいろんな話題を生み出しています。中でももっとも有名なのが、「ヤンモリ(羊の頭)」というタオルを巻いて頭にかぶるチムジルバンファッションです。「ヤンモリ」は2005年に大ヒットしたドラマ「私の名前はキムサムスン」のあるシーンに登場した以来、チムジルバンでは誰もが真似するファッションになりました。ここで簡単に「ヤンモリ」の作り方を紹介しましょう。
(1)長方形のタオルを用意します。
(2)下から三等分して折ります。
(3)片方の先を外側に折ります。
2~3回繰り返し折りながら、丸く整えます。
(4)反対側も同様に作ったら、真ん中を開けます。
(5)開いたほうを頭にかぶり、完成です。
髪の毛が邪魔なときや濡らしたくないときに、簡単に作れて便利なかわいいアイテムです。
温泉テーマパーク(ウォーターパーク)
温泉はある?
韓国にもさまざまな水質の温泉が点在していますが、日本の温泉街とは多少趣が違います。1970年代から温泉の開発が進められ、各地に大規模の温泉街が造成されました。ところが、韓国の温泉は見た目も入浴料も銭湯とあまり変わりません。お宿と一緒になっている所も滅多にありませんでした。温泉目当てに行く人よりは近場まで行ったらついでに寄ってみるという感じだったと思います。
家族全員で行く場合は遊園地のような子供も楽しめるアトラクションがある温泉街に行きました。日本の温泉街とは違うにぎやかさと楽しさがあったと覚えていますが、日本人にとっては物足りないかもしれません。
最近の傾向
最近は温泉だけではなく、温泉を活用した複合施設を作るのが主流です。たとえば、室内にはアクアエクササイズができる温泉プール、屋外には温水のウォーターパークを設置するところが多いです。家族みんなで温泉も堪能しながら遊べるという要素が人気の秘密だと思います。
経験したことのない温泉の形ですが、韓国旅行のときに、ちょっと足を伸ばしてみるのも楽しそうですね。