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保安林制度について
1 保安林制度
保安林とは、水源の涵養、災害の防備、生活環境の保全・形成、保健休養の場の提供などの公益的機能を高度に発揮させるため、森林法に基づいて指定された森林をいいます。
保安林に指定されると、こうした機能が失われないように、一定の行為制限(立木伐採や土地の形質変更等)が課せられます。一方で、森林所有者等には免税等の優遇措置がとられます。
優遇措置
- 税金の免除・減免
- 固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税の免税
- 相続税、贈与税について、伐採制限の度合いに応じた評価額の控除
- 特別の融資
- 一定の条件を満たしている場合における、(株)日本政策金融公庫の長期で低金利の融資
- 損失の補償
- 伐採方法が禁伐又は択伐とされている保安林の一定林齢以上の立木に係る損失の補償(条件あり)
2 保安林の種類
保安林はその目的により17種類あります。このうち、山口県内には12種類の保安林があり、これらの総面積は約11万ヘクタールであり、山口県の森林面積の約3割を占めています。(平成29年3月末現在)
保安林の内訳は、水源かん養保安林が約6割、土砂流出防備保安林が約3割、その他が約1割となっています。
森林法 第25条 第1項 |
保安林の種類 |
指定の目的 |
山口県 |
面積 (ha) |
---|---|---|---|---|
1号 |
水源かん養保安林 |
雨水を蓄え、蓄えた水をゆっくり川へ流すことにより、洪水や渇水を緩和する働きがあります。 |
◯ |
72,766 |
2号 |
土砂流出防備保安林 |
森林内を覆う落ち葉や下草により、雨水による表土浸食・土砂の流出などを防ぎます。 |
◯ |
34,613 |
3号 |
土砂崩壊防備保安林 |
樹木の根やその樹木により山崩れを防ぎ、住宅や道路を守ります。 |
◯ |
225 |
4号 |
飛砂防備保安林 |
砂浜から飛んでくる砂を防ぎ、住宅や田畑を守ります。 |
◯ |
26 |
5号 |
防風保安林 |
田畑や住宅などを守る壁の役割を果たし、風による被害を防ぎます。 |
◯ |
90 |
水害防備保安林 |
洪水時に、水流の勢いを弱め、漂流物による被害を防ぎます。 |
|
|
|
潮害防備保安林 |
津波、高潮による住宅などへの被害を防ぐとともに、田畑への塩害を防ぎます。 |
◯ |
3 |
|
干害防備保安林 |
簡易水道などの特定の水源を守り、水が涸れるのを防ぎます。 |
◯ |
702 |
|
防雪保安林 |
樹木の幹や枝葉により障壁をつくり、吹雪から道路や鉄道を守ります。 |
|
|
|
防霧保安林 |
霧の粒を樹木の葉などで捕らえることにより、農作物への被害や自動車事故を防ぎます。 |
|
|
|
6号 |
なだれ防止保安林 |
なだれの発生を防止し、またその勢いを弱めて被害を抑えます。 |
|
|
落石防止保安林 |
落石を止めたり、岩石を安定させることにより、被害や危険を防ぎます |
|
|
|
7号 |
防火保安林 |
燃えにくい樹木を配置し、火災の延焼を防ぎます。 |
◯ |
13 |
8号 |
魚つき保安林 |
水面に陰をつくったり、養分の豊かな水を供給することにより、魚の繁殖を助けます。 |
◯ |
1,531 |
9号 |
航行目標保安林 |
船舶の航行の目標となる森林を保全して、船舶の安全航行を確保します。 |
◯ |
4 |
10号 |
保健保安林 |
休養等の場として生活にゆとりを提供するとともに、騒音を緩和するなどの生活環境を守ります。 |
◯ |
1,426 |
11号 |
風致保安林 |
名所や旧跡などの趣のある景色を構成する要因となっている森林を保存します。 |
◯ |
559 |
計 |
|
|
12 |
111,958 |
(山口県に存するものには○)
県内の代表的な保安林
水源かん養保安林(山口市)
土砂流出防備保安林(山口市)
魚つき保安林(萩市)
保健保安林(岩国市)
3 保安林指定及び解除の権限と事務区分
所有区分 |
保安林の種類 |
流域区分 |
権限・事務区分 |
---|---|---|---|
民有林 |
第1号~第3号 |
重要流域 |
農林水産大臣 |
重要流域以外 |
県知事 |
||
第4号以下 |
全流域 |
県知事 |
|
国有林 |
全ての保安林 |
全流域 |
農林水産大臣 |
注1)重要流域
2つ以上の都府県にわたる流域その他国土保全上又は国民経済上特に重要な流域で、農林水産大臣が指定するもの注2)山口県の重要流域
- 太田川~山口県境(岩国市(旧岩国市の一部、旧美和町の一部)、和木町)
- 厚東川~佐波川(山口市(旧阿東町を除く)、防府市、周南市(旧新南陽市の一部、旧鹿野町の一部))
- 錦川(岩国市(旧岩国市の一部、旧錦町、旧美川町、旧美和町の一部、旧本郷村)、周南市(旧徳山市の一部、旧鹿野町の一部))
4 保安林における制限
(1)立木の伐採
保安林に指定されると、その機能を維持するために伐採の種類や限度等に関する制限(指定施業要件)が定められ、当該要件の範囲内で、かつ、県又は市町へ許可申請や届出を行うことにより、伐採を行うことが可能となります。
※県又は市町の担当部署は別添のとおり。事務によっては、市町に権限移譲を行っているものがありますのでご注意ください。
- 皆伐する場合(許可申請)
- 指定された区域ごとに1年間に伐採できる面積の上限が決められています。
- この伐採限度面積については、年4回(2月1日、6月1日、9月1日、12月1日(これらの日が土日にあたる場合は、翌々日又は翌日))山口県報において公表しています。
- 県報で公表のあった日から30日以内に許可申請書を提出し、許可を受ける必要があります。
- なお、保安林の所在する市町が樹種ごとに定めた伐期齢(標準伐期齢)に満たなければ、伐採することはできません。
- 択伐(抜き伐り)する場合(許可申請又は届出)
- 人工林の場合、伐採を開始する日の90日から20日前までに届出書を提出する必要があります。
- 天然林の場合、伐採を開始する日の30日前までに許可申請書を提出し、許可を受ける必要があります。
- なお、保安林の所在する市町が樹種ごとに定めた伐期齢(標準伐期齢)に満たなければ、伐採することはできません。
- 間伐する場合(届出)
伐採を開始する日の90日から20日前までに届出書を提出する必要があります。
(2)土地の形質の変更(許可申請)
- 立竹の伐採、立木の損傷、家畜の放牧、下草・落葉・落枝の採取、土石・樹根の採掘、開墾その他土地の形質変更を行おうとする場合、事前に許可申請書を提出し、許可(作業許可)を受ける必要があります。
- 作業許可により、どんな作業でも可能になるわけではなく、保安林の保安機能の維持に支障を及ぼさない場合にのみ許可されます。
※許可申請書の提出先及び権限移譲の状況は(1)の※を参照してください。
(3)植栽の義務
保安林に指定された際の指定施業要件により、伐採後の植栽が義務づけられた立木を伐採した場合、定められた樹種・植栽本数に応じて植栽しなければなりません。
5 指定施業要件の緩和
保安林に指定されると、保安林としての機能を果たすために守らなければならない指定施業要件(伐採の方法、皆伐面積・択伐率の上限、植栽樹種・方法等)が定められます。
平成14年の森林法改正では、択伐率や間伐率の上限が引き上げられるなど、規制緩和が行われましたが、法改正前に指定された保安林にそれを適用するには、変更手続きが必要となるため、県では、順次その手続きを進めています(森林所有者の方が書類の作成等を行う必要はありません。)。
変更手続きが終了した場合には、森林整備課から森林所有者の方へ通知を行っていますが、件数が膨大なこともあり、処理に時間を要しています。
未変更の森林を所有されており、積極的な森林経営を行っている方で、指定施業要件のなるべく早い変更を希望される方は、当該森林の所在地(大字・地番)を確認の上、森林整備課林地保全班へご相談ください。
指定施業要件の概要 |
法改正前 |
現行 |
---|---|---|
1 間伐率の上限 |
20% |
35% |
2 択伐率 植栽義務あり 植栽義務なし |
30% |
40% |
3 植栽本数(ha当たり) |
3,000本 |
森林の立地条件と |
6 国有林野について
国有林野の活用についてはこちらをご確認ください。
国有林野の活用<外部リンク>