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水の作文コンクール・次世代を生きる人達のために出来ること
山口県優秀賞
次世代を生きる人達のために出来ること
山口県立高森みどり中学校 2年 小林 瑚子(こばやし ここ)
食後に私が食器を台所に運ぶと、母は必ず食器をキッチンペーパーで拭き取ってから洗っている。小学六年生の時に、社会科の授業で水質汚染について学習していたので、母が食器をキッチンペーパーで拭き取る理由が、すぐに理解できた。水道管を汚さないのはもちろん、水を汚さないためだ。他にも我が家では、衣類を洗濯する場合は、合成洗剤は控え、石けんを使用している。家庭でしている様々な工夫から、水質汚染を食い止めることは出来るのだろうか。世界の水質汚染対策はどうなっているのか。私は、詳しく知りたいと思い、それらについて調べてみた。
水質汚染が発生する原因は、主に三つあるという。まず、一つ目が工場や農場から出る「産業排水」である。この原因は日本の過去から始まる。明治時代、栃木県の足尾鉱山では、沢山の銅が掘り出され、掘った時に出る鉱毒を渡良瀬川にそのまま流していた。そのため、下流の田畑に毒がたまり、作物が枯れたり、家畜が死んだりしてしまった。また、チッソ水俣工場から排出されたメチル水銀が水俣湾の魚介類を汚染し、それを長期に摂取した住民が苦しんだ、水俣病。発症した住民は、中毒症状を起こし、現在も認定に向けた訴訟が行われているなど、環境汚染による健康被害の深刻さを浮き彫りにした事件は記憶に新しい。
二つ目は生活排水だ。生活排水は「生活雑水」と「し尿」に分類される。生活雑水とは、キッチンや風呂、洗濯などで出る排水、し尿はトイレから出る排水のことであり、これらを生活排水という。私は、生活排水によって汚染された水を魚が棲める水質に戻すには、どれほどの水が必要になるのだろうか気になった。実際に調べてみると、魚が棲める水質にするために必要な水の量を、バスタブ三〇〇Lに換算すると、天ぷら油五〇〇mLの場合はバスタブ五六〇杯が必要となる。普段の生活で、何気なく流している排水が知らぬ間に水を汚染し、それをきれいにするためには大量の水が必要とされているのだ。
三つ目は気候変動である。水温上昇や渇水、豪雨の増加なども、水質汚染に影響を及ぼしている。これらは、大気中から水に溶け込む酸素量の低下につながり、水棲生物が窒息死するなど生態系にも影響を及ぼす。それにより微生物の活動が低下し、分解活動が損なわれるなど、最悪な状態に陥ってしまう。気候変動を起こす根本的原因は人間なのであって、自然界に及ぼした影響が大きいことを強く感じた。
以上の水質汚染は、世界的に問題視されており、途上国の病気の原因の八〇%以上が、水の衛生環境の劣悪さによるものと結論付けられていることを知った。二〇一六年にスタートした国際目標(SDGs)では、二〇三〇年までに、汚染の減少、有害な化学物質の投棄削減と最小限の排出、未処理下水の割合半減、リサイクルと安全な再利用を大幅に増加させるというターゲットを掲げた。世界的にも水質汚染対策が活発化している。
では、私達が出来る対策は何か。例えば、「米のとぎ汁は植木の水やりなどに再利用する。」「洗濯の際に糸くずフィルターを付ける。」「トイレはこまめに掃除し、洗剤の使用量を減らす。」など、出来ることは無限にある。
私達にとって水質汚染は身近な社会問題の一つであり、途上国だけの課題ではない。教科書で勉強した時にも感じた「二度と同じ過ちを繰り返してはならない。」という気持ちを思い出した。今後、水質汚染による課題解決に向けた取り組みを進めていかなければ、私達の食や衛生環境などにも影響する大きな問題となる可能性がある。次世代の人達のためにも、今こそ身近で小さなことから実践していき、私達一人一人が取り組めば、大きな力となり、未来を切り開けられるはずだ